すると数時間後、Aくんから電話が掛かってきた。しかし、電話口はAくんではなくAくんの母親だった。Aくんの母親には何度か会ったことがある。Aくんのアパートに居たら鍵が開いて母親が入ってきて驚いたのを覚えている。Aくんが忙しくてご飯をしっかり食べてないと思って時々食料を補充してきているのだと。しかし、それをAくんは感謝するどころか勝手に入ってくんな!物も買ってくんなと言っていた。
前の彼女はそれで喧嘩になったのに懲りねぇやつだとまで言っていたくらいだ。そんなAくんの母親から『ごめんなさいね、今、死んでやるって実家に帰ってきてるんですけどどうしたんでしょうか?』と。電話の向こうではAくんが大声で暴言を吐いていた。
『何があったのか2人の間のことだから親が出るのもおかしいことよね。息子から聞きましたけど、結婚するってなっても2人の事なので親は関係ないと思います。そうよね?だから2人の事は2人で話すのが良いと思うのよ。息子もこれから北海道に1週間撮影に行ってしまうし、帰ってくるまで待ってて居られますよね?お願いしますね。何かあったら連絡できるように連絡先聞いといても良いかしら?』と。
電話の奥ではAくんが『おい!ババア!早く電話切れよ!こんなやつと連絡先交換しようとすんじゃねぇ!辞めろ!そんなにBが良ければそっちに行けば良いだろ!お前の友達たちと俺は住む世界が違うんだよ!』とずっと叫んでいた。
Aくんは小さい時に母親を散々困らせ、蹴飛ばしたこともあったと自分で言っていた。私は結婚したら今度はその役目を私が引き受けなくてはならない、子供ができたとしたらどれほど心にダメージを与えてしまうんだろうと心底怖くなった。
時には急に怒り出し、運転中の車から勝手に降り失踪したこともあった。丁度、職場の付近だったので私は、Aくんのことを紹介した職場の後輩たちにも頼んで探してもらったが見つからなかった。私のアパートから職場までは車で30分も掛かるとこだったので心配だったが数時間後、私のアパートにAくんの車が置いてあったのできっと帰ってくるだろうと待っているとAくんの母親がAくんを乗せ、帰ってきたこともあった。何も言われなかった。逆に怖かった。こんなことになっているにも関わらず何も言われないことが怖かった。