虎よ!虎よ!ぬばたまの
夜の森に燦爛と燃え
そもいかなる不死の手 はたは眼の
作りしや、汝がゆゆしき均整を

あくあくさんが「虎よ、虎よ!」の詩に出会ったのは、たしかGS美神極楽大作戦なるオカルトギャグ漫画でのネタ元として。が、その詩の印象はものすごく強く、漫画のストーリーはうろ覚えなくせに、詩だけ丸暗記していた覚えがあります。

そして、かの名作は寺田克也氏の表紙イラストで復刻。
買ってみました。

虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター(著)ハヤカワ文庫
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※画像リンクでアマゾンISに。

全435ページ、一気読みできるスピード感です。SF的アイデアの宝庫、キャラ設定と配置の妙、最後にきっちり回収される伏線、皮肉溢れる会話。
古典SFでとりあえず読んでおいた方がいい作品は?と問われたらまちがいなくおすすめしておきたい一作得意げ

いやあ、それにしてもテンポがいいです。会話部分は、訳者さんの表現とリズム感にもかかってますが、これはテレパスの表現といい、中田耕治さんあってこその和訳版「虎よ、虎よ!」の素晴らしさ!!訳者さんとウマがあわないと辛いのは、翻訳本の切ないところですから。。。

テレポーテイションの仕組みが科学的に解明され、一般人でも使用できる技術とまでなった25世紀。しかし空間跳躍の技術は、世界に新しい権力システムをもたらす結果になった。あるものは富を得る手段に、あるものは窃盗の手段に。そして、惑星間の第戦争の背景としても、テレポーテイション=その発見者の名を取って「ジョウント」と呼ばれる技術が存在していた…。

ある戦闘の巻き添えを喰って、難破船でただひとり宇宙をさまようはめになった乗組員、ガリヴァー・フォイル。通りがかった宇宙船は、彼が必死で放つ救難信号をなぜか無視し、フォイルを見捨てて去っていった。その時、ただの平凡な宇宙船乗組員として生きてきたフォイルの中に、凶暴な本能が目覚める。

「俺を見捨てたあの船に、復讐を!」

そこからもういろいろあるんですけど、ぜひ読んでくださいラブラブ(ハートマークつけちゃうくらい、おすすめ)。いっろんなSF的アイデアてんこもりなんですが、すごく一瞬で使い捨てられていくのが,非常に富樫氏の名作「レベルE」的です。小ネタだけ拾ってきて、短編集書けちゃいそうですもん。スピンオフにもことかかない。

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また出してしまいました。SFまんが最高傑作。
庵吾さんてどんな人なのかだけで一本かけそうです。


■でも、壺もといツボはここにあります

「テレポーテイション」という技術の普及によって世界情勢がどう変わりえるか、という部分を、前提となる世界設定としてきっちり作り込んでるのが素晴らしいです。この背景設定あってこそ、主人公フォイルのドラマも、彼の周囲の人々も生き生きとしてきます。

「その世界に魔法があったら、科学技術はどこまで発展していましたか?」

この命題、最近のあらゆるライトノベルとSFちっくな物語に投げておいてもよいんじゃないでしょうか。逆に読んでも佳し、言葉を入れ換えてもよし。

常に問題となるのは、物語世界に広がりと根拠を持たせるだけの、設定の緻密さ。政治と戦争と経済を理解せずに小説を書くのは無謀人か、または最初からそんなもの気にしないでハチャメチャを楽しみたい人のやることです。後者をとるならそれはそれで、楽しければ良いのですけど。それも物語の楽しみのひとつ。たぶん。

■オマケ

さて、冒頭でも書いた通り、本作は詩人ウイリアム=ブレイクの「虎」をプロローグの前に持ってきております。本作での「虎」は、人の中に潜む獣性の表現なのでしょうが、詩では、その恐ろしさとともに圧倒的な美しさを讃える、絵画の中に描かれた永遠の獣という印象です。

ちなみに詩の一段落目だけさっくり直訳トライするとこんな内容なのですが、なんとも、へっぽこい、笑。いったいどなたが訳したのか、「虎よ!虎よ!ぬばたまの…」の日本語としての美しさに驚嘆するばかりです。全文読みたいので、探してきます。

The Tiger
虎(直訳)

TIGER, tiger, burning bright
虎よ、虎よ、燃えあがる光明
In the forests of the night,
夜の森の中で
What immortal hand or eye
なにものがその不死の手、もしくは眼を
Could frame thy fearful symmetry?
形作れるのだろうか、そなたの恐るべき均整を?

(追記)
現代文と文語調で全文掲載されてるサイトさん見つけました^^
こちらで 存分にお楽しみください。

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