ブラックフットキャンプ場の管理人クロプシーは偏屈で粗暴な性格からキャンプ場を利用する少年少女たちから忌み嫌われていた。
ある夜、クロプシーの度重なるいじめに業を煮やした少年たち5人は寝ている彼に仕返しをしてやろうと彼が寝ているベッド際にミミズを這わせた髑髏の蝋燭を置き、驚く様を見ようとする。
目が覚めたクロプシーは髑髏の姿に驚愕し暴れまわるが、その時蝋燭の油がベッドに引火。
クロプシーの足に火がまわる。
更にあわてふためくクロプシーはそばにあったガソリンをこぼしてしまい、足についた火が一気に燃え広がり、クロプシーは全身を炎に包まれ悶え苦しみながら家の外に飛び出す。
想定外の出来事に戸惑い、逃げていく少年たちを尻目に炎に包まれたクロプシーは崖を揉んどり討って転げ落ち湖に落ちる。
救急病院に運ばれた彼は奇跡的に命こそ取り留めるが、医者たちの奇異の目を引くほどに無惨な大火傷を負っていた。
5年後。
クロプシーは退院する。
しかし全身を負った大火傷はケロイド化し、その顔は二目と見れないほど恐ろしいものとなっていた。医者は『事故だった』と彼に諭すのだが治療に費やした日々はクロプシーに少年少女たちへの恨みと狂気を植え付け、恐るべき怪物へと変貌させる。
黒づくめのコートとマスクに身を包み、娼婦街を歩く彼は娼婦に誘われ、家へと招かれるがクロプシーのそのおぞましき姿を見た娼婦は恐れおののき、逃げようとする。
そんな彼女を捕まえたクロプシーは大きなハサミを手にし、彼女の腹を裂いて殺害し何処へと消えていく。
所変わってストーンウォーターキャンプ場。
5年前の忌まわしき事件から名前を変えたここには今年も少年少女たちによるサマーキャンプが開催されていた。
思春期の年長組の楽しみはただひとつ、恋愛にセックスのこと。
男女それぞれのグループで恋愛やセックス話に悶々となるなかで、男子グループのいじめられっこのアルフレッドが女子グループのシャワーを覗くという事件が起こる。
覗かれたサリーの彼氏を気取る男子グループのいじめっこグレイザーは執拗に彼を脅し、いじめるのだが、その様子をキャンプのリーダー、トッドは割って入り、いじめるグレイザーに問題を起こせば追放すると釘を刺す。
そんな小さな事件が起こりつつも和気藹々と楽しむ参加者たち。
そんな様子を森の茂みの暗闇から息を潜めて見つめる黒い影があった。
アルフレッドはその気配を感じ、窓の外に化け物のような顔が覗き込んでいる姿を見つける。
慌ててトッドらにその事を訴えるのだが誰一人として彼の証言を信じるものはいなかった。
翌日。
キャンプ指導員のトッドとミシェルは年長組の十数名を引率して川を遡った『デビルズクリーク』と呼ばれるキャンプスポットへ小旅行に出かける。
その夜、トッドはキャンプファイヤーを囲んでこのデビルズクリーク周辺にまことしやかに伝わる恐ろしい事件を語りだす。
それはかつて実際に起こった管理人クロプシーが火だるまとなって行方不明になったという事件で、都市伝説化した彼は現在も子供たちを狙う復讐鬼として森のなかで生き物を食べながらキャンプにくる子供たちを殺している話であった。
皆が恐怖に震えるなかで、年長者のひとりエディは女子グループのカレンを湖に誘う。
裸になりセックスを迫るエディのナンパな態度にカレンはこれを拒否。怒った彼女は帰ろうとするが脱いだ服は何者かによって散り散りにされていた。
下着をみつけ、服をみつけ森のなかをさ迷うカレンは上着を見つけ取ろうとした時に黒づくめのクロプシーに襲われ、巨大な植木ばさみで喉を切り裂かれて絶命する。
翌朝、カレンが行方不明になったことに騒ぐトッドたちは河岸でひとり寝ていたエディを叩き起こし、突き詰めるがエディも彼女の行方は分からなかった。そんななか、彼らがここまできたボートが全て消えていた。
元のキャンプ場までは原生林の道なき道を数キロ以上歩かなければならない。
不穏な空気が流れるなか、トッドは筏をつくって川を下り、キャンプ場に助けを求めにいく案をあげる。
エディを含む数名が筏に乗り込み、キャンプ場へと向かう。
手漕ぎで疲労困憊のなかで一行は失くなったカヌーを発見。急ぎ漕ぎ寄せると待ち伏せしていたクロプシーが仁王立ちで巨大ハサミで襲いかかる。
あるものは指を切り落とされ、あるものは喉を突き刺され、またあるものは頭を切り裂かれるなど瞬く間に殺されていった。
トッド達がエディたちの知らせを待つ頃、グレイザーはサリーを誘って茂みの奥に来ていた。
セックスを終えて、ランプを取りにグレイザーが戻る中、ひとり残っていたサリーにクロプシーが襲いかかる。
そしてランプを持って帰ってきたグレイザーは寝袋の中で無惨に刻まれたサリーの死体を発見、驚き仰け反った所にクロプシーのハサミが彼の喉元を貫きグレイザーは絶命する。
グレイザーの様子を怪しみ、つけていったアルフレッドは彼が殺される場面を目撃し、トッドにその事を伝える。
最初はいぶかしげにしていたトッドだったが、駆けつけた先で見たのはグレイザーとサリーの無惨な姿であった。その時何者かに刃物で切りつけられ気を失う。
トッドが襲われ、動転したアルフレッドは慌てて逃げ出すのだが、クロプシーに気づかれ追い回される。
その頃、救援を待つミシェルたちのもとにカヌーが流れ着いてくる。
ミシェルが泳ぎ近づくとそこには無惨に切り刻まれたエディたちの死体が。
気がついたトッドは急いでミシェルたちを呼び、エディたちを下ろした後彼女たちをキャンプ場まで逃げるように促す。
そしてトッドは斧を片手に行方不明となったアルフレッドを探しに森の中へと入っていく。
逃げ惑うアルフレッドは奥地にある廃墟となった家を見つけ隠れるのだが、そこはかつてクロプシーが火だるまとなった因縁の地であった。
植木ばさみを腕に挟みつけ身動きを取れなくするとクロプシーは追ってくるトッドを待ち受ける。
アルフレッドの叫び声を聞いたトッドはその声を頼りに廃墟へと近づいていく。
中に入るとそこにはガスバーナーを手にクロプシーがトッドを殺さんと待ち構えていた。
憎悪に満ちたクロプシーの目を見て、トッドは忌まわしき記憶を思い出す。
そうトッドは昔クロプシーが火だるまとなった悪戯の仲間の中にかつていたのだった。
復讐心に溢れるクロプシーを前にトッドたちは生き残ることができるのか…
巨大植木バサミを使った殺戮シーンが話題を呼んだ80年代スラッシャーホラーの作品のひとつ。
『13日の金曜日』が空前のヒットを記録し、『エルム街の悪夢』など殺人鬼ホラーがホラー映画界を席巻していた頃。そのヒットにあやかるかのように様々な殺人鬼ホラー、いわゆる『スラッシャーホラー』ものが製作された。
折しも同時期に血渋きが舞う『スプラッターホラー』も隆盛しつつあり、この頃はホラーといえば殺人鬼ものが主流の時代であった。
本作はそんなスラッシャーホラーを代表する作品群のひとつで、カルト人気も高い代物である。
日本では劇場公開の他にその話題性と人気から土曜の夜のゴールデンタイムで放映され、当時の子供たちにトラウマを植え付けている。
本編では殺人鬼の名前は『クロプシー』だが、なぜか日本では『バンボロ』と名付けられていて、その名前で記憶している方も多いだろう。
残酷ものを売りにするスラッシャーホラーは数多くあったが、本作はそういった有象無象のものとは一味違う。
なんと本作の製作陣にはあの『13日の金曜日』のスタッフたちが関わっており、設定的に似通っているのはそのため。
セックスする若者は殺されるなど殺人鬼ホラーのあるあるはしっかりと踏襲されていて、ある意味王道のスラッシャーホラーものともいえる。
肝となる残酷描写には『ゾンビ』や『13日の金曜日』でその辣腕を奮ったトム・サヴィーニが担当。
喉元に深々と突き刺さるハサミやチョン切れる指、切り裂かれる頭蓋など彼のこだわりに満ちた切株メイクが冴え渡っている。
テレビ放映の当初とかはその逆行に光るハサミや殺戮シーンに多大な恐怖感をおぼえたものだが、今見ると結構淡泊に映ってみえて、ショッキングなシーンもそこまで恐怖を感じることがない。ワタクシ自身のホラー耐性が上がっていることも否めないが、煽り文句が強烈だっただけに怖さとしては物足りなさが残ったのは事実である。
また最後に対峙するのがかつてのいじめっこで彼によって断末魔をむかえることになるため、どうしても、クロプシーを贔屓的に見てしまう。
クロプシーが本格的に始動する中盤まではとにかくやることしか考えていない青少年たちのどうでもいいドラマが展開され中弛みは否めないのだが、殺戮が開始してからテンポも小気味よくスピード感も増している感じ。
『13金』の亜流作品としてはエンタメ性も高く、スラッシャーホラーの佳作としてオススメしたい作品である
残酷度…★★★★
評価…★★★
(逆行を背に光るハサミを掲げる姿は神々しいくらい。トム・サヴィーニもいい仕事してます。)