深層意識、潜在意識と呼ばれるものの活用。

昔ながらの体を使った教育や武道、舞踊などの修行の意味はここにありますね。体を通して、深層意識に働き掛ける。表層心理の底にある巨大な意識を書き換えていく作業。

これが出来れば、人生修行の大半は終わったとさえ言えるくらいじゃないかなと思います。

 

 

以下致知出版社の人間力メルマガより転載。

 

科学の進歩は、人間の可能性を大きく開いてきましたが、幸福を実現する道について、最新の脳科学がどのようなことを示唆しているのでしょうか。

「脳磨き」を提唱する岩崎一郎さんが解き明かす、幸せになるための脳の使い方、鍛え方とは──。

 

─────────────────

<岩崎>

……脳は何かに一所懸命取り組んでいる時に働いているというのがこれまでの常識でした。

しかし最新の脳科学では、何も考えずにボーッとしている時も同じくらい活発に働いていることが明らかになっています。

このことは自分でコントロールできない潜在意識、無意識の部分を有効活用できなければ、人は幸せな生き方ができないことを示唆しています。

電車に例えて言えば、本当は東西の線路を行き来したほうが幸せに生きられるのに、南北の線路の移動ばかりを繰り返していてはいつまで経っても幸せになれません。

南北から東西へポイントを切り替える必要があり、そのポイントを司るのが、脳幹や島皮質(とうひしつ)と呼ばれる脳の部位です。

スポーツなどではよく、フロー状態、ゾーンという特別な集中状態に入ると驚異的な力が発揮できると言われますが、近年、そこに入るスイッチが脳幹や島皮質にあることが明らかになってきました。

残念ながら、この脳幹や島皮質は無意識領域にあるため自分で意図してスイッチを入れることはできません。その代わり、普段から脳磨きによって無意識領域を整えていくことによって、フロー状態に入る確率を高めることが可能なのです。

逆に、無意識領域を整えていなければ、リラックスした集中状態であるフロー状態とは真逆のFF状態に入ってしまいます。

FF状態とは、動物が外敵に直面した時のような極度の緊張状態であり、脳内の他のあらゆる回路をシャットダウンして、戦うか(Fight)、飛んで逃げるか(Flight)ということだけにエネルギーを使います。

FF状態でも一時的に大きな力を発揮できますが、ストレス反応であるために慢性化すると脳を破壊し、無気力や鬱うつ状態に陥ってしまうのです。

昔の剣豪が精神修養に努めたのは、心を整えることで命の危険に晒された時でも、FF状態ではなく、フロー状態に入る確率を

高めるためといえます。

二刀流で大活躍の大谷翔平選手がゴミ拾いを励行するのも、

そこに通じるものがあると考えます。

フロー状態は、最新の脳科学で明らかになってきた「Awe(オウ)体験」の一部だと考えられています。

宇宙飛行士が宇宙空間から青く美しく光る地球を見ると、自分は大いなる何者かに生かされていると実感して深い感謝の念が湧いてくるといいます。

こうした心震える感動体験をAwe体験といい、その時の脳は非常に活性化し、エゴが低下して謙虚な気持ちになることが明らかになっています。

Awe体験は大自然の前でちっぽけな自分を感じた時や、徳の高い人の言動に感動した時などにも体験することがあります。

以前、ニューヨークの地下鉄で、電車が入ってくる直前にホームから線路へ転落した人を、一人の男性が線路へ飛び降り身を挺(てい)して救助したことがありました。

その場にいた人たちは一様に深い感動に包まれ、Awe体験と同様の脳の状態になったといいます。

アリゾナ大学の教授は、釈迦様は悟りを開いた時に強烈な

Awe体験をしたのではないかと推測しています。

同様に、歴史に名を刻んだ多くの偉人がAwe体験を通じて人生を大きく転換させたのではないかとも言われています。

脳磨きを通じて無意識領域が整うと、このAwe体験をしやすくなるのです。