皆さんこんばんは。
アクションとホラーをこよなく愛す映画フリークいわしでございます。
不定期ながらコンスタントに更新しておりますコラム『いわしの映画独論』シリーズ、今回はこれまでにたぶん誰も取り上げてないだろうジャンルの女優について紹介、解説したいと思います。
昭和の名女優として知られる、高橋惠子、美保純、東てる美など。彼女らはとある出身女優として知る人ぞ知る存在です。
彼女らは当時でいう『にっかつロマンポルノ』出身の女優であります。
俗にいう『成人映画』の出身の彼女たちですが、後に普通の邦画界に進出し、押しも押されぬ人気女優として活躍しております。
ポルノ女優から映画女優へ。まさに夢ある感じですが、そこには非常に高い壁がありました。
映画自体の規制が複雑ではなかった昭和時代、後に邦画で名監督と呼ばれる人々がこのにっかつロマンポルノで作品を作っていたという経緯もあって、そこから邦画界、そしてテレビへと流れるにつれ、多くの活躍の場所ができたことにより、世間の評価は一般的な映画女優とそこまで隔離はしていませんでした。
大監督の前では一般女優もヌードを披露していた時代でもあったので。
ところが映画倫理規制が当時より厳しかったハリウッドではどうでしょう。
ポルノ女優はジャンルとして確立されており、そこから一般作品へという成功した例は数少ないように思えます。
それではアクション映画大国である『香港映画界』においてはどうでしょう?
実は香港映画界にもいわゆる成人映画として相当するものがあり、それをカテゴリー3、題して『三級片』作品と呼んでおります。
ただし香港映画界における『成人映画』への審査基準は特殊でしかもかなり厳しいものとなっています。
撮影上ボカシが入ったりするような絡みシーンがあったり、そもそものセックスシーン主体とした作りであれば当然成人映画指定ですが、香港映画の場合、例えばほぼ全編がアクションものであったにしても、主演女優がヌードを披露していると成人映画とされてしまいます。
それは少しシャワーシーンがあり、バックショットでお尻が見えたというだけであってもです。
このため、香港映画の成人映画として紹介されている中には『これのどこが成人映画?』と思われるものも少なくありません。
そのため、意外な有名女優が三級片出身であるというのも珍しくないのです。
前置きは長くなりましたが、そうした香港映画界で活躍している意外な三級片出身女優を紹介し論じていきたいと思います。
まずはこの方、
『ヴェロニカ・イップ』
でございます。
香港出身の彼女は三級片女優としてデビューするとその美貌と肢体で瞬く間にトップ女優となりました。作品自体はソフトなものが多いものの当時としてはオールヌードをみせる稀有な女優として話題に。その後モデルや歌手としても活躍し、歌姫として三枚のアルバムをリリースしております。
三級片からの卒業後は、香港映画界でも活躍の場を広げ、『大英雄』や『宝島』、『女たちの挽歌シリーズ』といったアクション作品にも出演し、トニー・レオンら香港の大御所たちとも共演。ポルノ女優から一般女優への成功例の先駆者として日本でも知られている存在です。
彼女の魅力はなんといってもその妖艶な美貌とヌードも辞さない演技。成人映画としてのカテゴリーに分類されることは多いものの、文化系作品やスリラーものなどジャンルも幅広く、今でも動画で鑑賞できるものもあります。
時同じくして、エキゾチックで小悪魔的なフェイスとモデル級のボディで人気を博していたのが、
『チンミー・ヤウ』
でございます。
三級片女優としてのくくりはされていますが、彼女の場合は出演する作品が結果として成人映画認定されることが多く、セクシーシーンとしてもいわゆるバックショットでのオールヌードやソフトな絡みくらいのもの。
ただ彼女の場合、香港映画界の問題児バリー・ウォンの愛人であったことから、そうした目で見られることが多かった様子です。
バリー・ウォン監督作品にはかなりの確立で主演するため、彼女が三級片出身であることを知らない香港映画ファンも多いのではないでしょうか。日本でもジャッキー・チェンの『シティーハンター』で冴子役を演じたり、ジェット・リーとは『新・少林寺伝説』や『魔界教主』などで共演するなどアクション女優としても認知されており、華やかなカンフーをみせたりしています。
彼女の魅力は吸い込まれそうな大きな瞳とモデル級のスタイルのよさ。成人映画とされているアクション『レディーウェポン』シリーズでは素晴らしいボディをみせていて、激しいアクションながらセクシーなガードルをつけてという二重に楽しい見せ方をしております。
三級片から一般へという動きもあれば、その逆でトップクラス女優が突然の三級片出演というパターンもあります。
ヌードを話題にした戦略ともいえますが、その口火を切ったのが
『ロレッタ・リー』
でございます。
日本でも『孔雀王アシュラ伝説』や『最後勝利』といった作品で出演していた彼女はそのアイドル性高いルックスから『香港の薬師丸ひろ子』とも呼ばれていましたが、96年ごろに突然のヌード写真集を発表すると三級片作品に次々主演。オールヌードで作品をおうごとにハードな絡みもみせ、日本でも彼女の作品は『~ロリータシリーズ』としてレンタル業界で人気を博しました。
アクションよりはスリラーやエロチックコメディといったジャンルでの活躍が多く、三級片の第一線を退いてからは一般映画にも復帰し、マックス・チャンの『無敵のドラゴン』などにも出演しております。
彼女の魅力は、そのアイドルフェイスと相反するグラマラスな肢体。日本のアダルト界でも一大ムーブとなった芸能人ものの香港版のはしりであったと思われます。
そして日本で歌手・タレントとして大ブレイクした台湾出身のこの方
『ビビアン・スー』
も知られざる三級片出身の女優のひとり。
元々は台湾の美少女コンテストでグランプリとなり、『少女隊』というアイドルユニットに所属していた彼女ですが、本格的女優活動に向けてなんとヌード写真集を発刊。
彼女が日本で活動をはじめる前に香港三級片の作品に数本主演し、当時20歳前後の瑞々しい裸体と大胆な絡みのシーンが後に話題となりました。
日本でバラエティなどで有名になっていく最中で過去の主演作としてこの作品群が日本でもリリースされ、『ビビアン・スーのロマンシングドラゴン』や『魔鬼天使』など『天使シリーズ』として人気を博しました。
その後の活躍は言わずもがなでタレントとしてブラックビスケッツのヒットや映画女優としては『アクシデンタルスパイ』でジャッキーとの共演など台湾だけでなく中華圏を代表とする女優として今でも変わらぬ美貌で活躍しております。
そして最後に取り上げるのが香港三級片出身女優で最も成功した
『スー・チー』
でございます。
ビビアン・スーと同じく台湾出身の彼女は18歳でモデルデビューするとソフトポルノ作品で主演を重ねていきます。
当初はセクシーアイドル扱いの配役が多かったですが、そんな中でポルノ業界の裏側を描いたコメディ『夢翔る人/色情男女』で香港映画の最優秀助演女優と新人賞を受賞したことから三級片女優初の受賞者となり、注目されると瞬く間にトップ女優へ。
日本ではコカ・コーラの烏龍茶のCMやジャッキー主演の『ゴージャス』でのヒロイン役で広く知られ、ハリウッドでは『トランスポーター』でジェイソン・ステイサムと共演するなどまさに三級片出身最高のブレイク女優といっても過言ではないでしょう。
彼女の魅力は、コケティッシュな魅力のフェイスとモデル級の肢体。そしてアクションからドラマまでなんでもこなせる高いポテンシャルです。アクション女優としても『クローサー』や『花嫁はギャングスター』などハイレベルな格闘シーンをみせ、現在も主演、脇役問わず活躍し続けている名女優でございます。
いかがでしょう。
香港映画界においては三級片出身といってもそのレペルはそれぞれであり、一般作品への障壁もそこまで高くはないと思われがちです。
しかしレディースアクションが盛んだった80年代から90年代にかけては海を渡ったアクション女優でさえセクシーシーンに利用されることは多かった様子。その辺りはまた別に語るとして、その中で今回紹介した彼女らは類いまれな才能とチャンスをものにした名女優なのだと思います。
それでは最後にそんな彼女らの共演したオススメ作品をひとつ紹介して今回の独論をしめさせてもらいましょう。
当時新進気鋭だったスー・チーと三級片女優としての知名度を確立させたロレッタ・リーの共演が話題となったエロチック武侠アクション
『スー・チーのSEX&禅』
でございます。
原作は古くからあるSF官能小説でスー・チー扮する九尾の狐が絶倫な富豪を侵食し、崩壊させていく物語で、ロレッタ・リーはその富豪の娘で魔物退治の宿命を帯びる役柄です。
ワイヤービュンビュンの武侠アクションなのですが、主演二人による濃厚なエロチックシーンが話題となり、クライマックスではスー・チーとロレッタ・リーによる絡みという今では観ることの叶わないシーンが見処です。
そんなところで今回はここまで。
それでは皆さん機会があれば彼女らの活躍を鑑賞してみてくださいませ。
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