Emi Tamura-090320


その昔、
私が大学3回生だった頃。
下鴨神社そばの『伊万里』という BAR で
アルバイトをしていたことがある。

住宅街にひっそりとあるご自宅の一階がお店。
そこを家族3人で経営してた。


ママは祇園四条のとある和服小物屋さんが親戚の方で、
ときどき私を連れ出しては、
京都の遊び方を教えてくれた。


その数年前まで伊万里は四条にあった。
伊万里を四条通り一等地の店舗からご自宅に移すにあたって、
その場所を山口さんという方にお店に譲られた。

なんしか一等地な分、
京都を守るためには知れた人にしか譲れないのだと、
ママは言ってた。

ママのすすめもあって、
私は時々山口さんのお店『 ゆう 』に寄せてもらうようになった。

二十歳そこらの娘にとってそこは、
いつも背伸びをしないと暖簾をくぐれない敷居の高い場所だったけど、
頑張ってちょいちょい顔を出した理由は
素敵なオトナと感性が溢れていたからだった。



横一。

漆黒の器に寝かせられた真っ白なカラーが
光に向かって頭を持ち上げている。

「笑美ちゃん、カラーってね、
電気を当てて太陽のようにすると、
切り花でもそっちをむいて身体を反らせるのよ。」

ママが『ゆう』で教えてくれた。

もしかしたらそれはカラーに限った話ではないかもしれない。
でも、その日見たカラーはまるでしなやかな女性の身体みたいで美しかった。



こういうことを頭ではなく目や心で知っているのは
とても粋だなあと、
そのとき思った。






写真は 先日の妹の誕生日を祝って、
マンダリンオリエンタルホテル2階のイタリアンビュッフェで
家族5人、食事をしたとき
とても素敵にあしらわれていたカラー。