くますけと一緒に | 記録

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「くますけと一緒に」というホラー小説がある。

私が小学生の時になぜか実家にあり、たまたま読んでみたら主人公の闇が深すぎて、かつ自分と似すぎていて、手放せなくなった1冊だ。
何度も読みすぎて冒頭から数ページは暗記してしまったほどだ。


物語は「昨日はお葬式だった。パパとママの。」という衝撃的な一言で始まる。
ざっくりしたストーリーは、親に愛されなかった10歳の主人公・成美ちゃんが母の知人(唯一心を許している)に引き取られ、
幸せな反面、自分が親を殺したのでは?このままだと大好きな引き取り手を呪い殺してしまうのでは?と罪悪感に苛まれるというもの。
そしてその葛藤に一番近くで寄り添うのが、主人公の相棒である熊のぬいぐるみ“くますけ”だ。

作中で成美ちゃんはしばしばくますけに相談事をもちかける。
そしてくますけは、ぬいぐるみであるにも関わらず、人間顔負けの回答と慰めをする。

あまりにも設定がぶっとんでいるので、受け付けない人が一定数いるのは分かる。
しかし私に限って言えば、この設定に1mmも疑問を持たなかった。なぜか。
成美ちゃんと全く同じことを、私も幼少期からやり続けていたからだ。相手は赤ちゃんが使う安心毛布・命名ぼりぼり。作中の成美ちゃんとくますけの会話シーンといったら、自分の布団の中での光景をのぞき見されたのかと思うほどだった。
さらに、成美ちゃんが親から否定される場面や、両親の夫婦喧嘩や、学校でのいじめシーンなど、まさにうちの実家としかいいようのない描写が数多く出てくる。

当時成美ちゃんと同年代だった自分が、心の安定のために貪るように読んでいた作品を、
20年経って改めて読んで、またがっつり没入した。
大人になって改めてわかったが、成美ちゃんの親はまあまあ情緒不安定で責任逃れをするタイプでダメなやつで、
しかしこういう大人って珍しくない。
こういう人は子供を持たない方が、本人のためにも子供のためにもいいような気がする。
何事にも向き不向きってあるよね。
細かいことと他人の目が気になる人、そして自分で自分の機嫌を取れない人は、子供を育てるのには明らかに不向きだ。



物語の最後で、結局、成美ちゃんの両親を事故死させ、さらにいじめっ子を全治3か月の事故に遭わせたのは他ならぬくますけだったことがわかる。
ここがこの物語のホラーっぽさなのだけど、実は当時も今も、そのことに全く疑問を持たなかった。
そりゃそうでしょ、子供の幸せを一番に考えてくれるのは実の親じゃなくてくますけだったんだもの。
実の親は自分の満足しか考えていないんだもの。
シンプルに天罰でしょ。

真に成美ちゃんを想ったら、成美ちゃんに仇なすものを絶対に許さないでしょ。
どんな手段を使ってでも成美ちゃんから遠ざけるでしょ。
本当はその役目は実の親のものだったんだけど、親がその役割をできないどころかバリバリ仇なしていて、かつその魔の手から自力では逃れられない以上、殺すしかないでしょ。

過激かな?でも、それくらいの愛し方を、私は親にしてほしかったよ。


というわけで、自分の倫理観に疑問を持ちつつも、素直な気持ちは“くますけ大好き”でした。
私も子供を持ったら変わるのか…?
いや、多分おんなじ感想だと思う。