それでも夜は明ける | きゅーの思い出。

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「それでも夜は明ける」


監督:スティーブ・マックィーン
出演:キウィテル・イジョフォー、ルピタ・ニョンゴ、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ブラッド・ピット、他

<あらすじ>
1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモンは、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。
狂信的な選民主義者エップスら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は地震の尊厳を守り続ける。
やがて12年の歳月が流れ、ソロモンは奴隷制撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会い…。

<感想>
こういう映画って結構ドラマチックになったり、「泣かせよう」としてるなーというシーンがあったりすると思っていたのですが、この作品に関しては全くそういうシーンがなく、むしろどんな場面でも淡々と描かれていて、ある種の「冷たさ」を感じました。この冷たさはおそらく、この時代を流れていたものと同じなのでしょう。

この映画を観て個人的に感じたのは、一番恐ろしいのは「奴隷制」という制度そのものではなく、その制度に従って生きている人間なのだということです。ここでいう人間は白人も黒人も問わずみんなという意味です。

恐らくこの映画を観た人のほぼ全員が印象に残ったシーンとしてあげるであろう「主人公が首吊り寸前で放置されるシーン」。
ある白人の怒りを買ったがために、主人公ソロモンは木の枝に首から吊るされ、ギリギリ足が届くか届かないかの位置で放っておかれます。
死ぬまいと必死になってあがくソロモンの後ろで、いつもどおりの日常を送っているのは、ソロモンと同じ立場の奴隷たちでした。大人も子供もみんな「見て見ぬふり」をするんです。人間の行為の中でおそらく最も恐ろしいのが「存在する人間を集団でいないように扱うこと」なのではないでしょうか。このシーンは本当にぞっとしました。

このように、私たちが見れば「こんなのおかしいじゃないか」と思うようなシーンが結構あるのですが、それは「平和な時代で生きているから言えること」であって、もしこの映画の時代に生まれていたら、白人であれ黒人であれこういう風に生きていたんだろうなぁと思って、やるせない気持ちでいっぱいになりました。

ちなみに今現在も世界中に「奴隷」と呼ばれる人は無数にいます。
未来が真っ暗なまま、「それでも夜は明けて」しまい、また奴隷としての一日を過ごしている人がたくさんいるのでしょう…