カナリア

「カナリア」

オウム事件にヒントを得て撮られたフィクション。カルト教団ニルヴァーナが無差別テロにより解体。母に連れられて教団施設で過ごしていた光一(石田法嗣)は幼い妹と共に児童相談所へ預けられる。子供たちを引き取りに訪れた祖父は反抗的な態度を取る光一の引き取りを拒否し、妹だけを引き取っていく。妹を奪い返し、行方不明の母と三人で暮らすため光一は児童相談所を抜け出し妹捜しの旅に出る。偶然助けた少女・由希(谷村美月)と反発し合いながらもお互いの理解を深めながら二人は光一の祖父のいる東京へと向かう。

教団の異常性であったり、異常の中にあるごく普通の日常であったり、そういうシーンも少なくはないけれど、作品全体で言いたいのは教団そのものでは無いのでしょう。最終的に言いたいのは親子の愛情だと思う。教団に入っているから異常だとか、入っていないから正常だとか、そうとは言い切れないわけで、やむを得ず教団に入っている人もこの作品中では存在している。

最初に観終わった時、光一たちが旅の途中で出会う咲樹(りょう)と梢(つぐみ)の登場があまりにも無意味だと感じた。でも今になって思えば、彼女たちに出会った翌日の咲樹の電話の内容から、恋愛よりも親子の愛情が深いことを表したかったんでしょうね。

物語の本質はラストの由希が光一の祖父に対して叫ぶシーンに集約されていると思います。とても心に痛く響く言葉。子供たちの切ない心情がよく伝わってくる。それと同時に、ラストより少し前、光一の母が父(光一の祖父)へ電話で伝えた言葉にもまた胸が痛む。どんなに父に見離されようが、子は親を想っていたんだなって。不条理ですね。