2023年度(4-3月)の「パン屋さん」倒産は、37件(前年度比85.0%増、前年度20件)だった。コロナ禍で、焼き立てパンを自分でトレーに乗せるセルフ方式は一部敬遠された。だが、個包装や入店人数制限などの工夫で中食需要を取り込み、各種コロナ関連支援にも支えられたパン屋さんの倒産は抑制された。  しかし、コロナ特需や支援策の縮小・終了、2022年2月以降のウクライナ情勢や長引く円安により、パン製造に欠かせない小麦の価格が上昇。さらに、原油価格の高騰などで光熱費の負担も重く、コストアップがパン屋さんの利益を圧迫する環境が続いている。  倒産推移でも、人手不足や消費増税の影響も受けた2019年度は29件に増加したが、コロナ禍の2020年度(17件)、2021年度(13件)は2年連続で減少し、いずれも10件台にとどまった。しかし、物価高の影響が深刻化した2022年度以降は、パン屋さんの倒産は再び増加に転じ、2023年度は過去最多を記録した。「物価高(材料高)」倒産も2021年度ゼロ→2022年度5件→2023年度10件と増加が続く。  BtoCで人々の習慣に溶け込み、なくてはならないほど日常生活に密接なパン屋さんだが、コスト上昇分の価格転嫁は容易ではない。集客と採算の間で板挟みになるパン屋さんの倒産は、今後も高止まりすることが懸念される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンの原材料の小麦やバター、卵などの価格の上昇や光熱費の高騰が、経営を圧迫して倒産が相次いでいます。