計画的避難区域の放射線基準20mSvの根拠、ICRP(国際放射線防護委員会)とIAEAの国際基準
こんばんは、Renaです。
この記事は昨日出すつもりだったんですが、
IAEAの英語文書読みながら寝てました・・・(((( ;°Д°))))。
昨日、テレビで枝野官房長官が計画的避難区域について会見している様子を
ご飯を作りながら聞いていて、「ICRP、IAEAの20~100ミリシーベルトという基準値」
という部分を聞いた瞬間に、「違う(゜д゜;)!」と口から出てしまいました・・・。
今回の記事には、事実と個人的な意見を載せています。
(追記:19日報道の子供の年間被ばく量、文部科学省が20mSv/年と
最終的に正式発表した件については、こちらの↓別の記事にて記載しました。
【結論】子供の放射線量基準の年20か10ミリシーベルトか。文部科学省の屋外活動・校庭利用の考え方 )
(Twitterはじめました。
http://twitter.com/Rena_kurumi
です。@Rena_kurumi)
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
<政府発表内容書き起こし>
「新たに『計画的避難区域』とする。その基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)、
国際原子力機関(IAEA)の緊急時被曝(ひばく)状況における放射線防護の基準値、
年間20~100ミリシーベルトという基準値を考慮して、事故発生から1年以内に
積算放射線量が20ミリシーベルトに達する恐れがある、こうした地域を指定をしたい。
具体的には福島第一原子力発電所から20キロメートル以上離れた地域のうち
葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部、南相馬市の一部が該当する。」
<書き起こしここまで>
国際緊急基準値を参考にして、日本の基準値を作る。
であれば、前提となる国際基準値の内容をきちんと説明しなくてはいけないはずです。
それなのに、「20~100ミリシーベルト」についてIAEA、ICRPそれぞれの部分説明は無し、
使った根拠も話されず、会見で記者からも関係する質問は無く終了しました。
会見内容から見えたのは、以前記事にもした3月21日ICRP発表の
放射線量の基準値引き上げ勧告の英文内容 の「計画残存線量」の基準値だけです。
【IAEA基準について】
IAEAの緊急時の一時避難の放射線基準を探してみましたが、
こちらの放射線基準 は1週間に50mSvとかなり高いです。
(緊急時被ばく状況における介入レベルと対策レベルのための手引きより)
ゆえに、IAEAの基準で20~100mSvという値は、私が見た限りは
ピンポイントでは見つかりませんでした。(英文も探しましたが・・・見つからず)
【ICRP基準について】
政府は20ミリシーベルトを超えると予測される地域を計画避難地域とすると
しましたが、根拠としているICRP文書、引っ張ってくる場所が正しくないのでは・・・?
そもそも、「緊急事態における残存線量の基準値(20~100mSv)」に
具体的期間の設定はなく、緊急事態とされる期間だけ、いくらでも有効です。
枝野氏が言った年20~100mSvの「年」は、ICRP文書には書かれていません。
基準値の幅の下限を持ってきたというが、
使うべきは同じ文書内の別の基準(居住限度基準)のように思えます。
福島原発周辺地域、またそうでない地域(地形・風向き等)において、
長期的に考えて、居住を続けられない放射線量が計測されている。
その理由があって計画避難を提案したのですから、発表の拠り所と
すべき数値は、「緊急事態における残存線量の基準値(20~100mSv)」
ではなく、「汚染区域に居住する場合の一時的基準値」では・・・?
ICRPでは、汚染地域に居住する場合の一時的な基準値として、
年1~20mSvを推奨しています。
それでも、長期的ゴールとして通常の年1ミリシーベルトを目指すこと、
と記載されています。
つまり、政府は「汚染区域の居住推奨レベル上限の20mSv/hを超える
区域については、計画避難対象とする」と発表した方が良かったのでは?
朝日新聞やNHKニュースでは、20~100mSvの中で一番低く安全な数値を
使って計画避難を呼びかけることとした、とありました。
でもそうではなく、「居住基準上限いっぱいの20mSv/hを超えてしまう予測と
なったので計画避難を通達した」、と伝えるべきなのではないでしょうか・・・?
要は、数値の大きな基準幅の下限ではなく、適切な小さな数値の基準幅の上限。
下記に、以前の記事の一部である、ICRP勧告を載せておきます。
【日本の避難基準】
日本での今までの避難基準は何かと探してみました。
原子力安全委員会が発表した原子力施設等の防災対策について
という文書22Pの表2 屋内退避及び避難等に関する指標がそれになるのでしょうか。
“10~50ミリシーベルトの場合、住民は、自宅等の屋内へ退避すること。
その際、窓等を閉め気密性に配慮すること。
ただし、施設から直接放出される中性子線又はガンマ線の放出に対しては、
指示があれば、コンクリート建家に退避するか、又は避難すること。
50ミリシーベルト以上となる場合、住民は、指示に従い
コンクリート建家の屋内に退避するか、又は避難すること。”とあります。
ICRPの基準に比べると随分高いですね・・・。
でも、それでも一般市民の放射線量限度は年1ミリシーベルトです。
【20ミリシーベルト/年ってどのくらい?】
放射線業務を仕事でしている人は特別に引き上げられ、5年間で100ミリシーベルト、
その5年間のうち1年間での最大が50ミリシーベルトです。
1年で50ミリシーベルトに至ってしまった場合、
残りの4年で50mSv分までしか業務に携わることが出来ません。
5年間で100ミリシーベルトなので、1年間の線量限度は20ミリシーベルトとなります。
つまり、20ミリシーベルト/年というのは、放射線管理区域(水も食べ物も取れない、
寝ることも出来ない、許可なしに立ち入りできない管理された場所)で働く方が、
仕事のために浴びるのと同等の放射線を浴びることになるのです。
【20ミリシーベルト/年、子供に適用して大丈夫なの?】
上記にて、20mSv/年は放射線業務従事者が特別に管理された区域で仕事を
する場合に一年間に浴びる上限とされている放射線量だと書きました。
これを、文部科学省が学校校庭での屋外子供たちの活動を制限するラインとする
方針として20mSvを先週から検討していました。
これは、放射線業務従事者と同じ放射線を浴びるという意味です。
この数値が、本当に適切だと大きな声で言えるのでしょうか・・・。
学校は、放射線管理区域のように管理されていません。
放射線はどんな量でも危険であり、安全だという値はありません。
(影響に対する閾値は無いという国際的BEIR7の考えに基づいて)
一般人に対する1ミリシーベルトという線量限度は、安全な値という意味ではなく、
「これぐらいは生きていくうえで何とか我慢してくれ」というレベルなのです。
【10ミリシーベルト/年なら子供に適用して大丈夫なの?】
屋外活動の制限20mSvの話がこれと連動しているのかはっきりしないのですが、
原子力安全委員会の代谷誠治委員の発言では、子供の年間被ばく量の目安が
「子どもは10ミリシーベルト程度に抑えるのが望ましい」とのことで、
13日に安全委員会の発表として報道されました。(福島県内の小学生・中学生が対象)
通常の年1mSvの10倍もの放射線を浴びていいというきちんとした根拠もなく、
20mSvの半分にしたからそれでいいのか・・・と受け取れなくもないです。
これが適切だと大きな声で言えるのでしょうか・・・。
しかも、高木義明文部科学相は15日の閣議後会見で
「目標は年20ミリシーベルト。安全委全体の見解ではない」とし、考慮しない考え。
なんで子供相手に、そこまで上げようとするのか意味がわかりません・・・。
重ねて言いますが、学校は放射線管理区域のように管理されていませんし、
子供たちは選んで放射線業務に従事している方なのではありません。
また、京都大学原子炉実験所の小出裕章氏が、この10mSv/年について
4/14にラジオで見解を話しています。
小出氏によると、子どもに対し年10mSvという基準を設定するなんてとんでもない
事であり、1ミリシーベルトという基準を決めていたことに意味がある、とのこと。
ラジオの録音音源と内容の要約が載っているサイト があるので、参考にどうぞ。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
福島原発事故が、IAEAのレベル評価で最悪のレベル7と発表されました。
・・・この発表が事前に福島県に伝えられていないことは、問題ではないでしょうか。
また、計画避難地域の自治体に対して、避難指示が出た場合の行動が
伝えられていないそうです・・・。それも、問題ではないでしょうか。
今回の記事、まとまらなくてすみません・・・・°・(ノД`)・°・。