人の飛沫を浴びることで、その人が明日、目にする景色が見えてしまう檀先生。

檀先生がまきこまれるテロ事件と、生徒が書いた小説 ……猫の虐待に関わった人を成敗していく小説の登場人物がなぜか一緒に協力して事件を解決していくという……

ポップな雰囲気の本だけど、犯罪被害者たちの苦しみは伝わってきました。

ニートや引きこもりの若者たちが、ある日突然、動物やら虫やら植物やらに似た、不気味なものに変異してしまう病『異形性変異症候群』が流行り始めた世の中……

気味の悪い『異形』になってしまった我が子と、どのように向き合っていくのか……いろんな親がいます。

異形を殺してしまう者、受け入れられず逃げ出す者、家族会を作ってなんとか親の心を救いたいと思う者………

美春は、虫のようになってしまった我が子に抵抗を感じながら、一生懸命息子を思い、傲慢だった自分を反省するんです。

息子がヒトであったときだって……今まで一度も、息子の身になって何かを考え、その内心について理解しようと考えをめぐらせたことなどなかったのではないか？

自分の何がいけなかったのか……なんでこんなことになってしまったのか……

息子を恥じ、自分自身を憐れんでいた……

普通の子どもであって欲しかった……

息子の幸せを願ってきたつもりが、ただの自分のエゴだったのではないか………

これね、『異形性変異症候群』とかではなくとも、たくさんの親が理解できる感情だと思うんです。

｢子どものため｣が、その子自身を追いこんでしまうということ。

先日見た｢最後から二番目の恋｣

大大大好きなドラマです。

そのドラマの中で、やっぱり長いこと引きこもっていたマリコちゃんが、みんなの期待に答えられないこと、自分にとっては今が幸せでもっと上なんて望んでないことを謝るんです。

｢こんな私で申し訳ありません｣って、泣きながら。

そして、それを聞いたちあきさん(キョンキョン)もやっぱり謝って、すごく反省するんです。

マリコの気持ちに寄り添ってなかったって。

今回、この場面がすごく刺さって。

ほんとにこういうことってあるなあ……

よかれと思って、あなたのためなの、とか……

すごく考えさせられる本でした。

そして、子どもが異形になったとき、いろいろと動くのは母親で、父親は受け入れられず……という図式も、ちょっとわかるなあと思ってしまいました。

世のお父さんにも読んでいただきたい本です。

本24 25｢ペッパーズ・ゴースト｣｢人間に向いてない｣