例年、1月は比較的ゆっくりと過ぎていく。
そして、2月の声を聞いたとたんに時間経過の度合いが、徐々に加速してくる‥‥気がする。

今年も同様で、「立春が過ぎたなあ……」なんてカレンダーを眺めていたかと思いきや、すでに月半ばが来ようとしている。まったくもう……。

去年の今頃は何してたかなあ、とつらつら思い返してみたら、衝撃的な沖縄旅行をしていました。
そかあ、あれから1年がたったんだあ。

あの旅で、ほんとうにいろんな事を学んだし、考えさせられたので、沖縄の番組を見たり、向こうで買ったお皿を使ったりするたびに、脳裏にやきついている風景や会った人たちの顔が、次々とよみがえってくる。

ただ、ふだんの私は、というと、「思い出にひたる」習慣があまりなく、
アルバムをめくる、とか、
同窓会で思い出話に花を咲かせる、とか、
そんなこともあまりしないような気がする。

ところがそんな私が、先月行った鎌倉では、久しぶりに思い出っていう奴にしばし浸ってしまったのです。

鎌倉は、三浦半島の直販野菜を買いに、数ヶ月に1回は訪ねる町ではあるのですが、だいたい犬もいっしょなので、野菜を買って、パンを買って、鶏の唐揚げを買って、梅花はんぺんを買って、そして家に帰る……というルートで動くのがほとんど。
(注。鶏のからあげは、裏駅の商店街の中にある鶏肉専門店のものでして、これがまた、ほんとに美味しい!!)

でも、今回は犬は無し。
目的は、1月いっぱいで閉館が決まっていた鎌倉近代美術館に行く事。


残すところあと6日、ということもあって、週日でありながらチケット売り場は長蛇の列。


くじけた私たちは、とりあえず先にランチをしてしまおうと、
20年ぐらいお付き合いの「ミルクホール」へ。
(注。このお店は、鈴木清順監督の「チゴイネルワイゼン」という映画の撮影で使われおりまして、ちょっとレトロな木造建築です。メニューのラインナップは普通ですが、ひとつひとつが丁寧に作られていて、とっても美味しいのです!!)

気を取り直して再度美術館へ。



思いのほか小さい展示会場。
作品の描かれた時代背景へ思いを馳せながら、ひとつひとつ眺めていく。
と、部屋のかたすみに、静かに座る係の人が。

そう、この「係りの人」のアルバイトを、夫が高校時代やっていたのでした。

夫はここからバイクで30分弱のところに住んでいたので、
結婚する前は、まず私が車で夫の家まで行き、
バイクに乗り換えて鎌倉~葉山へ行く、というのが、
季節のよいときの定番のデートコースでありました。

バイクの後ろに乗ってヘルメットで合図を送る、なんて、
ドリカムの歌みたいなことをやっていた訳です。
(注。ドリカムがデビューする前の話)

美術館にも何度も訪れ、
池に面したオープンスペースに座りながら眺めていたのは、
日があたりきらきら光る川面が、オープンスペースの天井に反射して、
川面が揺れれば、反射も揺れて、
それはそれは美しい世界でありました。

「いつか鎌倉に住みたいね~」なんて言っていたんだけどなあ。

小町通には、あのころよく通ったサンドイッチ屋さんも、
本屋さんも、もうないのだけど、
「あのお店はあったよね」「ここはあのころから変わらないね」と、
昔懐かし探しをしてしまったのでした。

はるか昔のことなのに、
あの頃のどきどきした気分まで思い出してしまい、
あのときの若者が今こうして隣にまだいる、という状況が、
なんとも不思議な気分がしたのでした。


若いころと現在との時間を何度もワープを繰り返しながら、久しぶりにゆっくりと鎌倉の街を歩きました。

こうやって昔を懐かしめるって、
前ばかりを見て走ってきたけれど、
ようやくたちどまって振り返る時間ができたってこと?

でも、やっぱり前を見ていたいなあ。
こんどは歩くスピードで。