◆『ファウスト』の醍醐味は、ゲーテ最晩年の思想を有する第2部にある

 あけましておめでとうございます。

 4日(日)である。
 2月に、久々に開催される予定の「越川心学講」で、ルドルフ・シュタイナーの思想を分かり易く話して欲しいとの越川先生からのご要望もあって、シュタイナー理解を進めるべく、久々に手にした本がある。
 ゲーテの代表作
『ファウスト』
 である。
 私が愛読してきた本とは違うもので、実は、娘の為に昨年入手した本で、池内紀・訳で集英社文庫の『ファウスト』である。
 口語訳なので、格調高いかつての翻訳本とは違って、格段に読み易くなっている。
 それにしても、『ファウスト』をじっくり読むのは、何年ぶり、いや何十年ぶりのことといっていい。
 私が、『ファウスト』を始めて一読したのは、小学校の高学年の時であった。第1部が印象的だったのは、言うまでもない。
 以来、私はゲーテの愛読者となった。

 池内紀・訳『ファウスト』のファウストの言葉に、こうあった。

「私のなかには二つの魂がある。一つがもう一つと手をたずさえて、ついぞ離れようとはしないのだ。一つは欲望をむき出しにして、この世にしがみついている。もう一つは、高く地上から飛翔して、天界のものたちに憧れる」(「町の門前」)

 
 私達の心には、ことあるごとに葛藤が生じている。
 そのことに、実はなんの疑問も持たないで生きている、いや、つい最近まで生きてきたのが、今の私には不思議なのである。
 私だけではなく、誰もがそうなのだから、だから、当たり前のこととして、疑問を持つことが無かったのであろう。
 それにしても、例えば、甘くて美味しいお菓子が目に前にあるとして、食べたい自分がいる一方で、
「食べたら虫歯になるぞ」
「全部食べると太るから、少しにしておきな」
 などという思いが生じてきて、もう一方の
「全部食べてしまえば」
 と言う自分との葛藤が始まることになる。
 ということは、自分が二人いることになる。
 胸中に自分が二人?果たしてそうであろうか。
 話を続ける。
 俗っぽく言えば、
「地上的、動物的な私」
 と、もう一方の
「冷静かつ理性的な私」
 という事になる。
 ゲーテは、それを
『「欲望をむき出しにして、この世にしがみついている」私』
 と
『「高く地上から飛翔して、天界のものたちに憧れる」私』
 と言うのである。
 キリスト教的な表現で、
『「肉体」的な私』
 と
『「精神」的な私』
 と言い換えてもいいのかもしれない。
 そして、いつしか、感情的な肉欲は悪、理性的な精神は善だという評価が一般的となったが、果たしてそうであろうか。

 キリスト教では、人間の本質ともいえる精神が、肉体という器に受肉しているのが、今の人間の姿だというのである。
 人間は、犬や猫同様、生まれて死んでいく動物だとも言えるし、人のために自分の命を犠牲にすることもあるので、動物以上の神々しい存在だともいえる。
 上記『ファウスト』第一部では、「私の中に、二つの魂がある」とゲーテは語っているが、いきなり結論めいたことを言わせて頂くと、R・シュタイナーは、以下私の意訳だが、
「天上的な力と地上的な力(作用)という両極の間にバランスをとって生きることを余儀なくされているのが、地球人類だ」
 と述べているのである。
 この話の続きは、また次回。

 今後、『ファウスト』を読了したとして、果たして私のシュタイナー理解に新たに資するものがあるのだろうか、少々楽しみなところである。
 と言うのも、ゲーテは死の直前まで『ファウスト』第2部の完成に尽力し、完成の翌1832年3月22日にその多産な生涯を終えたからである。
 つまり、『ファウスト』の醍醐味は、ゲーテ最晩年の思想を有する第2部にあるからだ。

◆左脇腹の肋骨の下辺りに、これまでにない酷い激痛に襲われた。

 昨日3(土)日は、私と妻と子供たちの4人で、午後1時過ぎに越川禮子先生宅にご挨拶に伺わせて頂いた。
 広島にお住いの御長男・康雄さんの奥様・道江さんの手作りのお節料理をご馳走になり、その上子供たちは、先生や先生のお孫さんからもお年玉を頂戴させて頂いて、大喜びだった。
 先生と妻は、久々の談笑。
 午後3時頃に顔を見せに来てくれた先生のお孫さんの今堀健二さんとも小1時間ほど四方山話に花を咲かせて、先生がお疲れにならないうちにと、4時過ぎにはお暇させて頂いた。
 
 今日3日は、寒さも影響しているのだろう、左脇腹の肋骨の下辺りに、これまでにない酷い激痛に襲われた。心臓から来る心筋梗塞の痛みである。
 これでつくづく思い知ったことは、これほどの激痛では、自力で動いて薬を取りなど行けないという事であった。心臓に病をお持ちの方々がピル・ケースを首にかけるのは、そのためなのである。
 と言うわけで、急いでピル・ケースを注文した。
 
 ともあれ、原稿締め切りは後数日と迫っている。
中江藤樹の評伝の脱稿へ向けて邁進中。
 このストレスも、心臓への負担になっているのだろうか(;^ω^)。


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