◆坂本龍馬と高杉晋作の掛け軸になった書、新発見!

 6月18日(水)の午前0時過ぎのこと。
 「姚江の会・群馬」から帰宅して、録画しておいた番組
『開運!なんでも鑑定団』
「史上最強のお宝大集合!2時間スペシャル」(6月17日放映)
 を見ていた時のことである。
「え~っ、嘘っ、ほんと~ぅ!」
 という言葉が、久々に私の口を突いて出たのである。
 番組では、坂本龍馬の書が披露されたのだが、驚くべきことには、そこには陽明学の創始者・王陽明の有名な漢詩
「海に泛(うか)ぶ」
 が書いてあったのだ。
 筆まめで有名な龍馬の手紙はこれまで私もたくさん目にしてきたが、掛け軸になっている書と言うのは、私も初めて目にしたのだった。

 この書の由来についてである。
 鳥取県の有福久(ありふく・ひさし)さんとおっしゃる方が依頼人だが、10年程前、依頼人に骨董の手ほどきをしてくれた師匠から、わずか25万円で手に入れたものだという。
 さらにその時に
「おまけ」
 といってなんと同じく人気のある
「高杉晋作の書」
 まで手渡されたそうで、骨董仲間の二人の内の一人は
「そんなものあるはずがない」
 と鼻で笑ったとのこと。
 というわけで、もう一点、掛け軸になった高杉晋作の書も披露された。
 龍馬と晋作の書がこうして一堂にそろうこと自体、奇跡的なことである。
 
以下、番組の様子を文字起こしさせて頂いた。
 
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◆「これはおそらく坂本龍馬がこの詩をたいへん気に入ってて暗記してたんじゃないか。暗記してて記憶のままに書いたところがこう字が違ってしまったんじゃないかと思うんですね。」

ナレーション『こちらは中国明時代の儒学者王陽明の詩を龍馬がしたためたもので…。
「逆境も順境ももう自分の胸中にはない。
 浮雲が大空に浮かんでいるのと何の変わりがあろうか。
 静かな夜の海 波を隔てて三万里も遠く 
 月光のもと仙人のように錫杖を飛ばし風に乗って舞い降りるのだ。」
 とある。
 一方こちらは
[わしとおまいハ 焼野のかづら
 末はきれても 根ハひとつ]
 とある。
 為書(ためが)きによると、これはかつて高杉が、奇兵隊の同志・山縣有朋(やまがた・ありとも)に贈った都々逸(どどいつ)で、同じく同志の南野一郎(のうの・いちろう)に乞われ、再び書き記したもののようだ。
果たして鑑定や如何に?』

今田耕司「では、ご本人の評価額おいくらですか?2つで500万?では、いきましょうか。
それではまいります。オープンザプライス!こい!
え~!!4,500万!」
吉田真由子「すごい」
依頼人「ほんと?ほんと」
今田「え!?一十百千万…、10万100万…、4,500万!」
依頼人「どんちゃん騒ぎ」
今田「どんちゃん騒ぎで済みませんよこれ!」
増田孝(書蹟史家。鑑定歴42年)『たいへん珍しいものが2つ揃って出てきたというのはこれ番組始まって以来じゃないかと思うんですけどね。
 まず、坂本龍馬の書は、七言絶句(しちごんぜっく)の詩でして王陽明が流されていくときの心境を述べたものなんですね。
 実は王陽明の詩と、ちょっと一部違うところがありまして、例えば1行目の3字目「もと」っていう字が「本(ほん)」って書いてありますけど、これは原文ですと「原」という字、「もと」という字ですね。
 それから「だいくう」、「大空」と書いてありますけどもこれは原文ですと太い空と、「太空」となっているんですね。
 ですからこれはおそらく坂本龍馬がこの詩をたいへん気に入ってて暗記してたんじゃないか。暗記してて記憶のままに書いたところがこう字が違ってしまったんじゃないかと思うんですね。
 で、字を見ますと、例えば滞(とどこお)らずというあたりですね、非常に流暢(りゅうちょう)な流れるような線で書かれています。これは決してまねしたり偽物だったりするとこういう書は書けません。
 龍馬の馬という字の筆順がちょっと違うんですけ、どこういうふうに書いてる本人の署名もございます。
 手紙はですね、今百数十点見つかっているんですけども、この作品はほとんどないんです。

 高杉晋作の書でございますけども、これは都々逸(どどいつ)が書かれておりまして、やはり非常に自然な運筆であるということ。
 東行(とうぎょう)というのは、西行(さいぎょう)という歌人がいましたけども、自分がこれからは武士を捨てて風雅に生きるんだということで、西行という名前をつけた。
 逆に風流文雅の世界は捨てて、生きるんだ、という決意を込めて東行といったというんですけども、実際作品がたいへん少ないものですから、これは珍品中の珍品だろうということですね』

 番組の様子は、以上である。
 それにしても、鑑定家の増田氏が、いみじくも
「おそらく龍馬がこの詩を気に入って暗記していたのではないか。それを記憶のままに書いた ために一部間違えてしまったのではないだろうか」
 と述べておられるが、龍馬が陽明学全盛時代の土佐藩に育ったことを思えば、当然と言っていいのではないだろうか。
 さらに言えば、高杉晋作といえば、龍馬の身の危険を心配して、護身用のピストルをプレゼントしたほどの親友なのだが、吉田松陰の高弟の中でも、特に陽明学を信奉したことで知られているし、龍馬の親しい友人には、その他、薩摩藩の西郷隆盛も陽明学の信奉者だったこともあり、龍馬が陽明学を知らないはずはないのである。
 私は、そう確信して、拙著
『志士の流儀』
 に、本邦初公開ということで、坂本龍馬が生きた時代の土佐藩が、いかに陽明学の全盛時代であったのかについて、詳説させて頂いたのである。
 何故、本邦初公開なのかと言えば、幕末ものを得意とする司馬遼太郎に代表される作家や学者の先生方が、これまで幕末の土佐藩が陽明学ブームだったことにまるで触れてこなかったからである。

 さて、坂本龍馬と陽明学に興味がある方は、是非、拙著『志士の流儀』をご一読願うとして、以下が正しい漢詩である。なお、この漢詩については、拙著『真説「陽明学」入門、黄金の国の人間学、増補改訂版』「第一部 王陽明の生涯」の「第2章 受難と悟りの時代」に紹介させて頂いているので、ご参照頂きたい。
 なお、本書『真説「陽明学」入門』の英語版が、近々、グロービス経営大学院から刊行になる。英語訳はすでに本年4月過ぎに完了している。

「泛海」

險夷原不滞胸中
何異浮雲過太空
夜静海濤三萬里
月明飛錫下天風


「海に泛(うか)ぶ」

險夷(けんい) 原(もと) 胸中に滞(とどま)らず
何ぞ異ならん 浮雲の太空(たいくう)を過(す)ぐるに
夜は静かなり 海濤(かいとう)三万里
月明(げつめい)に錫(しゃく)を飛ばして天風を下る

逆境であれ順境であれ、それらに心を煩わせることなどない。
それらは、あたかも浮雲が空を通り過ぎるようなものなのだから。
静かな夜の大海原を、月明かりに乗じて錫杖を手にした道士が天風を御しながら飛来する、まるでそんな広大無碍な心境である。(『真説「陽明学」入門、黄金の国の人間学 増補改訂版』参照)

 以下、関連記事である。

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坂本龍馬と高杉晋作の書に鑑定額4500万円!『開運!なんでも鑑定団』20周年記念SP
[2014/06/17]


 6月17日(火)放送の『開運!なんでも鑑定団 史上最強のお宝大集合!2時間スペシャル』に登場した坂本龍馬と高杉晋作の書が、書蹟史家・増田孝鑑定士 によって鑑定額4500万円の本物と鑑定された。高杉晋作の本物の書が登場したのは、番組20年の歴史の中でも初となる。

 幼いころから坂本龍馬に憧れていたという、鳥取県在住の骨董収集家のお宝は、10年ほど前に骨董の師匠にお願いして、京都で買ってきてもらったもの。「坂本龍馬の書」の購入金額は25万円で、「高杉晋作の書」は、“おまけ”でもらったのだという。

 気になる鑑定結果は、どちらも本物!
 若くして亡くなった高杉晋作の書は非常に数が少なく、極めて珍しいということで2500万円もの高額鑑定に。
「わしと おまいは焼野の蔓末は切れても根はひとつ」
 との都都逸が書かれており、為書きには、長州藩の山県有朋及び南野一郎の名が記されている。落款には「東行」と あるが「東行」とは晋作の号で、武士を捨てて風流に生きた西行に対し、逆に風流を捨て武に生きるという高杉の決意を表したもの。
 また、坂本龍馬も手紙は数 多く残っているものの、依頼品のような書として残っているのは大変珍しく、こちらも2000万円の超高値がついた。
 王陽明の詩が書かれているが、ところど ころ原文と違う字があり、これは龍馬がこの詩を記憶で書いたために異なってしまったのではないかとのこと。貴重なお宝の発見に、司会・今田耕司もびっく り、依頼人もあまりの驚きに言葉もでない様子を見せていた。

 番組の岡田英吉プロデューサーは
「龍馬も高杉も幕末史にとって重要な働きをし、非常に人気の高い人物です。今回発見された書はいずれも流麗かつ力強い筆致で、激動の時代を生きた二人の魂が感じられるようでした。
 特に高杉晋作の書は極めて珍しいとのことで、このように学術的にも貴重なお宝が時々出現して我々を驚かせてくれるのもこの番組の魅力の一つです。
 またそれは、依頼人の皆様が番組に寄せて下さる信頼の証でもあり、本当にありがたいことと感謝にたえません。今後も皆様に楽しんでいただけるような番組作りをこころがけるとともに、貴重なお宝の数々が世に出るための一助に当番組がなれば幸いです」
 と今回の貴重なお宝についてコメントを寄せている。

■『開運!なんでも鑑定団』
毎週火曜20:54~21:54(テレビ東京系列)

【司会】石坂浩二、今田耕司
【進行アシスタント】吉田真由子

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