「君が世界的大スターである父を超える手段は、能力や努力だけじゃない。どれだけ強烈な不幸に巡り合える、幸運に恵まれるかなんだ」

 以下は、偶々「徹子の部屋」10月17日放送を目にしての一文。今回のゲストは、俳優・渡辺謙氏の長男・渡辺大(わたなべ・だい。34歳)氏。
 番組中で、渡辺謙氏の息子・渡辺大氏が、2008年に「徹子の部屋」に出演した際に、今は亡き津川雅彦氏が与えた手紙を読むシーンが披露された。
 渡部大氏は、当時から、津川氏が開催する月一の勉強会に出席していたという。ちなみに、津川雅彦氏の夫人・朝丘雪路(あさおか・ゆきじ)さんは、昭和の陽明学者・細野燕台(ほその・えんだい。1872~1961)の最後の弟子と言われた日本画家・伊東深水(1898~1972)である。
 
『渡辺大 様
 大ちゃんは、お父さんよりいい男かも知れない。足も長いし・・・、が、それは長所じゃないよ。むしろ欠点だ。プロデューサーも監督も脚本家も、男は嫉妬深い。
渡辺謙は、かわいそうに病で死線をさまようほどの不幸に見舞われた。が、逆にそれをテコにして、努力と能力が素直に認められるキャラクターを育てることに成功した。君が世界的大スターである父を超える手段は、能力や努力だけじゃない。どれだけ強烈な不幸に巡り合える、幸運に恵まれるかなんだ。分かるかい。津川雅彦』


 津川氏とは親しかったという黒柳徹子氏は、津川氏からの手紙のビデオを見た後で、渡辺大氏に向かって、こう付け加えた。

「津川さん自身が、ハンサムだったので、おばさまの沢村貞子さんから
〈あなたは人の4倍努力しなきゃ、人には認めてもらえない、うまいって言われないよ〉
って、
〈顔だけでいいって思ってたら大間違いだよ〉
 って言われたので、努力したっておっしゃってた」


 これを聞いた渡辺大氏は、さらに号泣。

「幸福と不幸は元々一つのものであって、分けられない」

 津川氏は、女優・沢村貞子さんから、「あなたはいい男だから、人の4倍は努力しないといけないよ」と諭されていたというが、この事も「幸福=不幸」であることを思わせるが、さらに津川氏の発した言葉
「君が世界的大スターである父を超える手段は、能力や努力だけじゃない。どれだけ強烈な不幸に巡り合える、幸運に恵まれるかなんだ」
 は、まさしく「知と行は元々一つのものであって、分けられない(知行合一)」と同様、「不幸=幸福」を、「幸福と不幸は元々一つのものであって、分けられない」を説いているのである。
 ちなみに、津川雅彦氏の夫人・朝丘雪路(あさおか・ゆきじ)さんは、昭和の陽明学者・細野燕台(ほその・えんだい。1872~1961)の最後の弟子と言われた日本画家・伊東深水(1898~1972)である。
 上記、津川氏の非常に陽明学的な言葉は、夫人を介して伊東深水から得た人生哲学であったと思われる。

 実際、文豪・森鷗外(もり・おうがい。1862~1922)も、中央から北九州の小倉(こくら)に転勤を命じられるという、世に言う
「小倉左遷」
 と言われた逆境下で、陽明学に出あって目覚め、一人の人間としても文学者としても大きく成長しているのだ。
 
 話を戻す。
 つまり、知と行同様、幸福と不幸、苦と楽、損と得、めんどくさいこととめんどくさくないこと、お金になることとお金にならないこと、小事と大事、という具合に、対立する二つの要素に分けて考えるその物の見方・考え方には問題が大ありなのである。
 もちろん優先順位はあるが、分けて考えないで、目の前にあるやるべきことを、ただひたすら誠実にこなすだけでいいのだ。分けて考えるから、手抜きをしたり、即お金にならないからと、やることを渋ったり、嫌々やって雑に処理してしまい、後で大目玉を食らうことになるのだ。

渡辺大

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