小説のように、いつか会えたら

小説のように、いつか会えたら

愛媛県在住の高校2年生女子です
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”先生、新藤くんがいません!”

金曜の放課後、隣の県で明日行われる予選大会決勝戦に向かうためのバスの中
私と同じくマネージャーの××の声が聞こえる。

”はぁ?あいつ何やってんだよ…○○!探してこい!”

「私ですか?!」

”お前が一番早いだろ”

「わかりました…」

もう…なにやってんのよ!

グラウンドに止まったバスの中には晴一以外の部員全員が揃っていて、肝心のキャプテンの晴一がいない。

私は1人バスを降りて、西日のキツくなった校内を走り回る。

「晴一?はるー!はるー!」

私は彼の名前を何度も呼んだ。

学校内を全部周り切ったところで、自教室にたどり着いた。

ガラッ…

「いないじゃん!もう!」

『お、○○。』

「岡野先生…」

誰もいないと思ってたのに先生が教卓で提出物の確認をしていた。

『新藤か?』

先生がプリントから目を離さず言う。

「いないんですよ。」

『いっつも一緒におる嫁でもわからんのならわしにもわからんわ。』

「うるさい。」

真面目に先生は公認の私の恋人の名前を口にする。

私は笑いながら答えた。

「それ職員室ですればいいじゃん。」

『お前が来る気がしたけぇおったんよ』

「なにそれ」

ふざけてる場合じゃ…

「ねぇ、本当にはる見かけなかった?」

『じゃけぇ来てないって』

「うーん…どうしよう…!」

本当に探す場所もなくなり、途方に暮れてドアにもたれかかると、岡野先生が近づいて来た。

『ほんまにあいつは。うちのクラスの姫に迷惑かけてから』

岡野先生の片腕が私の頭の上に着く。

晴一が見つからなさすぎて真っ白になっている頭に先生の声が入ってくる。

『なあ?』

そう言った先生の唇が優しく私の唇に触れた。

「…え?」

人差し指で自分の唇を触る。

『落ち着いた?』

優しく笑う先生が視界に入る。

「っ…なにやってんの!」

我に返って先生の肩にパンチを入れる。

『ごめんて。落ち着いたやろ?はよ探してこいや。頑張れよお前も。』

何よ、それ。

教室を飛び出して晴一の姿を探す。
振り返られなかった背中に、先生が壁伝いに崩れる音がした。

ポニーテールと気持ちが揺れる。