◆5日の「陽明学研究会・姚江の会 東京」では、『真説「陽明学」入門』の「第3部 日本陽明学派の系譜」の理解を深めます。

 9月早々に、ふたつの陽明学講義が開催となります。
 5日(金)には
「第3回、陽明学研究会・姚江の会 東京」
 が高円寺で、翌6日には江戸しぐさの越川禮子先生ご主宰の「越川心学講」で、連続講義の最終回
「中江藤樹の人と思想③」
 と題し、武蔵新城(神奈川県川崎市)で開催されます。

 「姚江の会 東京」では、参加者の皆さんと共にテキスト『真説「陽明学」入門』の「第3部 日本陽明学派の系譜」の理解を深めます。
 学校でも家庭でも、幕末・維新期に一大陽明学ブームがあったことなどまるで教わりませんが、日本の近代史を正しく理解するには、陽明学を抜きに理解することは不可能なのです。
 明治維新に大きく貢献したと言われる雄藩「薩長土肥」、つまり薩摩・長州・土佐・肥前は、幕末期には陽明学全盛時代を迎えていました。
 ちなみに、土佐藩を脱藩した坂本龍馬が陽明学の影響を受けていたことは、つい最近証明されたばかりです。

 本を読めばわかるというのは、実は往々にして勝手な思い込みで、自分本位に読んでいるに過ぎません。そのことは、例えば、『聖書』や『論語』などを読む場合、読み手の受け入れ態勢(態度)に応じて、感動する箇所が違ってくることからも分かります。
 同志とのグループ学習は、一人で読んでも分からなかった点や気づかないまま読み飛ばしたところなどに目が向くようになり、その理解が確実に深まります。

◆6日(土)の「中江藤樹の人と思想③」では、藤樹の「心学」宣言に触れます。


 「中江藤樹の人と思想③」では、連続講義の最終回ということで、中江藤樹が陽明学との出会いによって大悟する話がメインとなります。
 そういう意味では、1回2回を聞き逃した人でも、大変興味深い事実に驚かれることでしょう。
 知れば知るほど、中江藤樹の独学ぶりには、本当に驚かされます。
 「心学」といえば、石田梅岩が有名ですが、「心学」を自称し始めたのは、中江藤樹が最初だったことはほとんど知られていません。藤樹は、三十五歳の時に、自らの学問を指して「心学」宣言しています。
 中江藤樹とその一派は、王陽明というより、陽明の一の高弟・王龍溪(おう・りゅうけい)の思想の影響を大きく受けていました。
 王龍溪は、禅学寄りで三教一致の陽明学左派のリーダーの一人に数えられていますが、王陽明亡き後の中国の一大陽明学ブームの立役者こそは、この王龍溪だったことを考えると、中江藤樹が注目したのも、大いにうなずけます。
 藤樹の「心学」宣言、実は、王龍溪の思想に出会って後のことなのです。
 そしてこの私も、気づいたら、王龍溪に魅かれるようになって、現在に至っているのです。ですから、私には、中江藤樹の気持ちがよくわかるのです。

◆「死は、好むべきものでもなければ、嫌うべきものでもない」


 来年のNHK大河ドラマの主人公は、吉田松陰の妹・文(ふみ。後の楫取美和子)ですが、松陰がその晩年に大きな影響を受けたのは、誰あろう陽明学左派の李贄(りし)こと李卓吾(り・たくご)でした。
 松陰の死生観を表す有名な言葉があります。

「死して不朽(ふきゅう)の見込みあらばいつでも死ぬべし。生きて大業の見込みあらばいつでも生くべし」

 今風に言い換えれば、
「今この場で死ぬことに意義を感じるのなら、今死ねばいいし、生きてやりたいことがあるのならば、生き延びるべきだ」
 となるでしょうが、この松陰の言葉は、陽明学左派の思想を松陰が自己薬籠中の物としたことを物語ってあまりあるものです。
 また、松陰は、

「死は好むべきにも非(あら)ず、亦(また)悪(にく)むべきにも非ず」

 などとも説いています。
「死は、好むべきものでもなければ、嫌うべきものでもない」
 というのです。
 現代人は、生、つまり生きることは善で、死、つまり死ぬことは悪、悪とは言わないまでも、悪は忌(い)み嫌うべきものだ、という価値観があります。
 陽明学では、

「生と死はもともと一つ(生死一如)」 

 という考え方をしますので、やはり松陰の言葉は、陽明学左派らしい言葉だな、といえるのです。

 武士の死生観でも、例えば、『葉隠』の場合だと、

「武士道といふは死ぬ事と見付けたり。 二つ二つの場にて早く死ぬほうに片付くばかりなり」

 となっています。
 要は、
「武士道とは、死ぬことである。生きるか死ぬかの二者択一を迫られるような場面に遭遇したら、さっさと死ぬ方を選ぶべきだ」
 というのです。
 ただし、これは、
「生きるか死ぬかの場合には、生き延びることなど考えず、潔く死ぬことを選ぶのが武士だ」
 などと字面通りに受け止めるのではなく、
「常に死んだ気になってやれ」
 という心構えを説いているのものだと、私は理解していますが。


【第3回「陽明学研究会・姚江の会」】テキスト:『真説「陽明学」入門』第3部
日時:9月5日(金)
18時半~21時(18時開場)

※希望者は、懇親会有り(21時半~23時)
会場:高円寺北区民集会所・第四集会室
杉並区高円寺北3丁目25-9
電話:03-3330-7255
参加費:3千円
※懇親会は実費3500円前後
主催:「陽明学研究会・姚江の会 東京」
お問い合わせ先:フェイスブックの「イベント・ページ」及び主催者(事務局)吉武大輔

【「越川心学講」、連続講義「中江藤樹の人と思想③」】
日時:9月6日(土)14時~17時(開場13時半)
会場:越川禮子先生お住まいのマンションの集会所(川崎市中原区上新城2-14-23)
南武線「武蔵新城」駅から徒歩3~5分
参加費:3千円
主催:越川禮子「越川心学講」
お問い合わせ先:株式会社インテリジェンス・サービス・大岩由利03(3991)6658



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