NHK 2024年5月1日「おはよう日本」特集「信仰背景の虐待 実態は」 | JW 2世の保健室

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NHK 2024年5月1日7:00am-「おはよう日本」(いわゆる"7時のニュース")の

 

特集「信仰背景の虐待 実態は」

 

の報道全文と画面キャプチャ:

 

※約10分にわたる特集で、子ども/若者への「信仰の強制」を虐待とし、若者が自分の意思どおりに行動できない理由の1つに「忌避への恐怖」があることを指摘しています。

 

エホバの証人日本支部はNHKに対し文書で「活動していない人を避けたりしません」と回答していますが、専門学校に通う現役信者と現役長老のインタビューにより「エホバの証人組織の回答は実状を反映した正直なものではない」ということが明らかにされた形になっています。

 

 

全体として、前進的な点として

 

●真面目な視聴者層の多いNHKの朝7時台のニュースで「エホバの証人」を名指しし、10分という枠で丁寧な取材内容を放送したこと

 

●「信仰背景の虐待」を体罰的なものに限定せず、信仰の強制(子どもが子ども目線で「いやだ」と感じるようなこと、学校生活に支障をきたすようなこと)がそれにあたるとしていること

 

●「教団側の建前」だけでなく、信者側の目線と言葉で、忌避の運用実態とその「牽制効果」が正確に伝えられていること

 

●社会の側の介入や支援を不十分とし、今後も拡大すべきと指摘したこと

 

などがあったと思います。

 

 

以下、報道全体と画面キャプチャです:

 

******

 

 

 

 

7:18:55-

女性アナウンサー:先週、国の調査で明らかになった、宗教の信仰を背景とする児童虐待の実態。

 

児童相談所が虐待にあたると判断したのは47件。

 

具体的な事例としては「ことばや映像・資料によって恐怖をあおる・脅す」「他者の前で宗教を信仰していると宣言することを強制する」などが多かったということです。


男性アナウンサー:この調査では、宗教二世当事者への聞き取りも行われました。そこでおよそ半数の人たちが「誰にも相談できなかった」と回答していて、問題が表面化しづらい実態が見えてきました。

 

当事者が声を上げられない背景には、何があるのでしょうか。

[取材映像]
インタビューアー:「こんにちは」



ナレーション:国の調査に協力した、十代の専門学校生です。今も、自分の意思に反して信仰活動を続けなければならないと言います。

 

両親が信仰しているのは、新宗教のエホバの証人。

 

 

教えを厳しく守り、信仰活動を優先することを求められ、学校生活になじめなかったと言います。

専門学校生十代信者:「宗教活動で学校を休むこととか」

 

「運動会とかで参加できないものがあると、本部テントで待機してたので」

 

「それがやっぱり周りと違って嫌でした」

 

「強制されてきたので、虐待だったのかなとは思います」


ナレーション:信仰を辞めたくてもだれにも相談できずにいるという女性。



その大きな理由が、教団内にある忌避という慣行です。教えに反して排斥された信者とは、たとえ家族であっても交流を避けるべきと教えられてきました。

 

 



エホバの証人の動画再生音声:"排斥から15年以上が経ちました"

 


ナレーション:信仰心を失ったことを理由に背教者と見なされ、忌避の対象になれば、家族との関係が断たれてしまう。その恐怖と不安から、今も教団にとどまらざるを得ないと言います。



専門学校生十代信者:「周りに相談してやめたことが分かったら、多分すぐ忌避の対象になると思うので...」

 

「自分の家族が全員いなくなると思うので、抜けたら忌避されるんだったら、抜けないほうがいいのかなと...」

 

「宗教だけで縛れるものじゃないと思うので、家族は」

 

「なのに信じるものだけで断たれるのは違うんじゃないかなと...」




ナレーション:忌避を問題視する声は、他の多くの二世たちからも上がっています。エホバの証人の、元信者らを支援する弁護団が、二世など581人を対象に去年行った調査では、76%が「教団からの脱会が困難だと感じた」と回答。弁護団は、忌避が脱会する自由を奪っている可能性があると指摘しています。

 

 

 


今回、NHKはエホバの証人に「忌避」に関する見解を問うたところ、文書で回答がきました。



「エホバの証人の中には、伝道や会衆との交流を自分からやめる人もいます。活動していない人を避けたりしません」「除名される理由となり得るのは、聖書の道徳規準に対する重大な違反が意図的に繰り返し行われた場合のみです」

 

 

 




一方、教団の忌避についての見解は、実態とは異なると証言する人がいます。信者の世話役、「長老」と呼ばれる現役の信者です。内部の問題を知ってもらいたいと取材に応じました。

 

教団内では、信者が教団から離れると、その理由について説明されることはなく、理由にかかわらず交流を断っているのが実状だと言います。



長老:「実際に内部で行われている教育の中では、神様は排斥された人たちとの交流を望んでおられないということがとても強調されて教えられていて、一般信者がとる対応というのは、排斥であろうが脱会であろうが、その時点で一切交流を断つ、その人との関わりを持たないという対応になります。」

 

 

 




信者の子どもに対する虐待が指摘されていることについて、教団は「あらゆる形態の児童虐待を憎悪しています」「成長した子どもは十分な情報を得たうえで、親と同じ宗教を受け入れるかどうかを各自で決定できます」と回答しています。

 




NHKが児童相談所を設置する全国の自治体に取材したところ、信仰を背景にした虐待の疑いがあるとして相談や通告を受けた件数は昨年度までの5年間に少なくとも77件ありました。対応の課題などについて尋ねると「親の信教の自由を侵害しない範囲でどう指導すればよいのか判断が難しい」「親が理解してくれるとは限らない」など、宗教特有の難しさを感じていることも分かりました。

 





信仰を背景とする虐待にどう対応すればよいのか、模索する動きも始まっています。学校で児童から相談を受けるスクールカウンセラーなどを対象としたオンラインの講座です。宗教二世の当事者らが講師として参加し、現場の悩みに答えました。

 


「"両親が宗教に入っているケースに対し私たちはどの段階で介入すべきでなんでしょうかって"いう...」



「本人は宗教に関しては疑問を持ってないけれども、何かしらあつれきがある場合、困っていることがある場合はその何らかの介入が必要だと思うんです」

 



「特に宗教二世の場合は自分の悩みをうまく表現できないっていうのも半分あるんですよね...そこらへんをどうやってすくい取ってあげるかが結構重要かな」

 




宗教学の専門家は、信仰を背景とした児童虐待について、責任は宗教団体にあるとした一方で、社会にも求められる役割があると指摘します。

同志社大学 小原克博学長:「そこに解決を完全に丸投げするんじゃなくって、どこかでちゃんとすくい上げるというか、受け止めるような仕組みを社会がやっぱり用意していくしかないと思うんですよね...「助けて」あるいはですね自分が「苦しい」と言ったときに声を上げることができるような場が、ここにもあそこにもあるという状況を作っていくことが大事...」

 

 

 




では取材に当たった社会部の杉本記者です。杉本さん、虐待を受けた子どもたちの声を社会ですくい上げていく、このためには何が必要なんでしょうか。


杉本記者:はい、まず押さえておきたいのは、声を上げたくても上げられないという子どももいる一方で、虐待を受けていると認識できていない子どもも少なくないということです。国は、児童相談所や学校のほか、24時間応じる子ども専門の電話相談や、LINEでの相談窓口も活用してほしいとしていますが、子どもたちの現状をふまえると、これだけで十分とは言えません。

 



女性アナウンサー:一方でですね、宗教に関する話となると、なかなか本人も話しづらいでしょうし、信教の自由がある中で、周りの人も踏み込んで聞きづらいという感覚がありますよね。そういう中で、苦しみを抱える子どもたちをどう支えて行けばいいでしょうか。


杉本記者:はい、国や専門家によりますと、宗教の信仰があるなしに関わらず、子どもたちが置かれた状況や気持ちを、子どもの側に立って理解しようとする姿勢が重要だと言うことなんです。学校生活になじめていない、葛藤している様子があるなど、子どもたちが発するサインに気付いて一歩踏み込んで対応できるよう、私たちもこの問題について理解を深めていく必要があると思います。

 

 

ここまで特集でした



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