■「熱量からの計算では、広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しております。ウラン換算では20個分のものが漏出していると換算されます」
1日(月)である。
何気なくスイッチを入れたテレビで、参議院の国会中継は行われていた。そこに展開されていたのは、7月28日の衆議院厚生労働委員会における東京大学先端科学技術研究センター教授、東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦(こだま・たつひこ)氏の発言
「明日に向けて(208)放射線の健康への影響について」
にまつわる話であった。
なお、児玉教授は、内部被曝の専門家であり、現在除染活動に従事している方である。
今回の原発事故による放射線物質による汚染に関し、与党閣僚に対していろいろと質問しているのは、自由民主党の古川利治氏である。
医師でもあるという古川氏は、たとえばざっと次のような内容のことを質問された。
「年間20ミリシーべルと以下であれば、安全とおっしゃいますが、これはサイエンスの話になりますが、では、19・9ミリシーベルトと20.1ミリシーベルトとでは、どうなんですか。科学では、19・9ミリシーベルトと20.1ミリシーベルトとは、ほとんど差はないと教えるんです。19・9ミリシーベルトの人は大丈夫だとおっしゃってるその根拠は何なのですか?」
これには、まともな答えは出せるはずもない(苦笑)。
さて、いま、国会で話題になっている東京大学教授の児玉龍彦氏のことである。
私も、つい昨日Uチューブで知ったのだが、国会で参考人として意見を述べながら、これほど激昂された民間の方を見たのは、初めてであった(苦笑)。
動画を見たい方は、是非、以下で見て頂きたい。児玉氏の話は、約16分である。
↓国会審議テレビ中継のビデオが観られます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.php?deli_id=41163&media_type=wb
参考までに、児玉氏の発言内容を、ちらりと抜粋要約させて頂く。( )、〔 〕内は、筆者による注と補足。
・東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質の総量について、
「東京電力と政府はいったい今回の福島原発事故の総量がどれぐらいであるか、はっきりした報告は、まったくされておりません(怒)」
・「私どもは、アイソトープセンターの知識をもとに計算してみますと、・・・(中略)・・・、熱量からの計算では、広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しております。ウラン換算では20個分のものが漏出していると換算されます」
・「さらい恐るべきことには、これまでの知見で、原爆による放射能の残存量と、原発から放出されたものの放射線の残存量は1年に至って、原爆が1000分の1程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は〔1年経っても〕10分の1程度〔の低下〕にしかならない」
・食品検査では、ゲルマニウム・カウンターではなく、「今日ではもっとイメージングベースの測定器が、はるかにたくさん半導体で開発されています。なぜ政府はそれを全面的に応用してやろうとして、全国に作るために、〔政府は〕お金を使わないのか。3カ月経ってそのようなことが全く行われていないことに、私は満身の怒りを表明します(怒)」
・「〔チェルノブイリ事故による〕高濃度の汚染地区、尿中に6ベクレル・パーリッターと微量ですが、その地域では「P53」の変異が非常に増えていて、・・・(中略)・・・それによる増殖性の膀胱炎というのが必発でありまして、かなりの率で上皮内の「癌」ができているということが、報告されております。
それでこの量に愕然といたしましたのは、福島の母親の母乳から2から13ベクレル、7名で検出されているということがすでに報告されていることであります」
・「補償問題と線引の問題と子どもの問題は、ただちに分けて下さい。子どもを守るために全力を尽くすことをぜひお願いします」
・「車で運搬するのも違反です。しかしお母さんや先生たちに高線量のものを渡してくるわけにはいきませんから、今の東大の除染では、すべてのものをドラム缶に詰めて東京にもって帰ってきています。受け入れも法律違反、すべて法律違反です。このような状態を放置しているのは国会の責任であります。
全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターというのは、ゲルマニウムをはじめ最新鋭の機種を持っているところはたくさんあります。そういうところが手足を縛られたままで、どうやって、国民の総力をあげて子どもを守れるでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります(怒)。・・・(中略)・・・7万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに、国会は一体何をやっているのですか(怒)」
Uチューブでご覧になれない方のために、以下に全文を掲載させていただく。
ただし以下は、ブログ
『ざまあみやがれい!』
「児玉龍彦参考人の、国の内部被曝対応への批判が凄すぎる上に、提言まですごい!(全内容書き起こし)」(2011年7月29日)
を転載させて頂き、一部補足修正を加えさせて頂いた。
分かりやすさを優先させて頂き、見出しも、筆者がつけさせて頂いた。
なお、ブログ
『みんな楽しくHappy♡がいい♪』
「〈放射線の健康への影響〉氏(内容完全書き出し)衆議院厚生労働委員会7/27」
も参照させて頂いた。
私も、これまでに何十回となく経験しているが、テープ起こしは、大変な作業なのである。
この場をおかりして、お礼を申し上げる。
なお資料や図は、割愛させていただいた。
///////////////////
1日(月)である。
何気なくスイッチを入れたテレビで、参議院の国会中継は行われていた。そこに展開されていたのは、7月28日の衆議院厚生労働委員会における東京大学先端科学技術研究センター教授、東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦(こだま・たつひこ)氏の発言
「明日に向けて(208)放射線の健康への影響について」
にまつわる話であった。
なお、児玉教授は、内部被曝の専門家であり、現在除染活動に従事している方である。
今回の原発事故による放射線物質による汚染に関し、与党閣僚に対していろいろと質問しているのは、自由民主党の古川利治氏である。
医師でもあるという古川氏は、たとえばざっと次のような内容のことを質問された。
「年間20ミリシーべルと以下であれば、安全とおっしゃいますが、これはサイエンスの話になりますが、では、19・9ミリシーベルトと20.1ミリシーベルトとでは、どうなんですか。科学では、19・9ミリシーベルトと20.1ミリシーベルトとは、ほとんど差はないと教えるんです。19・9ミリシーベルトの人は大丈夫だとおっしゃってるその根拠は何なのですか?」
これには、まともな答えは出せるはずもない(苦笑)。
さて、いま、国会で話題になっている東京大学教授の児玉龍彦氏のことである。
私も、つい昨日Uチューブで知ったのだが、国会で参考人として意見を述べながら、これほど激昂された民間の方を見たのは、初めてであった(苦笑)。
動画を見たい方は、是非、以下で見て頂きたい。児玉氏の話は、約16分である。
↓国会審議テレビ中継のビデオが観られます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.php?deli_id=41163&media_type=wb
参考までに、児玉氏の発言内容を、ちらりと抜粋要約させて頂く。( )、〔 〕内は、筆者による注と補足。
・東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質の総量について、
「東京電力と政府はいったい今回の福島原発事故の総量がどれぐらいであるか、はっきりした報告は、まったくされておりません(怒)」
・「私どもは、アイソトープセンターの知識をもとに計算してみますと、・・・(中略)・・・、熱量からの計算では、広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しております。ウラン換算では20個分のものが漏出していると換算されます」
・「さらい恐るべきことには、これまでの知見で、原爆による放射能の残存量と、原発から放出されたものの放射線の残存量は1年に至って、原爆が1000分の1程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は〔1年経っても〕10分の1程度〔の低下〕にしかならない」
・食品検査では、ゲルマニウム・カウンターではなく、「今日ではもっとイメージングベースの測定器が、はるかにたくさん半導体で開発されています。なぜ政府はそれを全面的に応用してやろうとして、全国に作るために、〔政府は〕お金を使わないのか。3カ月経ってそのようなことが全く行われていないことに、私は満身の怒りを表明します(怒)」
・「〔チェルノブイリ事故による〕高濃度の汚染地区、尿中に6ベクレル・パーリッターと微量ですが、その地域では「P53」の変異が非常に増えていて、・・・(中略)・・・それによる増殖性の膀胱炎というのが必発でありまして、かなりの率で上皮内の「癌」ができているということが、報告されております。
それでこの量に愕然といたしましたのは、福島の母親の母乳から2から13ベクレル、7名で検出されているということがすでに報告されていることであります」
・「補償問題と線引の問題と子どもの問題は、ただちに分けて下さい。子どもを守るために全力を尽くすことをぜひお願いします」
・「車で運搬するのも違反です。しかしお母さんや先生たちに高線量のものを渡してくるわけにはいきませんから、今の東大の除染では、すべてのものをドラム缶に詰めて東京にもって帰ってきています。受け入れも法律違反、すべて法律違反です。このような状態を放置しているのは国会の責任であります。
全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターというのは、ゲルマニウムをはじめ最新鋭の機種を持っているところはたくさんあります。そういうところが手足を縛られたままで、どうやって、国民の総力をあげて子どもを守れるでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります(怒)。・・・(中略)・・・7万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに、国会は一体何をやっているのですか(怒)」
Uチューブでご覧になれない方のために、以下に全文を掲載させていただく。
ただし以下は、ブログ
『ざまあみやがれい!』
「児玉龍彦参考人の、国の内部被曝対応への批判が凄すぎる上に、提言まですごい!(全内容書き起こし)」(2011年7月29日)
を転載させて頂き、一部補足修正を加えさせて頂いた。
分かりやすさを優先させて頂き、見出しも、筆者がつけさせて頂いた。
なお、ブログ
『みんな楽しくHappy♡がいい♪』
「〈放射線の健康への影響〉氏(内容完全書き出し)衆議院厚生労働委員会7/27」
も参照させて頂いた。
私も、これまでに何十回となく経験しているが、テープ起こしは、大変な作業なのである。
この場をおかりして、お礼を申し上げる。
なお資料や図は、割愛させていただいた。
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●「放射線の健康への影響」
児玉龍彦
◆『3月21日に、枝野官房長官は「さしあたり健康に問題はない」ということをおっしゃいましたが、わたくしはその時に実際に「これは大変なことになる」と思いました』
わたくしは東京大学アイソトープ総合センター長の児玉ですが、3月15日に大変に驚愕いたしました。
私ども東京大学には27箇所のアイソトープセンターがあり放射線の防護とその除染などの責任を負っております。
それでわたくし自身は内科の医者でして、東大病院の放射線施設の除染などにずっと数十年関わっております。
3月15日に、まずここの図にちょっと書いてあるんですが、我々最初にまず午前9時頃、東海村で5マイクロ・シーベルトという線量を経験しまして、それを第10条通報という文科省に直ちに通報いたしました。
その後、東京で0.5マイクロ・シーベルトを超えるその線量が検出されました。これは一過性に下がりまして・・・。
次に3月21日に雨が降り、0.2マイクロ・シーベルト等の線量が降下し、これが今日にいたるまで高い線量の原因になっていると思っています。
それでこの時に、枝野官房長官は
「さしあたり健康に問題はない」
ということをおっしゃいましたが、わたくしはその時に実際に
「これは大変なことになる」
と思いました。
なぜかというと、現行の放射線の障害防止法というのは、高い線量の放射性物質が少しあるものを処理することを前提にしています。このときは、〔原子炉から放出された放射性物質の〕総量はあまり問題ではなくて、個々の濃度が問題になります。
ところが今回の福島原発の事故というのは、100キロ圏で5マイクロ・シーベルト、200キロメートル圏で0.5マイクロ・シーベルト、さらにそれを越えて、足柄から静岡のお茶にまで汚染が及んでいることは、今日、すべてのみなさんがご存じの通りであります。
われわれが放射線障害をみるときには、総量を見ます。
それでは、東京電力と政府はいったい今回の福島原発事故の総量がどれぐらいであるか、はっきりした報告は、まったくされておりません(怒)。
そこで私どもは、アイソトープセンターの知識をもとに計算してみますと、まず熱量からの計算では、広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しております。
ウラン換算では20個分のものが漏出していると換算されます。
さらに恐るべきことには、これまでの知見で、原爆による放射能の残存量と、原発から放出されたものの放射線の残存量は1年に至って、原爆が10分の1になるのに対して、あ、すいません、原爆が1000分の1程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は10分の1程度にしかならない。
つまり、今回の福島原発の問題は、チェルノブイリ事故と同様、原爆数十個分に相当する量と、原爆汚染よりもずっと大量の残存物を放出したということが、まず考える前提になります。
◆「われわれが5月下旬に行ったときに先ほど申し上げたように、1台しか南相馬になかったというけれど、実際には米軍から20台の個人線量計が来ていました」
そうしますと、われわれはシステム生物学というシステム論的にものをみるやり方でやっているのですが、総量が少ない場合には、ある人にかかる濃度だけを見ればいいです。
しかしながら、総量が非常に膨大にありますと、これ(放射性物質)は粒子です。
粒子の拡散というのは、非線形という科学になりまして、われわれの流体力学の計算ではもっとも難しいことになりますが、核燃料というのは、ようするに砂粒のようなものが、合成樹脂のようなものの中に埋め込まれております。
これがメルトダウンして放出されるとなると、細かい粒子がたくさん放出されるようになります。そうしたものが出てまいりますと、どういうことがおこるかというのが、今回の稲藁(いなわら)の問題です。
例えば岩手の藤原町(藤沢町)では、稲藁5万7千ベクレル/kg(プロキログラム)、宮城県の大崎1万7千ベクレル/kg、南相馬市10万6千/kg、白河市9万7千/kg、岩手(茨城の高萩市?)6万4千/kgということで、この数値は決して同心円上にはいかない。
どこでどういうふうに落ちているかは、その時の天候、また例えばその物質が水を吸い上げたかどうか。
それで今回の場合も、私は南相馬へ毎週末700キロメーター行って、東大のアイソトープセンターは現在までに7回の除染をやっておりますが、南相馬に最初に行ったときには1台のNaIカウンターしかありません。
農林省が通達を出したという3月19日には、食料も水もガソリンもつきようとして、南相馬市長が痛切な訴えをウェブに流したのは広く知られているところであります。
そのような事態の中で通達1枚を出しても誰も見ることができないし、誰も知ることができません。
稲藁がそのような危険な状態にあるということは、まったく農家は認識されていない。農家は飼料を外国から買って、何十万という負担を負って、さらに牛にやる水は実際に自分たちが飲む地下水にその日から代えています。
そうすると、われわれが見るのは、何をやらなければいけないのかというと、まず汚染地で徹底的な測量ができるようにすることを保障しなければいけません。
われわれが5月下旬に行ったときに先ほど申し上げたように、1台しか南相馬になかったというけれど、実際には米軍から20台の個人線量計が来ていました。
しかしその英文の解説書を市役所の教育委員会で分からなくて、われわれが行って、教えてあげて実際に使いだしてはじめて20個での測定というのができるようになった、それが現地の状況です。
それから先程から食品検査と言われていますが、ゲルマニウム・カウンターというのでなしに、今日ではもっとイメージングベースの測定器が、はるかにたくさん半導体で開発されています。
なぜ政府はそれを全面的に応用してやろうとして、全国に作るために、〔政府は〕お金を使わないのか。3カ月経ってそのようなことが全く行われていないことに、私は満身の怒りを表明します(怒)。
◆「妊婦の胎児、それから幼い子ども、成長期の〔若者の〕増殖の盛んな細胞に対しては、放射線障害は非常な危険性を持ちます」
第二番目です。
私の専門は、いわゆる小渕総理のときから内閣の抗体医薬品の責任者でして、今日では最先端研究支援ということで、30億円をかけて、抗体医薬品にアイソトープをつけて癌の治療にやる、すなわち人間の身体の中にアイソトープを打ち込むのが私の仕事ですから、内部被曝問題に関して、一番必死に研究しております。
※アイソトープ:陽子の数(=元素の種類)は同じだが中性子の数が違う原子核のこと。同位体。
そこで、
「内部被曝」
がどのように起きるかということを説明させていただきます。
「内部被曝」というものの一番大きな問題は
「癌」
です。
「癌」がなぜ起こるかというと、DNAの切断を行います。
ただしご存知のように、DNAというのは二重らせんですから、二重らせんのときは非常に安定的です。
これが細胞分裂するときは、二重らせんが1本になって2倍になり、4本になります。この過程のところがものすごく危険です。
そのために妊婦の胎児、それから幼い子ども、成長期の〔若者の〕増殖の盛んな細胞に対しては、放射線障害は非常な危険性を持ちます。
さらに大人においても、増殖の盛んな細胞、例えば放射性物質を与えると、髪の毛、貧血、それから腸管上皮に影響しますが、これらはいずれも増殖の盛んな細胞でして、そういうところが放射線障害のイロハになります。
それで、私どもが〔放射性物質が人々の身体の〕内部に〔影響を〕与えた場合のことで、具体的に起こるので知っている事例を挙げます。
これは実際にはですね、一つの遺伝子の変異では「癌」はおこりません。最初の放射線のヒットが起こったあとにもう一個の別の要因で、「癌」への変異が起こるということ、これはドライバー・ミューテーションとか、パッセンジャー・ミューテーションとか、細かいことになりますが、それは参考の文献をつけてありますので、後で、チェルノブイリの場合や、セシウムの場合を挙げていますので、それを見ていただきますが、まず一番有名なのは
「α線」
です。
「プルトニウムを飲んでも大丈夫」
という東大教授がいると聞いて、私はびっくりしましたが、「α線」は最も危険な物質であります。
それは
「トロトラスト肝障害」
というかっこうで、私ども肝臓医は、すごくよく知っております。
※トロトラスト:二酸化トリウムコロイドを主剤とするX線。影剤トロトラストは、わが国では広島、長崎の原爆に次ぐ大規模な放射線による健康障害をもたらした。体内に注入されたトロトラストは肝臓や骨髄などに沈着しα線を長年月にわたって放出する。数十年経過後、肝がん、肝硬変や白血病を発症し、死亡率も高いことが明らかにされている。
要するに「内部被曝」というのは、さきほどから一般的に何ミリシーベルトという形で言われていますが、そういうものは全く意味がありません。
「I(アイ)131」
は甲状腺に集まります。
トロトラスト(α線を長年月にわたって放出するX線)は肝臓に集まります。
セシウムは、尿管上皮、膀胱(ぼうこう)に集まります。
これらの体内の集積点をみなければ全身をいくらホールボディ・スキャン(ホールボディ・カウンターを使っての全身検査)やっても、まったく意味がありません。
トロトラストの場合、このちょっと小さい数字なんで大きい方あとで見て欲しいんですが、これは実際にトロトラストというのは造影剤(ぞうえいざい)でして、1890年からドイツで用いられ、1930年頃から日本でも用いられましたが、その後、20から30年経つと肝臓がんが25%から30%に起こるということが分かってまいりました。
最初のが出て来るまで20年というのが何故かと言うと、最初にトロトラストはα線核種なのですが、α線は近隣の細胞を障害します。そのときに一番やられるのは、P53という遺伝子です。
われわれは今、ゲノム科学ということで人の遺伝子、全部配列を知っていますが、一人の人間と別の人間はだいたい三百万ヶ所違います。〔つまり、個人差があるのです。〕
ですから人間を同じとしてやるような処理は今日ではまったく意味がありません。
いわゆるパーソナライズド・メディスンと言われるやり方で、放射線の内部障害を見るときにも、どの遺伝子がやられて、どのような変化が起こっているかということをみることが、原則的な考え方として大事です。
トロトラスト(α線を長年月にわたって放出するX線)の場合は、第一の段階でP53遺伝子がやられて、それに続く第二、第三の変異が起こるのが20年から30年かかり、そこで肝臓癌や白血病が起こってくるということが証明されております。
次に
「ヨウ素131」。
ヨウ素は、ご存知のように甲状腺に集まりますが、甲状腺への集積は成長期の甲状腺形成期がもっとも特徴的であり、小児に起こります。
しかしながら1991年に最初、ウクライナの学者が甲状腺癌が多発しているというときに、日本やアメリカの研究者は、〔科学雑誌の〕『ネイチャー』に、これは因果関係が分からないということを投稿しております。
なぜそういったかというと、1986年以前のデータがないから統計学的に有意だということが言えないということです。
しかし統計学的に有意だということが分かったのは、さきほども長瀧先生からお話しがありましたが、20年後です。
20年後に何が分かったかというと、86年から起こったピークが消えたために、過去のデータがなくても因果関係があるということがエビデンス(根拠)になった。いわゆるですから疫学的な証明というのは非常に難しくて、全部の事例が終わるまでだいたい証明できないです。
ですから今、われわれに求められている子どもを守るという観点からはまったく違った方法が求められます。
そこで、今行われているのは国立の「バイオアッセ―研究センター」という化学物質の効果を見る、福島昭治(しょうじ)先生という方が、ずうっとチェルノブイリの尿路系に集まるものを検討されていまして、福島先生たちが、ウクライナの医師と相談・・・、集めて、500例以上の、前立腺肥大のときに手術をしますと膀胱もとれてきます。
これを見まして検索したところ、高濃度の汚染地区、尿中に6ベクレル・パーリッターと微量ですが、その地域では「P53」の変異が非常に増えていて、しかもその、増殖性の前癌状態、われわれからみますと、「P38」というMAPキナーゼと、それからNFカッパーBというシグナルが活性化されているのですが、それによる増殖性の膀胱炎というのが必発でありまして、かなりの率で上皮内の「癌」ができているということが、報告されております。
それでこの量に愕然といたしましたのは、福島の母親の母乳から2から13ベクレル、7名で検出されているということがすでに報告されていることであります。
◆『「補償問題」と「線引の問題」と「子どもの問題」は、ただちに分けて下さい。子どもを守るために全力を尽くすことをぜひお願いします』
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われわれアイソトープ総合センターでは、現在まで毎週700キロメーター、だいたい1回4人ずつの所員を派遣しまして、南相馬市の除染に協力しております。
南相馬でも起こっていることはまったくそうでして、20キロ、30キロという分け方がぜんぜん意味が無くて、その幼稚園ごとに細かく測っていかないと全然ダメです。
それで現在、20キロから30キロ圏にバスをたてて、1700人の子どもが行っていますが、実際には南相馬で中心地区は海側で、学校の7割は比較的線量は低いです。
ところが、30キロ以遠の飯館村に近い方の学校に、スクールバスで毎日100万円かけて、子どもが強制的に移動させられています。このような事態は一刻も早くやめさせてください。
今、一番その障害になっているのは、
「強制避難でないと補償しない」
と、参議院のこの前の委員会で当時の東電の清水社長と海江田経済産業大臣がそのような答弁を行っていますが、これは分けて下さい。
「補償問題」
と
「線引の問題」
と
「子どもの問題」
は、ただちに分けて下さい。
子どもを守るために全力を尽くすことをぜひお願いします。
それからもう一つは現地でやっていて思いますが、
「緊急避難的除染」
と
「恒久的除染」
を、はっきりわけて考えていただきたい。
「緊急避難的除染」を、われわれもかなりやっております。
例えばここの図表にでています滑り台の下。
滑り台の下は、小さい子どもが手をつくところですが、滑り台から雨水が落ちて来ると毎回濃縮します。
右側と左側にずれがあって、片側に集まっていますと、平均線量1マイクロのところですと、10マイクロの線量が出てきます。
それで、こういうところの除染は、緊急にどんどんやらなくてはなりません。
それからこういう様々なコケが生えているような雨どいの下、これも実際に子どもが手をついたりしているところなのですが、そういうところは、例えばですね、高圧洗浄機を持って行ってコケをはらうと、2マイクロシーベルトが0.5マイクロシーベルトにまでなります。
だけれども、0.5マイクロシーベルト以下にするのは非常に難しいです。
それは建物すべて、樹木すべて、地域すべてが汚染されていますと、一か所だけを洗っても全体をやることは非常に難しいです。
ですから除染を本当にやるというときに、一体どれぐらいの問題がかかり、どれぐらいのコストがかかるかということを
「イタイイタイ病」
の一例であげますと、カドミウム汚染地域、だいたい3000ヘクタールなのですが、そのうち1500ヘクタールまで現在、除染の国費が8000億円投入されています。もしこの1000倍ということになれば、いったいどれだけの国費の投入が必要になるのか。
◆「全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターというのは、ゲルマニウムをはじめ最新鋭の機種を持っているところはたくさんあります。そういうところが手足を縛られたままで、どうやって、国民の総力をあげて子どもを守れるでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります(怒)」
ですから私は4つのことを緊急に提案したいと思います。
第一番目に国策として、食品、土壌、水を、日本がもっている最新鋭のイメージングなどを用いた機器を使って、もう半導体のイメージング化は簡単です、イメージング化して流れ作業にしてシャットしていってやるということでの最新鋭の機器を投入して、抜本的に改善してください。
これは今の日本の科学技術力でまったく可能です。
二番目。
緊急に子どもの被曝を減少させるために、新しい法律を制定してください。
私のやっている、現在やっていることはすべて法律違反です。
現在の障害防止法では、核施設で扱える放射線量、核種などは決められています。東大の27のそのいろいろなセンターを動員して南相馬の支援を行っていますが、多くの施設はセシウム使用権限など得ておりません。
車で運搬するのも違反です。
しかしお母さんや先生たちに高線量のものを渡してくるわけにはいきませんから、今の東大の除染では、すべてのものをドラム缶に詰めて東京にもって帰ってきています。受け入れも法律違反、すべて法律違反です。このような状態を放置しているのは国会の責任であります。
全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターというのは、ゲルマニウムをはじめ最新鋭の機種を持っているところはたくさんあります。そういうところが手足を縛られたままで、どうやって、国民の総力をあげて子どもを守れるでしょうか。これは国会の完全なる怠慢であります(怒)。
第三番目、国策として土壌汚染を除染する技術を、民間の力を結集して下さい。
これは例えば東レとかクリタだとかさまざまな化学メーカー、千代田テクノルとかアトックスというような放射線除去メーカー、それから竹中工務店などさまざまなところは、放射線の除染に対してさまざまなノウハウを持っています。
こういうものを結集して、現地にただちに現地に「除染研究センター」を作って、実際に何十兆円という国費をかかるのを、今のままだと利権がらみの公共事業になりかねない危惧を私はすごくもっております。
国の財政事情を考えたら、そんな余裕は一瞬もありません。どうやって本除染を本当にやるか。
7万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに、国会は一体何をやっているのですか(怒)。
以上です。
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