「そうだ・・・栄一の息子だ・・・」

「そうでしたか・・・最初は、関係がある人かと思っていましたが、日本では、金田という名前は、どこにでもある名前だと聞いていたので、何も思いませんでした・・・栄一の息子ですか。まさか・・・息子とは・・・私は、栄一が、亡くなったのは、御手洗から聞いて知っていましたが、息子さんに会ったことはなかったのです。本当に驚きました。でも、何故、そのことを隠していたのでしょうか?それとも、私が、昔、栄一と付き合いがあったことを知らなかったのでしょうか?それにしても、不思議な縁です。息子さんか・・・」と、候は、懐かしむような素振りをした。

どうやら、今の今まで、金田純一郎が、栄一の息子だとは知らなかったようであった。

「それと、どうして? ジョジズ・ラマダを解消して、ラマダだけにしたのか?」

「はい、それは、純一郎さんからの依頼でした。投資した金額の倍以上になったので、もう、解消したいということでした。私も、大きな利益が出ていたし、そういうことなら、ここで一人でやったほうが、もっと儲かると思いまして、承諾したのです・・・あまり、深くは考えませんでしたから・・・」

「その時に、御手洗に、金田のことは話したか?」

「いえ・・・話す必要もないし、この件は、私と金田だけのことです。会社の名前も、ジョジズ・ラマダとなっていましたが、御手洗は、別に何とも思っていませんでした。御手洗という男は、金さえ儲かれば、誰が何をしていようが関係ないと思う人です。ですから・・・何も・・・」

ここまで、話して休憩を取ることになった。

僕は、候と金田の関係が分かった。偶然にしては、おかしい。金田は、候のことを調べて、近づいたに違いないと思った。新開刑事も、同じ考えである。

しかし、金田は、候と付き合うことで、何のメリットがあったのであろうか?

父親の復讐をするとしても、あまりにも回り道過ぎる。何か、他に狙いがあったとしか考えられない。

休憩の間に、僕と新開刑事は、大越刑事に、御手洗と金田との関係について、詳しく聞いてほしいとお願いした。

休憩後、取調べは続いた。



「候・・・御手洗に金田純一郎を紹介したことはあるか?」

「いえ・・・ありません。でも、御手洗という会社のことを、何度も聞かれたことを覚えています。何でも、御手洗は、東京では大きな会社なので、私に知っているかということでした。私は、御手洗のことは昔から知っていたので、フィリピンでのことを色々と話したことはあります。金田は、何も言わずに聞いていました」

「候・・・倉重や浅田のことも話したのではないか?それと、父親の金田のことも・・・・?」

「そういえば・・・話したかもしれません?仕事に関係のない話ですから、あまり、記憶はありませんが、確かに、色々と話した記憶はあります。金田さんという人が、海へ落ちて死んだとか・・・」

「やはりな・・・もう少し、考えて、思い出してみろ・・・それ以外は・・・」と、大越刑事が尋ねた。

「・・・思い出してきました。浅田のレストランとか、金田が死んでから、会社を解散して、皆、日本へ戻ったこととか、それと・・・」と、口ごもった。すかさず、大越刑事が、問い詰める。

「それと・・・何だ?」

「それと・・・それと・・・金田は、殺されたかもしれないと・・・」と、候は、小さな声になった。

「殺されたと、話したのか?」

「はい・・・そのようなことを・・・話したと思います・・・でも、何も言いませんでした。ただ、聞いていただけでした。それだけです・・・」

「候・・・お前は、何か隠しているな?海に落ちたのではなく、落とされたのだろう・・・はっきりしろ・・・」

「・・・・落ちたと聞いています。落ちたと・・・」と、さらに声は小さくなっていた。

「誰に聞いた・・・誰だ?」大越刑事の声が大きくなった。

「・・・御手洗に・・・そう、言われました・・・」

「そのことがあってから、会社を解散して日本に戻ったということだな・・・?」

「はい、金田が、死んでから、数週間して解散したのです。表向きは、商売がうまくいかないので、解散するということでした。私は、そんなにうまくいっていないとは思っていませんでした。裏の取引は、段々、当局の取り締まりが厳しくなっていたのは確かですが・・・そんなに、業績が悪いとは思っていませんでした・・・」

「分かった・・・とりあえず、昼食にする。後は、食べてからだ・・・」

と、候は、留置所へ戻った。

「何となく、繋がりが分かってきましたね。後は、何を聞けばいいですか?」

と、大越刑事が聞いてきた。

「一番聞きたいのは、金田が御手洗を殺した動機なのです。どこまで、候が知っているかは分かりませんが、何でもいいですから、金田と御手洗について追求して欲しいのです。御手洗が、金田栄一を殺した確証があればいいのですが・・・どうやら、候は知らないようです。でも、何か隠しているかもしれません。宜しくお願いします」

と、新開刑事が話した。その後、3人で昼食をした。マニラ署の傍にある、小さなレストランだ。

新開刑事にとっては、初めてのフィリピン料理になる。昨日の昼の食事は、サンドイッチを食べたらしい。

今日は、完全なフィリピン料理だ。さてさて、どうなることかと思っていたら、意外にも、僕の嫌いな、バグオンを平気で食べている。大越刑事に勧められたランチについていたのだ。

美味しそうに食べている。人はみかけによらない。

逆に、僕が嫌いなことを知って、こんなに旨いものはないのに、もったいないとまで言う。

僕は、何とも言えないでいた。

と、携帯電話が鳴った。徳野茂美が、フィリピンに着いたという連絡であった。

これから、ボエット・チャンとの打ち合わせをして、午後の6時には、ホテルに戻っているという。

夜に、会うことにした。

午後も、引き続き、候の取調べが続いた。

が、候からは、これといった情報を得ることはできない。やはり、候は、金田親子のことを今日知ったぐらいであるから、それ以上のことは知らないのではないだろうか?

そうすると、金田栄一が崖から落とされた?ことの犯人は誰なのかという疑問が残る。

候が、白状していないとも考えられないことはないが、現状では、断固としてやっていないと言っていた。

後に、候は、関係はしていないが、その突き落とし現場を目撃していたということか発覚したのであった。