幼い女の子の殺害事件。

苦しい苦しい、読まないほうがいいのでは………

でも、やっぱり著者の本、やめられません。

一気読みです。

30年前の連続女児殺害事件。前代未聞の凄惨で悪質な犯行であり、逮捕された亀井戸と伊予2名に下されたのは死刑判決。

主犯とされた亀井戸が獄中で病死した。

共犯の伊予は、判決を不服とし、再審を請求している。

5年前に警察を退職した星野誠司は、事件当時捜査一課で捜査員として名を連ねていた。

当時から誠司にあった２人の犯人への違和感……

頭から離れない冤罪の文字。

本当に２人の犯行なのか？

このまま死刑が執行されていいのか……

亀井戸の獄死をきっかけに彼は動き始めます。

昔馴染みの週刊誌の記者、小野寺の助言を受け動き始めるのです。

世論を動かす

1981年ロス疑惑事件

週刊誌の記事がきっかけで、犯人と疑われ、追い回され、そして起訴された。

マスコミの報道合戦で映し出される男性の姿は記憶にあったけれど、事件のその後は全く知らなかった……

事件から22年後、無罪が確定しており、男性は身柄を拘束されたサイパンで自殺している。その自殺にも疑惑が多いらしいが……

現実に、週刊誌の記事が、世論を司法を動かすことがある。

恐ろしい気もします……

誠司は、再捜査と並行して世論を動かしていくのです。

強力者は孫の旭とその友人の哲。

若者らしく、SNSを利用して、世の中に投げかけていくのです。

SNSを利用、というと、間違った方向にいってしまうこともあると思うんです。

でも、今回、正しいほうに動いたのは、やっぱり誠司の正しい信念に加えて、旭と哲の賢さによると思うんです。

被害者家族がいることだから、決しておかしな方向に炎上させてはいけない。

誹謗中傷も煽りや模倣……たくさんたくさんあるけれで、決しておどらされることなく冷静に信念を持って進んでいくし、そういう反響をこそ利用していく。

本当に賢い。

そしてたまにある、直接の激励の言葉に力をもらう、素直な正義感。

読んでいて、自分もそのフォロワーになった気持ちで応援してました。

事件は凄惨、いろんな形の間違った愛情に苦しんでいく人々……つらい文章ですが、とにかく面白い作品でした。

事件をもう少しソフトにして、映画化されたらいいのでは？と思うほどでした。

本38｢虎を追う｣