埼玉新聞によると,川口市内でひき逃げ事件を起こしたとして,自動車運転処罰法違反(過失致死)と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元タクシー運転手金龍浩が、さいたま地方裁判所で2月27日に行われる予定だった裁判(判決期日)に出廷せず、3月9日に延期されたそうです。

 被告人が出廷しなかったのは,昨年12月26日の第1回の裁判と2月6日の裁判に続き3回目であるのに,担当裁判官は「次回,なぜ出廷しないのか問う必要がある」として,引き続き刑事弁護人(弁護士)に被告人と連絡を取るように求めたそうです。

 しかし,被告人が裁判に出頭しない場合,「勾引」という「逮捕」に似た手段があるのです。「勾引状」を裁判所が発布して,強制的に裁判所に被告人を連れてくることができるのです。

 なぜ裁判所は被告人を勾引しないのか。

 もし,交通事故は犯罪でない,だから,被告人を勾引するまでもないと裁判所が考えているとしたら,裁判所も犯罪被害者等基本法の精神を無視していると言わざるを得ないでしょう。

 犯罪被害者等基本法・前文

 「安全で安心して暮らせる社会を実現することは、国民すべての願いであるとともに、国の重要な責務であり、我が国においては、犯罪等を抑止するためのたゆみない努力が重ねられてきた。
 しかしながら、近年、様々な犯罪等が跡を絶たず、それらに巻き込まれた犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされてきた。さらに、犯罪等による直接的な被害にとどまらず、その後も副次的な被害に苦しめられることも少なくなかった。
 もとより、犯罪等による被害について第一義的責任を負うのは、加害者である。しかしながら、犯罪等を抑止し、安全で安心して暮らせる社会の実現を図る責務を有する我々もまた、犯罪被害者等の声に耳を傾けなければならない。国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない。」