皆様こんばんは。映画マニアのいわしでございます。
こちらは無類のアクション・ホラー映画マニアないわしが独自の調査と豊富な鑑賞記憶をもとに超個人的な独論を展開する映画コラムシリーズでございます。
さて、第2回目となるお題ですが、今回はハリウッドにおけるアクション女優について語りたいと思います。

皆さん、ハリウッドを代表する生粋のアクション女優といったら誰を思い浮かべるでしょうか?

アンジェリーナ・ジョリー?
ミラ・ジョヴォヴィッチ?

はたまた最近『アベンジャーズ』シリーズでも活躍するスカーレット・ヨハンソンでしょうか?

しかし彼女らは個人的には生粋ということではなく、「アクション『もできる』女優」というくくりです。

ではハリウッド初の『生粋の』アクション女優は誰でしょうか?

私の記憶が確かならば初めて大々的にアクション女優と売り込んだのは

『シンシア・ラスロック』  



が最初なのではと思います。


シンシア・ラスロックはもともとアメリカの空手チャンピオン出身で型や武器部門で5連覇を果たしたという正真正銘の格闘家出身。のちにアクション映画主演を目指し、香港へわたり、あのミシェル・ヨーをもしのぐ技術力の高さを買われてサモハンやユン・ピョウらに見いだされ香港レディースアクションの中心人物の一人として大ブレイクを果たしました。

彼女が香港映画界からハリウッドに凱旋したのは1980年代後半。香港資本の配給会社による『レイジング・サンダー』や『チャイナオブライアン』シリーズで逆輸入する形で様々な格闘家出身スターのアクション作品に主演し強いヒロイン像を作り上げたのでした。
ただ一部のアクション映画ファンへの評価こそ高かったものの、当時のアクション映画におけるヒロインは強さよりも可憐さなおかつ度の過ぎないセクシーさが要求されていて、香港時代ほどのブレイクには至らなかったのでした。

折しも、彼女の活躍時期は女性においてもガンアクションが主流で、『ニキータ』や『ブルースチール』といったセクシー&ガンアクションの組み合わせが人気を博し、素手で派手に蹴り倒すようなシンシアのスタイルはなかなか難しい状況でした。

2000年代に入るとワイヤーアクションの技術の発達やキックボクシングなどの格闘技が女優たちのフィットネス感覚で取り入れられるようになった結果、もともとアクションをしていなかった女優もより簡単に挑める環境ができ、人気女優たちのアクション映画への進出が顕著化し始めるのです。
『チャーリーズ・エンジェル』シリーズや『マトリックス』シリーズなどはその最たる作品のひとつですね。

一方でそんな人気女優たちがアクションを演じるにあたって、爆破や激しい格闘といったシーンは本人に演じさせるわけにはいかず、このため当時ではまだ注目されてなかったスタントウーマンの存在が重要化されてきます。
当時この人気女優たちのスタントダブルを演じていたのは、元々のスタントマンたちのほかに格闘シーンにおいてはかつて香港レディースアクション作品で活躍していたソフィア・クロフォード西脇美智子といった面々も演じていました。
『チャーリーズ・エンジェル』で主演のルーシー・リューのダブルを演じていたのは何を隠そうボディビル界の百恵ちゃんと呼ばれていた西脇美智子だったのです。彼女はこのスタントでスタントオブザイヤーの称号を勝ち取りました。

2010年代に入ってアクション女優ほ系譜に大きな流れがおきます。

これまでハリウッドでのアクション女優は主に


1、何らかの格闘技チャンピオン出身もしくは選手

2、健康意識の延長上で格闘技をかじった人気の女優

のいずれかでしたがここに新たに

3、スタントマン出身者

の系譜が加わってくるのです。


スタントマン出身からのアクション俳優転向は男優ではさほど珍しくはなくなっていました。現在次世代を担うとされている期待のアクション俳優たちはスタントマン経験者がほとんどです。

そんな中、スタントウーマン出身アクション女優のパイオニア的役割を果たしたのが

『ゾーイ・ベル』



です。

彼女は『キル・ビル』シリーズでのユマ・サーマンのスタントダブルを演じて監督のクエンティン・タランティーノに見出され、彼の製作作品である『グラインドハウスシリーズ』で出演を果たします。
格闘技においてはテコンドーをベースにしていてダイビングスキルも併せ持つなどかなりのハイスペックな身体能力の持ち主で数々のスタントもこなすほかベストスタントやベストファイト賞を獲得するなどアクション女優の新たな機軸をつくりあげてきました。
そして彼女以降にスタントマンでも主演やヒロインとして耐えうるビジュアルのレベルが上がったのも大きな要因でしょう。
高度なアクションもでき、画に力があるならば彼女らを使うに越したことはありません。

ゾーイ・ベル以降の注目のスタントマン出身アクション女優ならばまずアメコミ映画『デッドプール』のスタントをしていた

『エイミー・ジョンストン』



彼女は格闘技スキルも高くかなりの注目株です。

そしてもうひとり

『ダニエル・チャクラン』



モデル級の容姿と美しいブロンドが魅力の彼女ですが、『ノックアウト』では激しい格闘シーンで注目されたほか、ドルフ・ラングレンが主演した『RIOT』では主役を食うインパクトを見せているなど今後が大いに期待されているアクション女優のひとりです。


またもともとのアクション女優の祖である『格闘技出身の女優』の系譜にも新たな主役となる逸材が登場しています。

その大きな流れを生んだのが


『ジーナ・カラーノ』



の出現です。

もともと彼女は『美しすぎる総合格闘家』として注目されてましたが、その実力も折り紙付きで各団体を渡り歩いた彼女の戦績は総合格闘技で8戦7勝、キックボクシングでは14戦12勝という見事な成績を残しています。
彼女のバックボーンは『ムエタイ』なので打撃系のアクションは非常に映えます。
昨今の筋肉女子ブームにものり、本格主演デビュー作となった『エージェント・マロリー』以降も華やかな美貌と確かな格闘スキルのポテンシャルを活かし、大作アクションへのオファーが絶えません。

そんな彼女を追うかのように総合格闘家出身の美人ファイター、

『ロンダー・ラウジー』



も『ワイルドスピード』シリーズや『エクスペンダブルス』シリーズで主演デビューし、女子総合格闘技は一躍新たなアクション女優の発掘ジャンルとして注目されています。


ハリウッドで活躍するアクション女優は他にもアクション大国である香港からミシェル・ヨーが進出するなどハリウッドからアジアへの時代とは真逆のケースもあり、アクション女優の出身も多様化してきています。
アジア、特に香港のアクション女優の変遷はまた独特なものがありますがそれはまた次回以降のコラムにて語りたいと思います。

皆さんもこうしたバックボーンを知りつつ出演作品を見るとまた違った楽しみ方ができると思いますよ。
それではまた次回をおたのしみに。
 

関連記事

記念すべき第1回のテーマはこちら

いわしの映画独論第1回『アクション映画のトレンド格闘技って?』



気になった作品はこちらでチェック