皆様こんばんは
アクションとホラーをこよなく愛する映画フリークいわしでございます。
もういい加減コロナも緊急事態宣言も飽き飽きな感じですがそんなクサクサしたときはアクション映画でもみてスッキリしましょう。
てな具合で私いわしがこれまでの鑑賞記録と観察力から独自の目線で好き勝手に論じております『いわしの映画独論』シリーズでございます。
今回のお題は『格闘アクション』に関すること。
アクション作品において格闘シーンというのは作品を盛り上げるのに必須のものでありますが、この出来具合によって作品の面白さもかなりかわってくるものであります。
パワーとパワーがぶつかり合う文字通りの肉弾戦もそれはそれで迫力があり、面白いものではありますが、やはりパワーよりも面白さを引き立てるのは演じる人間の『テクニック』でしょう。
こと格闘アクションやカンフー映画においてはパワーよりもテクニックの方が重要視され、そのスピードやテクニックによる格闘シーンが作品の出来を左右することも珍しくありません。
テクニカルな格闘の多いカンフー映画においては基礎ベースで身体能力の高い俳優が多く、その技もハイレベルですが、その中でも最も華麗で難しいのが『足技』です。
そして中でも超人レベルでその技を極めたスターは主役でなくても強烈なインパクトを残し、観るものを魅了します。
ジャッキーやスタローンのようにワールドワイドな作品でなくても己の足技ひとつでマニアを虜にする通称『スーパーキッカー』たち。
必ずしも有名ではないが各時代を彩ったその足技師たちをご紹介したいと思います。
今回紹介するのは主に1970年代前半を中心に活躍したスーパーキッカーたちです。
まず紹介するのはこの方
『タン・トゥリャン(譚道良)』
でございます。
1947年生まれの彼は12歳でテコンドーとハプキドーを始めると17歳の時に当時最年少テコンドーインストラクターとして大人たちの指導にあたります。
20歳の時にテコンドーの大統領カップ選手権で優勝するとそれから三連覇を果たし、以後台湾にわたって多くの門下生を指導しております。
映画界のデビューもこの頃で『潮州怒漢』で主演デビューするとその鮮やかな足技で注目され、次々主演作品を重ねますが、自身は俳優業は副業と考え80年代半ばに引退しテコンドー道場を経営しながら現在も後進の育成に携わっています。
彼のアクションの特徴はその連続蹴りの凄まじさ。選手権で勝つために編み出したというその蹴りは軸脚のバランスを保ったまま蹴り脚を地面につけることなく相手の顔面を中心に集中砲火で狙いまくるもの。
その姿から『フラッシュレッグ』と称され、神脚とも飛脚とも呼ばれる彼はまさに最強のスーパーキッカーに相応しいでしょう。
そんな彼は足技だけでなく両足を開脚して狭い壁と壁の間や木と木の間を手放しで上っていく『壁虎功』というテクニックも持っていて『空飛ぶ十字剣』などで披露しています。
日本公開作品が少ない彼ですが彼のテクニックを身近で感じられるのがジャッキー・チェンが準主役で出演する『ジャッキー・チェンの秘龍拳/少林門』、先述した『空飛ぶ十字剣』、『カンフーエンペラー』あたり。
ぜひそのスゴ技を堪能してみてください
彼のテクニックが堪能できる動画がこちら。
次に紹介しますのはなんとブルース・リーとジャッキー・チェンに見初められたスーパーキッカー。それが彼
『ウォン・インシク(黄仁殖)』
でございます。
16歳の頃に当時韓国合気道最高位だったチ・ハンツァイから黒帯を認められその後韓国合気道七段の実力者となります。
1972年に『アンジェラ・マオの女活殺拳』でデビューするとその全身を回転させるような連続回し蹴りが注目され、あのブルース・リーが自らスカウトして『ドラゴンへの道』の敵役に抜擢。本作品では実力よりもその迷演技ぶりが注目されました。
悪役中心の活躍でしたが後に半引退状態に。しかしそこにジャッキー・チェンから再び熱いオファーがあり復帰した『ヤングマスター師弟出馬』で史上に残るジャッキー作品の最強の悪役として評価されるのでした。
彼のアクションは若い頃はそのスピードと駒のように繰り出される連続の回し蹴りが主体でしたが、復帰あとは切れ味鋭いレッグコントロールのほかに流れるように鮮やかな韓国合気道の間接技を取り入れ、まさに投極打一分の隙もないスーパーキッカーとして名を馳せるのでした。
若い頃と復帰後の見比べも面白いですが、オススメはデビュー作の『アンジェラ・マオの女活殺拳』、そして『ヤングマスター』でしょう。
ジャッキー作品ならば『ドラゴンロード』でも相変わらずのキレの足技を見せてくれています。
最強の誉れ高いインシクの足技『ヤングマスター』より
還暦を過ぎた現在も第一線で活躍しているアクションスター、
『ブルース・リャン』
彼もまた名だたるスーパーキッカーのひとりとして数えられているアクション俳優であります。
しかも彼については実際に数人の刃物を持った暴漢に襲われながらもこれを撃退し倒したというリアル最強伝説まで流れています。
カンフー映画の老舗ショウブラザーズの最年少武術指導家として活躍していた彼は呉思遠のすすめで俳優に転向すると6歳から習得してきたテコンドーや空手を武器に躍動。
当時人気を博していたブルース・リーの一撃必殺アクションに対抗すべく、殴っては走り、蹴っては走るというオリジナルのアクションスタイル『ハイスパートクンフー』を編み出します。
その壮絶さはカルト的人気を呼び、主演デビュー作『必殺ドラコン鉄の爪』以降は盟友倉田保昭との対決ものでこのスタイルを完成させます。
80年代末に芸能界を離れ、色々とトラブルに巻き込まれるなど壮絶な人生を送りましたが、チャウ・シンチーの『カンフー・ハッスル』で衝撃の復活を遂げると以後も老齢ながら現役さながらの足技をみせたり、貫禄の増したクンフーで活躍しています。
彼のアクションの魅力はなんといっても連続の飛び回し蹴りと超人的なジャンプ力。
先述したハイスパートクンフーからも分かるようにそのきりもみのように繰り返される旋風脚や敵の頭上を遥かに越える飛び蹴りなどは一度みたら忘れられない凄まじさです。
彼の黄金期の作品として『帰ってきたドラゴン』、『必殺ドラゴン鉄の爪』などは評価が高い作品であるほか、若きジャッキー・チェンとの共演作『ジャッキー・チェンの飛龍神拳』もオススメですよ。
色男だったブルース・リャンのアクションはこちら
さて、今回最後に紹介するのは前述したブルース・リャンと対等以上に戦える身体能力とテクニックをもつ和製ドラゴンこと
『倉田保昭』
でございます。
テコンドー系の目立つこの時代のスーパーキッカーにおいて倉田の系譜は沖縄空手と剛柔流空手が主体。しかし彼の蹴りをみたショウブラザーズの名監督チャン・ツェーは絶賛したそうです。
名だたるショウブラザーズのスターたちを相手に誰よりも凄まじいキレの突きと連続回し蹴りをみせる倉田はいつしか香港映画界最強伝説のひとりにまで数えられるほどになっていました。
さらにはブルース・リャン、ジミー・ウォング、サモハン、ジャッキー・チェンとも戦い、五十半ばを過ぎて挑んだジェット・リーとの対決はリーが怯えるほどのキレで圧倒します。
現在もまだアクションスターとして活躍を続ける彼はまさに日本がほこる最高のアクションスターでありスーパーキッカーであります。
出演作の多い彼の作品ではオススメもなかなか難しいですが、スーパーキッカーとしての彼が堪能できるのはブルース・リャンとの共演作である『帰ってきたドラゴン』、あと『激怒の鉄拳』や『大追跡』『カンフー大作戦』といった台湾製作品では段違いのレベルのアクションのキレに圧倒されることでしょう。
個人的には盟友ボロ・ヤンと対決する『ファイナルファイト最後の一撃』やジェット・リーとの対決が見所の『フィストオブレジェンド怒りの鉄拳』などもオススメですね
そんな倉田さんのキレきれアクション集がこちら
さていかがでしたでしょうか?
ブルース・リーだけではない優れた逸材はまだまだたくさんいます。
足技は格闘シーンにおいて最も映える技であり、最も難しい技であります。
そんな超人的な技をもつ彼らの作品をぜひとも観ていただきたいものです。
有名な作品もいいですがよりスゴいアクション作品が観たいと思ったらぜひ今回の独論を利用していただければと思います。
それではこのシリーズは次回70年代後半編で。
そして独論次回のネタもお楽しみに
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