『ひめゆり』と沖縄戦⑶ | 井坂茜ブログ!あかねこ★進化論*。
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◯汚しメイクが徹底されていて好感が持てた。


ツイッターで目にしたご感想です。

「汚し」のメイクは、赤や茶色のドウラン(舞台用の化粧品)だけでなく、コルクを炙った煤をつけたりもしていました。

学徒たちはだいたい、飯あげ任務(陸軍病院壕がある山から村へおりて、炊事場で用意したご飯を担いで運ぶ任務)のシーンあたりから徐々に汚しメイクをしていて、舞台が進むにつれてどんどん汚しも足されていました。

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☝︎わたし、どうしても汚しをした顔でにこにこ自撮りをする気分になれず、、、(笑)わかりやすい写真がないので、面会の時に撮ってもらったこちらですみません。汚しメイク、こんな感じです。

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☝︎手脚ももちろんボロボロです。

靴も、自前で2足用意している子が多くて、各自それぞれの役の逃げた足取りなど想像しながら2幕用の1足はボロボロに加工していました。

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☝︎以前ゆき役で出演していた水野貴以ちゃんの「汚し靴下」がさすがだと思い、ダブルはるも真似させてもらいました😊守屋由貴ちゃんがコーヒーで染めて、わたしが色の汚しを入れた共同製作です✨


汚しメイクは、メイクだと思ってやってはいけないと思っていました。メイクだけど、それは「傷」や「痣」だったりするからです。。わたしは自分の顔や身体を汚しながら、どういうシチュエーションでこんな怪我をしたのか、いつも想像していました。

♪婦長さん、ちよが!と、ちよが撃たれたことを伝えに走ってくるシーンでは、お客様から見える方の頬に機銃掃射の弾のかすり傷をつけていました。

森の中を走って逃げた時に転んで擦りむいた時の肘の傷、湿気の高い壕の中で働いて汗を拭った時についた顎の汚れ、などなど。。爪の中も汚れるように手で塗ったり。。

はるかなみさの投降のシーンは裸足で、裸足の汚しはこだわりがありました。というのは、実際にひめゆり学徒隊散華の地である荒崎海岸に行った時に、その岩肌のゴツゴツした感触に「ここを裸足で逃げていたら傷だらけだっただろうな」と思ったからです。

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☝︎この写真は大度海岸ですが、砂浜と一緒にこういう岩場もあります。なので足は特に指の先まで汚したり、血が滲んでいるようにしていました。

傷ひとつつけるに対してもわたしの中では想像力が大事な作業で、舞台上には出ていない時間ですがそういう意味では集中力は舞台上にいる時と変わらなかったと思います。汚しをしながら、舞台上の進行にももちろん集中していて、いま舞台上で行われていることの間に自分の役は…と想像をすることも次のシーンへ繋げていく大事なプロセスでした。

そしてこういった作業のひとつひとつが、きっと、お客様の想像力も掻き立てる要素になるのではないかと思っています。



汚しメイクと似たことで、

○美しい笑顔だった学徒たちが、舞台が進むにつれて顔が汚れ服はほつれて、髪も乱れてきてせつなかった。


というツイート。本当にそうですね。

お衣裳もどんどん汚れていきます。学徒たちは1幕では白いシャツだったのに、2幕では全体が褐色になってしまいます。はるかなみさは特にずっと逃げ回っていたので、みんなよりもう1着お衣裳が多くて、ズタズタのボロボロになってしまいます。婦長さんや先生の真っ白なお仕事着が、だんだんと汚れていってしまうのも哀しいですね。なんだか、その人のまだ見ぬ真っ白な未来がだんだんと翳ってくるようにも見えます。


メイクやお衣裳など目に見える部分以外にわたしが気をつけていたことは、開演30分前からは何も食べない。ということです。

ひめゆりの稽古期間中に観劇した『パレード』という作品(滝軍曹役の小野田龍之介君も出演)に出演していた、わたしの大好きな先輩・飯野めぐみさんが、2幕に精神的にも辛いシーンが控えてるなか少しお菓子を食べようとしたところ、演出家から「まだ幸せを感じちゃだめ」と言われたというお話。(いいめぐさんのブログに書いてあるかも😊)

それを聞いて、確かにそういうのって大事だよなぁと思ったので、わたしも真似させていただきました!特にわたしは直接、「空腹である」という役の状況だし、最後にアメリカ兵から食糧をもらうシーンもあるので…開演30分前から(と思ってたけど、たぶんそれより前からになってた)何も食べずにひめゆりの世界を生き、最後にもらった食糧は、美味しい…というか、特別な味に感じました。




○非国民と呼ばれて生きられる?という、はるちゃんとしては当然の何気ない問いかけが突き刺さった。
○戦地に赴くのを渋る級友を励ましたことで、結果として大切な仲間を失ったはるちゃん、級長として責任を感じたのでは。


はい。

終演後、涙が止まらない理由はこれが大きいのだと思います。

いま文章を綴ろうとするだけでも涙が出てくるのですが、きっとこういう思いの何百倍、何千倍のまま戦後何十年も生きてきた方もたくさんいらっしゃるので、書きたいと思います。

はるちゃんの心情を探るためのヒントはいつも、生き残った方々の証言の中にありました。 

「お国のために役に立つ、それが当たり前。従軍するのが当たり前だと思っていたから、当時は不満も何もありませんでした」
「日本のために闘った兵隊さんのために働けるなんて、そんな名誉なことはないという思い」

そして特に印象に残っているのは、

「どうしてこの兵隊さんは、天皇陛下万歳と言って死なないんだろう!どうしてお母さんなんて言って死ぬんだろう!と、その時は思いました」

はるちゃんもそれくらい思っていたかもしれません。軍国少女ですね。

朝礼のあと学徒たちが残って、家に帰るか学校に残ってお国のために戦うか議論するシーン。家に帰りたいと言うふみ、ゆき、ちよに対して、はるは、

非国民と罵られる
裏切り者と指さされて生きてゆける?
狭い故郷こんな時に逃げ出すなんて

と、少し非難も入ってるでしょうね、、、説得をします。他のみんなにも、わたしは残るわ!と笑顔で伝えて、みんなでお国のために役に立とうと一致団結したあと、はるはちよに「お母さん心配だけれどがんばりましょう」と、ふみには「大丈夫、日本がすぐに勝つわ」と声をかけます。

ふみ、ゆき、ちよ。

この3人は、はるの名前を呼ぶ3人なんです。

2幕の頭でみんなからはぐれて妹のルリと2人きりになってしまったふみは、辺りを見回して「キミちゃん…?はるちゃん…!みさ!」と級友たちを探します。

「小鳥の歌」を歌うゆきは、2番で「あの小鳥になれたら 誰にも見つけられない あの森の中へ隠れて眠ろう 自由にはばたいて高い枝の上 あなたを見つけるの はるちゃん!私よ もう終わったわ」と。

撃たれてしまったちよが学徒たちに「ねえ覚えてる?」と語りかける夏の日、秋の日、最後は「はるの、あの日」です。その時ちよが、しっかりとはるのことを見てくれます。

そして、ちよとゆきは、亡くなります。
ほとんどの級友が、亡くなります。
はるは、生き残ります。


責任というか、後悔というか、、、ただただ、生き残ってごめんなさいという気持ち。

実際に、生き残ったことで、子どもを亡くした人から「どうしてうちの子は死んだのにあなたは生きてるの」と言われたとか、従軍せず本土に疎開していて沖縄が返還されて帰ったら「あんたも、ひんぎら隊(ひんぎるは、沖縄の言葉で逃げる)だったの」と言われたとか、、、



終演後に、生き残ってよかったですねとお声をかけていただく事が多かったのですが、一度も、よかったですとは答えられませんでした。生き残ってもつらくてつらくて、、、ちよやゆきちゃんやみんなに申し訳なくて、、、


ひめゆり平和祈念資料館でお会いした元学徒の方が、ずらりと並んだ顔写真の中から迷う事なく「○○さんはこの方で、あそこにある証言の中に出てきますけど、こういうふうに亡くなって…」とか沢山説明してくださったのですが、きっと生き残ったことへのそういう想いがあるからこそ、亡くなった級友のことを一人でも多く、名前も、顔も、最期も、伝えていかなくてはと思ってらっしゃるんだろうなと感じます。



ううう、この件に関してはまったくまとめられる自信がありません。。。とにかく、わたしは結局お芝居でしかしていないわけですが、それでも。二度とこんな気持ちは誰も味わってはいけないと思います。




はー。
千穐楽から2週間経ったのに、泣きながら書きました、、、(笑)



わたしのひめゆりブログには、「〜という証言があります」というのが物凄く多いかと思うんですが、それは、やっぱり出来るだけ嘘のないお芝居にしたいなぁと思ったので沢山「証言」を読むようにしたこと、そしてその証言を芝居に取り入れるようにしたことからきていると思います。

「喉が渇いて仕方なかったから、海水や、壕の中の結露から溜めた水や、おしっこや、死体が浮いていた井戸の水でも、飲んだ」という証言から、2幕の頭で脱出しているシーンでは雨水を手に溜めて飲むという仕草を入れました。

「兵士の包帯をほどくと、まるまると太った蛆虫がたくさん転がり出てきた」という証言から、陸軍病院のシーンで兵士の包帯を解いたときは蛆虫を取り払う仕草。などなど、書き出すといくつもあるのですが、こういう芝居をしていたよということではなくて、こういう事実があったよというのをお伝えしたいなぁと思い、少し書いてみました。




ひとまず、これにてわたしのひめゆりブログは終わりです。ここまで読んでくださった皆さんありがとうございます😊

これからも沖縄戦に限らず、戦争についての勉強は続けていきたいので、「これはぜひとも皆さんと共有せねば!」という事が出てきたらまたブログにも書こうと思います。

女優としてだけではなく、日本人としても、大事なことをたくさん教えてくれた『ひめゆり』という作品に出演する覚悟を決めて本当によかったと感じています。そして素晴らしいキャスト・スタッフの皆さま、お客様に出逢えたことも大きな財産になりました。

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☝︎へちま襟ブレザーでの写真もあったので載せておきます☺️


またご縁があったら…この作品と関われたら嬉しいな。


改めまして、2017年ミュージカル『ひめゆり』応援して頂いた皆さま、本当にありがとうございました!



愛する沖縄へ祈りを込めて。
星組はる役・井坂 茜




AKA LIVEvol.2~探せども、探せども~」

谷口あかり・井坂茜・久田菜美(pf)

①~海を越えて~

7/25(火)18:30open/19:00start

②~山を越えて~

8/13(日)12:00open/12:30start

@レストランパペラ(新宿御苑)

¥4,000+お食事¥1,500

2daysセット割−¥1,000

http://ameblo.jp/a-k-a-n-e-m-u-s-i-c-a-l/entry-12276395386.html




MerryCreationNote

8月

18(金)19時

19(土)13時 / 19時

20(日)13時

@調布市せんがわ劇場

一般 4,000円 / 学生 3,500円

⬇︎詳細はこちら!

http://ameblo.jp/a-k-a-n-e-m-u-s-i-c-a-l/entry-12281222302.html
⬇︎ご予約はこちら🎵

https://tiget.net/users/1120




逢魔が時 3rd LIVE

「さみしい王女」

9/28(木)

19:00open / 19:30start

@四谷天窓(高田馬場駅)

おとな ¥3,800 / こども ¥2,000

⬇︎ご予約フォーム

https://www.quartet-online.net/ticket/samishiioujo2017




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