目の前で、彼『レギン』が剣を突きつけられ、
負けそうになるのを私は、見ていた。
ただ、[傍観者]として私は 見ることしか出来なかった。
だって、この勝負は“外部からの攻撃”は禁止されているのだから。
(だからって、私は・・・。
レギンが殺されるのを黙って見ているだけなの?)
彼女…ティクシアに出来ることがあるとすれば、見守ること。
それ以外にも、あった。だが、彼女は『それ』をするべきか悩んでいた。
(私は、まだ制御できないし・・・。
最悪、レギンも・・・)
彼女の心は確実に揺れていた。
でも、悩む時間はすでに全くといっていいほど
無い
と言っても過言ではない。
『5番目』が、高く剣を振り上げる。
レギンには、遠くに飛ばされた剣を掴み取るのは…無理だ。
(やっぱり、私は・・・アレをやるべきなんだ・・・)
目の前に迫る、レギンの死。
そして、『5番目』が剣を振り下ろす前に、ティクシアは覚悟を決めた。
(歌魔法・・・発動!!)
小さな音が、心地よいメロディーになり、流れる。
「ちょっと!!外部からの攻撃は禁止って、聞いてたでしょ?」
『8番目』が、にらみかけてくる。
「攻撃ですか・・・。私はただ、歌っているだけです」
「そうかもしれないけど・・・!!でもっ!!」
「歌魔法は、歌えば 無意識に発動してしまいますから」
悔しそうに 歯軋りをする『8番目』。
(レギン、負けないで・・・)
少女の歌が、森の中をこだまする。
その歌が 耳に入ると ほぼ同時に・・・。
「クソッ!!力が抜けてく・・・ッ!!」
『5番目』が 苛立たしそうに しゃがみこむ。
「どうなってるんだ・・・」
一方、レギンは、『5番目』とは 違い、力が湧いてくる。
「力が・・・、移動し・・・るの・・・か?」
ハァハァと、息を荒くして『5番目』がつぶやく。
「何はともあれ、自分の勝ちかもな」
レギンは、飛ばされた剣のもとに歩み寄り、そして引き抜く。
「チッ・・・。卑怯・・・だ・・・」
赤い双眸が、力を奪われながらも鋭く睨みつけてくる。
「悪いな・・・。俺は ただ 取り戻したいだけなんだ」
弱った『5番目』の体を、一振りの剣が突き刺す。
「お前・・・の中に・・・・・・怒りの・・・炎・・・燃え始め・・・る」
淡く赤い光が、『5番目』の体から にじみ出ていく。
そして、その淡い光が 頭上で 1つの光の珠になった。
その光の珠は、レギンの胸の位置までゆっくりと降りてきて、
溶け込むようにレギンの体へと飛び込み、消えた。
「おかえり、俺の心にある 怒り」
続く。