日本に《強固な地盤》はない | シラスとウシハク【保守・革新でなく、日本獨自のありかたにもとづく區別をとり、時事・歴史問題を考へるブログ】

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きのふから、《安全な原發》といふ存在そのものを發想することができない、といふ眞實について、述べてをります。
けふは、その理由の一つ目について、ひきつづき書いてみます。





なほ、本ブログにおいては、正字正假名遣で表記してゐます。なぜ、わざわざ讀みづらくて難しい表記をするのか? その理由を御知りになりたいかたは、わがウェブサイト(クリックすると、ジャンプします。)に御越しください。わけを、おしらせいたします。


或いは、この本を御讀みください。さすれば、この問題について、關心をおもちになり、知識・教養をふかめることができます。文庫ながら、じつにすばらしい本です。

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【理由その1】(つづき)
日本列島のどこをさがしても、《強固な地盤》は見當たらないから。






けふの内容にはひる前に、きのふのおさらひを、しておきます。
きのふは、下記の理由をあげて、原發が、軟弱な地盤のうへに建てざるをえないこと、御話いたしました。

①日本列島は、地盤がそもそも全體的に軟弱であり、とくに、海岸線附近は脆弱であること。

②日本の川は《大河》でないので、原發は海沿ひに建てざるをえないこと。

③わが日本は國土がせまいので、地盤の硬い土地は、とうの昔に民間取得され、あとは軟弱な土地しか殘されてゐないこと。






さて、みなさまのなかには、このやうな疑問をもたれるかたが、いらっしゃるやもしれません。

「地盤がやはらかいのと、原發が危險になるのと、どういふ關係があるの?」

まづは、その疑問の答へについて、ともに考へてみませう。





原子力發電所の事故は、なぜおこるのでせうか?

事故の原因は、そもそも何なのでせうか?


それを考へれば、おのづと答へはみえてきます。





ずばり、原發事故は、《熱》によってひきおこされます。その點は、みなさま御氣づきのとほりです。


原發がうごいてゐるとき、原子爐のなかは非常に高温となります。核燃料がもえて、大量の熱を發生させるからです。その状態を放置すると、どうなるか?
もちろん、事故がおこりますね。福島第一原發の事故も、原子爐で發生する熱をおさへられなかったがために、ひきおこされました。核燃料の温度があがりすぎ、つひには灼熱状態となって、燃料が融けおちてしまひました。その現象が、メルトダウンMelt downです。


一方、福島の事故にいたるまで、原發が大事故をおこさずに運轉してこられたのは、なぜでせうか?
もちろん、原子爐で發生する熱を、冷却してきたからです。ふだんは、大量の水をもちゐて、原子爐を冷却し、發生する熱をうばってゐるわけです。
ここまで、當り前すぎることを、御説明いたしました。おわかりのごとく、原子力發電所の事故は、《熱》によってひきおこされるのです。





つまり、その熱をうばって冷却できるかどうかが、事故の發生・防止をわける分水嶺であります。それでは次に、どのやうに原子爐を冷却してゐるのでせうか?





さまざまな本に、原發のしくみが圖解されてをりますから、御持ちのかたは、それを御覽になってください。ここで非常に簡單にいふと、

①海から、《ポンプ》をもちゐて海水をくみあげる。

②くみあげた水を、《パイプ》につたはらせて原子爐まで引きこむ。

③水を原子爐に入れる。

④水は、核燃料の熱をうばひつつ蒸發し、水蒸氣となる。

⑤水蒸氣となった水は、《パイプ》をつたってタービンにゆく。

⑥一部の水蒸氣は、タービンをまはして發電し、一部のそれは、海水によって冷却される。

といふ具合でございます。





なほ、原發は、そのやうにして發生させた熱のうち、3分の2を海に捨ててをります。すなはち、3分の1しか發電に利用してゐないのです。そんな發電所が、温暖化を促進しないはずがありません。けふ、地球温暖化問題はとりあげませんけれど、

「だまされてはいけない。」

と、一言申しあげておきます。





さて、さきほどの①~⑥のプロセスにおいては、水がパイプを流れてゐなければなりませんね。パイプが斷絶せず、始めから終りまで開通してゐればこそ、水がめぐって冷却ができるのです。
ところが、地盤が軟弱なところに地震がきてしまったとき、そのパイプはどうなるでせうか?





地震がおこると、軟弱な地盤はメチャクチャになります。地盤が沈下したり、隆起したり、地滑りをおこしたり・・・・・・。あちこち、デコボコができるのです。


原發敷地内も、例外ではありません。敷地がデコボコになりますから、めぐらせてあるパイプのどこかが必ず、斷絶いたします。1ヵ所でも斷絶してしまったら、水を循環させられなくなりますね。水が循環されなくなると、核燃料を冷却できません。さうして、原發事故がひきおこされてしまふのです。
原子爐だけならば、とても頑丈なつくりにしておきさへすれば、地震で損傷することはありますまい。しかし、パイプとなると、もはや手のうちやうがないのです。





地盤沈下・隆起の前例をあげてみると、江戸時代の安政東海大地震のときには、御前崎では1~2mの隆起が、ひきおこされました。2mといへば、NBAのバスケットボール選手なみでございます。1mにしても、かなりの段差です。それだけの段差ができてもなほ、パイプが無事にすむでせうか? すむわけがありません。


さらに、マグニチュード8クラスの地震においては、その搖れが1~2分もつづくことが、明らかになってをります。1m以上の段差ができ、なほかつ1~2分間、激震するのです。それに耐へられるパイプなど、存在しやしません。





海水を吸ひあげるパイプ・水を循環させるためのパイプ・水蒸氣をとほすパイプ。いづれかのパイプのどこかが、一ヶ所でも斷然したらアウトです。そのやうに、危い構造をもってゐるのが、原子力發電所なのです。





さらに、御氣づきでないかたのために申上げると、原發のしくみを滯りなくうごかすためには、電氣が必要です。海水ポンプをくみあげるとき、電氣が必要となります。非常停止ボタンを押して、無事に停止させられるのは、電氣があればこそなのです。そもそもコンピュータで制禦するには、電氣が不可缺でございます。


電氣は、電線をもちゐて、發電所各地に配電されます。その電線・配電設備、地震がきても大丈夫と言へるのでせうか? それらも、パイプ同樣、無事ではすまないと、おもはなければなりません。

地盤沈下および隆起+長時間の激震

の2つがきますから、配電設備とて、損傷せざるをえないのです。



電氣囘線の一ヶ所でも切れれば、やはり萬事休す。大事故がおきても不思議でない状況に、突入してしまひます。とくに、電氣配線がズタズタにされ、發電所内が完全停電におちいる事態は、ステーション・ブラックアウトStation Black-outとよばれ、警告が發せられてをります。





さういふわけで、どれだけ原子爐を頑丈につくったとしても、それ以外のところで生じた《ほころび》によって、原發事故は、ひきおこされてしまひます。
絶對に斷絶しないパイプ・絶對に切れない電線などといふ便利なものは、それこそ絶對に存在しません。地盤の弱いところに地震がくれば、地盤沈下&隆起がおこり、かなりの高確率で、パイプ破損・配電切斷が生ずるのです。


地盤が軟弱なところに原發をたてることが、いかに危險であるか、おわかりいただけましたか。





もちろん、《原子爐の安全》しか見なければ、地盤の硬軟など、考へる必要はありません。が、おわかりのとほり、それは、非常に危險な《安全チェック》なのです。


武田邦彦氏は、原子力ムラの人々の《奇妙な習性》のひとつとして、次のものを擧げてをられます。

「原子爐は守るけれども、電源や付帶設備には、あまり注意を拂はない。」

本記事を讀んでこられたみなさまには、その《習性》がいかに危なっかしいものか、充分に想像されることでせう。





ここまで、地盤が軟弱だとなぜ原發が危險になるのか、といふ疑問について、その答へを申上げました。





さてここで、地盤の硬軟をくらべるために、諸外國の御話をいたします。





きのふの記事のとほり、日本列島は、古くても4億年前より前には存在せず、その後も海に沈むことを繰り返してきました。それにたいし、たとへばヨーロッパ大陸は、かなり昔から、陸地として存在してきたのです。


いまのフィンランド・スウェーデンのあたりは、17,2億~18億年前から陸地でした。一部、25億~35億年前といふ古さの地層もございます。北歐がもっとも古く、その次が、ロシア・東歐地域で、9~10億年前から。イベリア半島・フランス・ドイツの一部は、4億年前から。イタリア・オーストリア・ギリシア等が、いちばん新しくて、2億5000年前以降です。


つまり、ヨーロッパ大陸は、どんなに新しい地盤でも、億單位の《歴史》をもつのです。


ちなみに、イタリアは地震がおこるので、1987年の國民投票により、原發計畫を凍結いたしました。原發は、イタリアにおいて1基もうごいてをりません。





アメリカ大陸も、日本列島にくらぶれば、はるかに古い陸地です。そもそも、《大陸》と名のつくところはみな、古いのです。


みなさま、この地圖を御覽ください。アメリカ合衆國の原子力發電所の分布圖、でございます。(*ウィキペディアより轉載。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:USA_Nuclear_power_plants_map.gif


$井蛙(せいあ)大海を泳ぐ【時事問題ブログ】破天荒な家庭教師@靜岡・富士-アメリカ合衆國の、原發マップ


この地圖を、つらつら眺めてみてください。赤い印が、原子力發電所でございます。
すると、興味深い傾向がみてとれます。それは、

「西部地域には原發がすくなく、東部地域に原發が集中してゐる。」

といふ傾向です。


周知のごとく、東部地域では、地震がまったくおきません。ゼロではないかもしれませんが、かぎりなくゼロにちかい。ですから、原發をたててもリスクが低いのです。
それにたいし、西部地域は地震がおきます。ロサンジェルス地震などのやうに、かなり大きな地震がくることもあります。そんな地域に原發を林立させるのは、相當なリスクをともなひます。賢明なアメリカ人たちは、そのやうに野蠻な選擇はしないのです。


さうとは言へ、西部地域にも《それなり》に原發があります。これは何故なのでせうか? 理由はふたつあります。


①地盤が強固であるから。

それなりに地震がおきるとしても、地盤がしっかりしてゐれば、大事故のおそれはすくなうございます。日本列島とはことなり、アメリカ大陸は太古の昔から陸地でありました。つひこの間まで水にひたってゐた、日本の地盤とは違ふのです。


②アメリカ合衆國は廣大な國であり、かつ、地震がおこる地點はかなり特定されてゐるので、その地點をさけて原發をたてることが充分に可能であるから。

行ったことのある人なら實感なさるでせうが、アメリカは廣うございます。土地面積にゆとりがあります。そして、地震がおきるポイントが、かなりはっきりと特定されてゐるとききます。故に、そのポイントをさけて、原發をたてられるのです。土地をえらぶことができるわけです。國土がせまい日本からは想像もつきませんが、まったくもってうらやましいかぎりです。





昨年の東北大震災では、津波があまりに巨大であったため、そちらの方にばかり注目してしまひます。原發の安全對策にしても、あたかも津波對策だけしておけば大丈夫、であるかのごとき錯覺が、電力會社などによってばらまかれてをります。
それが、明確な誤りであること、本記事を御讀みになったみなさまには、すぐにおわかりいただけませう。日本の原發が事故をおこすのは、對策をとって防ぎうるレベルのものではありません。いかなる對策をとっても防ぎえない、構造的な宿命なのです。


たとへば、靜岡縣の濱岡原子力發電所も、津波對策をしっかりすればO.K.だといふ考へのやうです。が、馬鹿を言ってはなりません。濱岡・御前崎地域は、きたるべき東海大地震の豫想震源域の、《ちゃうど眞下》なのです。大津波のまへに、大地震の心配をせねばなりません。なんといふか、開いた口がふさがらない。この手の考へを、

「木をみて、森をみず。」

といふのでせうね。あるいは、

「石橋を叩かうとおもって下ばかり見てゐたら、前から來た車にはねられる。」

とも、表現できませうか。





きのふの記事では、《日本の宿命》をいくつもあげて、原發をたてるにむかない場所であることを、御話いたしました。
そのやうに、多くの特殊事情をもつ日本列島において、なぜ敢へて原發を建てなければならないのか、理解に苦しみます。歐米その他の國々は、原發にむかない事情がたまたますくないから、原發をたてた、といふだけのことです。原發は、國家ならばかならずそなへなければならない發電所、ではありません。


むかない土地には、原發をたてるべきでないのです。が、よりによって、もっともむかない國土に、原發が建設されてしまった。よほどの《無理》をしなければ、よほどの《ウソ》をつかなければ、なしえない決斷です。その無理・ウソが、この度たたってしまったのです。


もっと素直になれないものでせうか。素直に、虚心坦懷に、わが日本國の特徴をみれば、そこに原發を建ててはいけないことくらゐ、すぐわかります。素直になりませう。


この問題については、右も左もありません。わが日本國の《個性》によりそへば、おのづと結論はでてくるのですから・・・・・・。





本日をもって、日本で《安全な原發》をそもそも發想できない理由、の第一番目、
「日本列島のどこをさがしても、《強固な地盤》は見當たらないから。」
を、終了いたします。
明日は、のこった理由2つについて、論じてみる所存でございます。
(本篇 終)





コメント・質問等、どんどん御寄せください。「この字、よめないんだけど?」といふものでも、かまひません。よろこんで、御答へいたします。





ここで、參考にした本の御紹介です。世の中には、この本のほかにも、すばらしい本がたくさんあります。すばらしい先生が、たくさんいらっしゃいます。御自分の目でおさがしになり、いろいろ讀んでみられることを、ここでつよくおすすめいたします。


本を讀みはじめると、自分の視野がいかにせまかったか、自分の考へがいかにあさかったか、がわかります。《井の中の蛙》が、《大海を知り、泳ぎはじめた》瞬間です。ひとり(一匹)でも多くの《井蛙》に、《大海を知って、泳ぎはじめて》ほしい。本ブログのタイトル「井蛙(せいあ)、大海を泳ぐ。」は、そのやうな願ひをこめて、かかげました。

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最後まで讀んでくださり、ほんたうにありがたうございます。「地盤の軟弱なわが國に、原發はふさはしくない。」と御感じになったかたは、ぜひ、《人氣ブログランキング》に清き一票を、よろしく御頼み申上げます。


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