◆大統領の報酬月額25万ウルグアイペソ(約115万円)の9割近くを社会福祉基金に寄付するムヒカ氏の資産は、自宅農場と1987年製のフォルクスワーゲン・ビートル1台のみ。

 南米の小国ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領(77才)が、今、世界の注目を集めている。
 なぜなら、政治家とは、こうあるべきだ、という実に真摯で清貧な生き方を貫いているし、そんな生き方と哲学に裏打ちされた発言がまた人々の共感を呼んでいるのである。
 また、中国の・習近平国家主席は、今年の5月27日に、北京の人民大会堂でこのムヒカ大統領と会談したばかりである。
 かつて我が国には、「井戸塀議員」「井戸塀政治家」という言葉があった。明治の元勲・大久保利通などに代表されるが、国事に奔走して家産を失い、残るは井戸と塀ばかりという〈井戸塀政治家〉は、かつて我が国では尊敬されていたのである。
 もっとも、大久保利通の場合は、井戸と塀どころか、さらにひどくて、残ったのは借金だけであったというから、驚かされる。

 まさしくムヒカ大統領こそは、井戸塀議員、井戸塀政治家と呼ぶにふさわしい人物である。
 特に、話題になっているのは、ムヒカ大統領のリオ会議でのスピーチなのだが、まずは、ムヒカ大統領のことについて書かれた新聞記事から紹介させて頂くとしよう。西日本新聞に掲載された記事だと思われる。

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●報酬9割 福祉に寄付、資産は農場と車一台、❝清貧❞大統領人気
2013年1月7日

 南米の小国ウルグアイの中道左派、ホセ・ムヒカ大統領(77)の清貧ぶりが世界で評判を呼んでいる。豪華な大統領公邸には住まず、報酬の大半を寄付し郊外の農場で生活。元ゲリラ闘士の経歴を感じさせない好々爺(や)ぶりで国民の人気も高い。

 ムヒカ氏が暮らすのは首都モンテビデオ中心部から車で20分ほどの農場だ。ウシが草を食む
のどかな光景が続く農村地帯。建物や人影はまばらで、「公邸」の前にはパトカーが一台止まっているだけ。
 大統領の報酬月額25万ウルグアイペソ(約115万円)の9割近くを社会福祉基金に寄付するムヒカ氏の資産は、自宅農場と1987年製のフォルクスワーゲン・ビートル1台のみ。クレジットカードや銀行口座を持たず、公務の合間にトラクターに乗って畑仕事と養鶏をして暮らす。
 粗悪な麻薬が少年犯罪を招いているとしてマリファナ合法化法案を提出し、議論を呼んだ。同性婚合法化法案も成立間近で、先進的な政策を進める。
 ウルグアイでは国民の多くがカトリック教徒で、政権支持率は4割弱まで落ちたが、ムヒカ氏自身の好感度は5割前後を維持。「ぺぺ」の愛称で国民に親しまれている。
 外交筋によると、大統領公用車は日本メーカーの乗用車で、指定席は要人が普通使う後部座席ではなく助手席。「服装や外交儀典を気にしない気さくなおじいちゃん」(同筋)の印象だ。
「ドイツ人が1世帯で持つ車と同数の車をインド人が持てば、この惑星はどうなるだろう」
 ムヒカ氏が評判を呼ぶきっかけとなったのは昨年6月の国連持続可能な開発会議(リオ+20)でのスピーチだった。
 国連加盟国193ケ国の最後、各国の参加者が去った後に登場した。
 聴衆がほとんどいない中
「世界の70億~80億人が西洋と同じ消費生活をできるだろうか」
「貧乏な人とは無限の欲があり、いくらモノがあっても満足しない人のことだ」

 と主張。
 インターネットで英訳や日本語訳が出回り評判になり、英BBC放送は
「世界最貧で最高の大統領」
 と紹介する番組を制作した。

元ゲリラ闘士、今では好々爺

 実はムヒカ氏は60年代、極左ゲリラ組織を結成。銀行襲撃や政治家誘拐で14年間服役した「元闘士」だ。
 だが、人口約340万人の農牧国のリーダーとして外国企業誘致を進める姿にかつての過激派の面影は全くない。
ムヒカ氏は昨年12月、訪問先のペルーで共同通信と会見し
「刑務所で人生を学んだ。耐えることを覚えた」
 と満面の笑みで振り返った。
 ウルグアイ大統領には連続再選禁止規定もあり、
「もう年寄りだ。任期が終われば引退するよ」
 と穏やかに語った。(モンテビデオ共同=遠藤幹宣)

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 ムヒカ大統領の
「貧乏な人とは無限の欲があり、いくらモノがあっても満足しない人のことだ」
 という言葉を見るにつけ、私には、まるで王陽明の再来のように思えてならない。


 
 少し、補足させて頂く。
 参考までに、ウルグアイの面積は、北海道(8.3万Km)の約2倍、人口は静岡県(376.5万人2010年)とほぼ同じで、経済規模は佐賀県程度だという。そして、国民の平均月収が約9万円だとのこと。
 また、ムヒカ大統領が、大統領就任時の宣誓陳述書に挙げた個人資産は、1920ドル(約18万円)相当の1987年型フォルクスワーゲン・ビートルだけだった。
 大統領としての毎月の給料の大半を、左派の与党拡大戦線や公共住宅プログラムに寄付。
 大統領官邸への入居も拒否し、上院議員を務める夫人が所有する首都郊外の簡素な家に住んでいる。