来る12月18日(土)、二松学舎大学の九段校舎で、
「李二曲(り・じきょく)思想シンポジウム」
が開催されることになった。
以下、そのご案内をさせて頂く。
まず、李二曲についてである。
李二曲(1627~1705)は、字を中孚、号を二曲という。
明末清初期に、孫奇逢(そん・きほう)、黄宗羲(こう・そうぎ)と共に
「三大名儒」
の一人に称された。
かつては朱子学と陸王学の折衷学者との位置づけであったが、明徳出版社のシリーズ陽明学の1冊として荒木見悟『李二曲』が刊行されているように、近年では陽明学者として知られている。
ただし、
「劉念台(りゅう・ねんだい)・李二曲の両者は、朱子学・陽明学に対して一定の距離をおいて公平にみた人であり、陽明学に対して好意的であったとはいえ、全面的賛同を吐露した人ではなかった・・・(中略)・・・朱王折中を試みた李二曲」(吉田公平「王陽明の思想、体認を巡って」)
といった評価があることもここに付け加えておきたい。
以下、久米晋平「李二曲の〈悔過自新〉について」からである。
「陝西ちゅう(蟄の虫が皿)ちつ(厂と至)の人。父・李可從は、明の材官としてその気概を知られていたが、崇禎15(1642)年、李自成討伐のために従軍し、戦死する。
李二曲自ら〈庶民〉と称していたように、その家柄は父以前に遡れるものではない。
また彼は、生涯仕官をせず、康煕12(1673)年には〈地方隠逸〉として、同17年(1678)年には〈海内真儒〉として推薦され、さらに同42(1703)年には、山西、陝西方面を巡幸していた聖祖・康煕帝から呼び出されるが、すべて固辞した。」(二松学舎大学)
貧しい中、苦学して大成したことでも知られており、特に二曲の“黙養”の修行について、安岡正篤は、
「べらべら口をきかない、ついには
『三年軽々しく一語を発せざる』
に至るという。
黙するということは内に力を蓄えることだ。かくして発せられた言は人を信服させるに足る」
などと語っている。
私は、李二曲については、その名を知っているぐらいで、詳しいことは知らないが、
「転念(てんねん)」
という
「内省」
を重視した点に、共感できるかな、などと思っているところだ。
つまり、内省があるかないかが、君子(くんし)と禽獣(きんじゅう。動物)同然の小人(しょうじん)の分かれ目だというのである。
私自身、日々の実生活の中で、あるいは中国武術・韓氏意拳の稽古で、気持ちの切り替えが如何に大切かを思い知っているので、内省を経て
「念を転ずる」
というのは、なるほど、と思うのだ。
何はともあれ、今回のシンポジウムは
「家貧しくて孝子出(い)ず(貧しい家には孝行な子が出て家を助ける)」
とはこの人のことかと思うような庶民的な思想家・李二曲の思想を学ぶ絶好の機会であることは確かだ。
以下、二松学舎大学からの案内状からである。
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●●李二曲思想シンポジウム●●
人間にとって一番大切なものは何か。
それは生まれた時に万人に天から賦与された真心(まごころ)であると考え、生涯それを実践し、学問によってその認識をたえず深め、そのものに化して死ぬことを願った思想家がいました。
17世紀の中国を生きた李二曲(りじきょく、1627 ~1705)です。
彼は心を一番大切なものとし、心を大切にする者は、その心がたえず社会の中で発揮され、実現されていくことに責任を持つと考え、経世致用にも深い関心を払いました。
彼は儒学を明体適用の学とし、明体(道徳)と適用(経済)が共に実践されて始めて真の学問であるとしました。
心と言うものを粗末にしている現代に、李二曲によって心が最も尊いものであることを考えさせられることは、とても意味があります。
制度よりもそれを動かす人間が一番大事であることを考えるに付け、李二曲から大いに学んで見ようではありませんか。
彼は光になった儒者です。彼によって歴史上の人物も、現代の我々も照らし出されます。学問の目的も、生きる目的もはっきりさせられてきます。
日時:2010年12月18日(土) 開場:9時半
午前10時~午後5時半
場所:二松学舎大学・九段校舎1号館2階201教室
主催:二松学舎大学附属東アジア学術総合研究所 陽明学研究室
来聴歓迎・入場無料
お問合せ先:二松学舎大学附属東アジア学術総合研究所事務室
☎03(3261)1354
【プログラム】
・主催者挨拶 田中正樹(本学教授、室長)
・研究発表
「李二曲の明体適用の学と格物解釈」 陽明学研究室室員:久米晋平
「光としての儒者・李二曲」 本大学院教授:小川晴久
昼食(正午~午後1時)
・研究発表
「先祖李二曲先生遺事、我が祖(李二曲)は模範的孔子思想の実践者」
李二曲11代孫:李剛
「“四為”精神の李二曲思想に与えた影響」 張横渠28代孫:張世敏
(註:“四為”精神=為天地立心、為生民立命、為往聖継絶学、為万世開太平)
休憩10分
「李二曲の宋明理学に対する総括」 陝西師範大学教授:林楽昌
・総合討論(午後4時15分~5時半)
討論者 韓睿源朝鮮大学(韓国光州)教授、発表者5名
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