人生ちょっとのさじかげん  誰でも人生さじかげん

あなたは何才ですか。

あなたは何をしていますか。

あなたは何のために生きていますか。

あなたは何ができますか。

あなたは・・・さじかげんができますか。

勝手に料理のさじかげんと思わないで下さい。

人生、人生ですよ。あなたの生きる術のさじかげん。

さて、始まります。

※登場人物 著者控え

横山艶子 59才 独身 大きな古い家 離婚暦あり 家を売る  ※泉ピン子 イメージ

横山昇 38才 艶子の息子 離婚して戻った 最初の夫の子供 久保の店で働く ※高知東生

語り 田口ひとみ 38才 息子祐樹 だんな不動産会社 建売購入2年経過  ※東てる美

小田薫子 パン屋 娘 だんな  ※深浦加奈子

涼子 元小学校先生 72才 だんなは商社 6年前他界 子供は2人独立 ※松原智恵子

久保 婦人服店オーナー 30才 泉幸子の弟 ※賀集俊樹

泉幸子 沙織ちゃんの母 車整備工場夫人 ※清水ミチコ

一話 横山艶子という女と近所の人とわたし

二話 放火と警察と人は信じられない

三話 艶子とその息子と不動産

四話 いじめと宝物見つけた

五話 大人がいいかげんだ

六話 命は自分のものだけではない

七話 子供の家出と不登校

八話 人の親切は要らない

九話 他人のことに口だすな

十話 人って素晴らしい

十一話 

一話 横山艶子という女と近所の人とわたし

「何している」と近所の憎まれおばさんがひょっこりと勝手口を開けて顔を出した。

何しているといわれても、何もしていない。ただ、台所で夕飯の支度をどうしようかと悩んでいるだけだ。

今日は、だんなが早く帰るというから、少し料理の腕をふるってみようかと考えていたのである。

「暇そうだね」と少し笑いながら台所に入ってきてしまった。

この人は、近所でも憎まれおばさんとかおせっかいおばさんと呼ばれているしろもの(人だが)なのである。

暇にまかせて近所をぶらぶらしていることが生きがいのようだ。

人の家にあがりこんでは、たわいもないくだらない話を勝手に話して、ではさらばという気ままな生活を送っている59才の太目でだんご鼻でスカートは絶対にはかないおばさんである。目もまん丸でありどちらかというと目は

ギョロッとしていて何か怖さを人に与えるような感じでもある。

いつも、茶系の服にいかにもおばさんだというグレーのジャージ系パンツである。

髪はショートで多少茶系に染めているのだが白いものがまだらに残っている。

身長は低くはない。160cmはあるだろうか。靴は一年中サンダルである。

私の住んでいる町内ではなく、隣の町内なのだが私の家の前の道を隔てて隣の町内となるので近所には違いない。

平屋の大きな家に一人で住んでいる。築50年はたっているかと思う。こんな大きな家に一人で住むことはもったいないと思うのだが・・・ 仕事はしていないようである。亡くなったご主人の年金か何かで生活しているのかもしれない。

この横山艶子という人とは、近所の人と道路上で立ち話をしている時に割り込んできたのが最初の出会いである。

それ以来、私のことに首を突っ込んでくるようになった。1年前のことであった。

「あんたのとこはいいよね、爺さん婆さんがいないからね」といつもの嫌味な言葉。

私の家は、だんなと12才になる男の子の3人家族で、2年前に中古の建売を買って引っ越してきたのである。

だんなの親も私の親も遠くに住んでいるから同居はしていないのである。

この憎まれおばさんは、横山艶子という人でだんなと死に別れて56年になるという噂を聞いたことがある。

どうやら子供はいないようである。いつも近所をぶらぶらと徘徊しては、顔を出して好き勝手にしゃべって帰っていくのだが、その話の中身はほとんど嫌味という商品が集合したスーパーマーケットという、どんなものにでも口を出してきて勝手に講釈して納得するというえたいの知れないおばさんなのである。

「あんたはいつも家にいて面白いか」と余計なお世話なのだが適当にあいづちをうっていないと聞いてないのかと

かんしゃくを出してしまう、とても困った人なのである。

「面白くはないけど主婦の仕事だから・・・」と適当に答えると「友達もいないのだろう」と切り替えしてきた。

「主婦っていうけど何年やってるの」と次から次に話してきてしまう。

この話も数週間前と同じ質問であるが。いつもこの調子なのだ。

13年かな」と目をそらして答えると「たったそれか、それで主婦なんてな」とやけに攻撃的な言葉。

「私はね、40年だよ、40年もやっているのだよ」と得意げに、私をあざ笑うかのごとく言い放った。

内心、40年といってもだんなが死んでから56年がたっているのだから正味35年ではないのかと思ったが、ぐっとこらえて心の中で出せる精一杯の大声をあげたのだ。

「すごいですよね、プロの主婦ですか」と、ちょっと舌うちしながら返答したのだが、これが失敗のもとになった。

「あんたも頑張ればなれるんだよ、いかにせっせと家事をこなしていくかだね、私はだんなの親と同居していたから何でも教えてもらったもんだよ、あんたは同居じゃないから楽かもしれないが何も覚えられないよな」本当にむかつく女である。

あんたに言われなくても分かっている。それにあんたに言われたくもない。

「そうですよね。同居していたら何でも教わっていけますよね」と言ってはみたのだが、やはり時すでに遅しであった。

「それがわかっているなら私に何でも聞いてみな」と得意げになっている。