日本経済新聞によると、
悪質な運転で人を死傷させる「危険運転致死傷罪」について、法務省は1月19日、適用される速度基準の明確化などを議論する検討会を設置すると発表したそうです。被害者らからは、現行規定が曖昧で、刑事処分や司法判断にぶれが生じているとの指摘が出ていたのです。そのため、「自動車運転による死傷事犯に係る罰則に関する検討会」を作って、2月下旬にも、その初会合を開き、罰則見直しなどを検討するそうです。
確かに、犯人、どう見ても危険な運転をして被害者が亡くなったりしているのに、過失運転致死罪で起訴されて、被害者家族らが慌てて危険運転致死罪への訴因変更(起訴された罪を変えること)を求めて署名活動を行ったりするのです。
また、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」第2条には、速度が法定速度を何キロ上回った場合に危険運転致死傷罪に該当するといった明確な規定はなく、大幅な速度超過でも法定刑の上限が7年の「過失運転致死傷罪」で起訴される事例もあったのです。
そこで、検討会は「高速度」の基準を条文に明記することの是非などを検討するそうです。
しかし、例えば2条2号の「その進行を制御することが困難な高速度」を時速120キロメートルと明記したとしたら、時速119キロで走行した場合は、自動的に過失運転致死傷罪となってしまうのです。
要するに、どこまでいっても問題は生じるのです。その原因は、交通犯罪を2つに分けて1つは重く処罰し、もう1つは軽く処罰すると定めることにあります。この2段階方式を採用する限り、問題はなくなりません。被害者やその家族の苦悩が消えることはないのです。
そこで、私は、交通犯罪を「過失運転致死傷罪」に一本化し、その法定刑の大幅な引き上げ、例えば「人を負傷させた者は15年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は7年以上の有期拘禁刑に処する。」とするべきだと思います。被害者らの苦悩は、交通犯罪の犯人に科される刑罰が信じられないくらい軽い、被害者が亡くなっている「よくある交通事故」でも犯人は拘禁刑の執行がアッサリ猶予されてしまうことが普通であることから来るからです。
参照条文
(危険運転致死傷)
第2条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の拘禁刑に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期拘禁刑に処する。
① アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
② その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
③ 以下省略