電波女と小さな世界 -56ページ目

昨日の続きのおはなし

五連勤…今日を入れてあと3日行ったら休み…休み…ああ…(´・ω・`)

早く休みたい…この間の10連勤+8連勤で田仲さんグロッキーです。うっかり死にたい。



今日のお話は、いっこ下のお話の続きです。

***




「…焼き芋?」
遠くから、でもはっきりと聞こえたその単語に僕は耳を疑った。彼女が「泣いてもいいですか」と言った時以上に耳を疑った。だって今夏だし。すごく暑いし。それなのに焼き芋!
「いしや~き~いも~おいも~」
独特のリズムに声、これは間違いなく石焼き芋だ。車に乗って石焼き芋屋がやって来る。
「…なんで…」
泣いている彼女がちょっと変な顔になった。笑おうと思ってそんな顔になっているのだと、長い付き合いの僕は分かった。
「あ、来るよ」
車は直ぐにやって来た。そして中にいるおじさんは、どう見たって僕らに期待をしているように見えた。夏の石焼き芋の匂いは、はっきり言ってそんなに心そそられるものじゃなかったけれど、僕はちゃんとおじさんに呼びかけていた。
「すいません、二つください」


嘘みたいに石焼き芋が出てきた。
後ろでは蝉が鳴いているのに、それなのに両手には熱々の焼き芋。おじさんはにこやかに芋を渡すと去っていった。彼女が泣いていたことには、何一つツッコまなかった。
はい、と言って一つを彼女に渡す。彼女は無言でそれを受け取り、皮をむく。僕は皮をむかずに、そのままかぶりつく。本当に熱い。でも、間違いなく焼き芋だ、これは。
真夏の焼き芋なんて、真冬のかき氷ぐらい可笑しいけれど、でもやっぱり芋の味がちゃんとしているそれはとても美味しかった。隣にいる猫舌の彼女は、懸命に息をふきかけて冷ましていたが、しばらくしてゆっくりとかじった。
ほわん、と湯気が立ち上る。夏でも湯気は見えるんだねと僕は言った。彼女は焼き芋を食べながら頷いてくれた。
そして僕たちは、汗を流しながら焼き芋を無言で食べた。最後の方にははっきり言って、とても美味しく思えなかったけれど、それでも僕らはちゃんと全部食べた。
食べている内に、ゆっくりと空は色を変えていく。青々としていた空は紺色に変わり、下の方にうっすら赤い夕日が見えている。それはとても綺麗だと思った。


「焼き芋、おいしかったね」

無言だった彼女が最後に言った。僕は笑って、そうだね、と答える。
そう言えば、彼女の涙はいつの間にか止まっていた。

僕が言葉で何も言わなくても、言葉で表せるようなカッコイイ行動をしなくても、彼女の涙は止まっていた。これはきっと、焼き芋のおかげなんだろう、と僕は思って、なんだか笑ってしまった。

どんな言葉を積み重ねても、季節はずれの焼き芋には勝てない。あの残酷な四文字の言葉も。
携帯に入っているメールを彼女はいつか消すだろう。僕は彼女が泣いていた時に感じた、言葉に出来ない気持ちをいつか忘れるだろう。彼女は新しい彼氏を作り、僕も彼女と離れる日が、いつか来るのかもしれない。


それでも、僕らは時々今日のことを思い出すのだ。

彼女が泣き出した時のように唐突に、夏の日差しに不釣り合いな焼き芋屋の声とか、夏なのに湯気が見えたこととか、だんだん芋がおいしくなくなっていったこととか。
それらは言葉を持たずに映像と匂いとそして少しばかりの切なさを持って僕らの前に現れるだろう。その時僕は、やっぱり、今日のようなあの思いをあじわうのかもしれない。

それはきっと、今日食べたあの焼き芋の味に、ちょっとだけ似ているんだろう。そう僕は思った。



熱と音、空を伝う』



お題は「repla」さまから。

大学時代の授業で提出したなんかの小説です。

言葉に出来ない思いとはどのようなものか、とかいう内容だったと思います。


ついうっかり

いつもいつも、落ち込んだ時とか忙しい時は、自分のことを書くことさえ忘れてしまいます。

アナコンダさんうっかり。


でもしっかりゲームだけはします。

今はうみねこのなく頃にをやっています。

「選択肢がでないよぉ><」と言っていたら、

「選択肢なんかほぼないぉ^q^」と言われました。ガッデム。


いつの間にか七月ですね…夏は好きだー。

暑い!死にそう!でも眩しい!この季節がなんだかんだ言って私は大好きです。

大好きな竹氏と会ったのも、暑い暑い夏の時期でした。なちゅかしい。



会社で泣いたり、竹氏になかなか会えなくて地団太踏んだりするけど私は元気にしようと思います。

また、小説を書くことを始めました。誰に見せるのか、誰にも見せないのか分からないけれど、大事な私のお話です。



今日の小説は夏のお話です。




ないてもいいですか、


と唐突に言ってから彼女は予告通り本当に泣き始めた。
それはもうぼろぼろと、だらだらと、ぼたぼたと落ちてきた。(なんか幼稚な表現だな)
眼はたった二つしかないのに、それも大きいと言ったって数センチのものなのに、どうしてこれほどの量の水を出すことが出来るんだろう。僕は改めて人体の不思議さに驚いた。
僕が驚いている間にも彼女の涙はとまらない。
漫画や小説などで、涙はとてもうつくしく流れるけれど、実際はそんなものじゃない。
小説の涙は重力を無視して流れる。漫画の涙は頬を伝ってそのまままっすぐ床に落ちる。
でも本当の涙は、重力を無視したり、まっすぐ床に向かうわけじゃない。頬を伝った涙は顎の先にたまって、そのまま一つぶとなって地面に吸い込まれていくのだ。
彼女は手で涙を掬うこともしない。顎の先からぼたりぼたりと、涙を落とし続けている。
ここは人通りの結構多い往来で、僕と彼女以外にもたくさんの人が通る。じろじろと見る人が全部じゃないけど、それでもやっぱりみんな、僕らを気にしているんだろう。過ぎ去る風が人の好奇心を告げていた。
これじゃあ、まるで僕が彼女に別れ話をしてるみたいだよ。違うんだけど。
通りを行く人を捕まえて突然説明してみようか。「彼女は僕の彼女じゃないです。だからこれは決して、別れ話をしているわけじゃないんですよ!」さぁ、通行人Aはどんな顔をするだろう。とりあえずドン引きすることは間違い無しだな。
なんてことを、ぼんやりと思っていた。


彼女の涙はモルヒネの効果でもあるのか、僕の頭はやけにぼんやりしていた。思うことは非現実なことばかりだし、どうでもいいことばかりだ。焦る気持ちとか困る気持ちとかは不思議と涌いてこなかった。彼女を可哀想、と思うことも。

今のこの気持ちを、なんて言葉に表したらいいんだろう。わからない。

時刻は夕方で、でも夏の夕方なんて無いにも等しいから空はまだ青かった。青々とする空の中心にある太陽が、僕らの肌をじりじりと焦がす。太陽の方が僕より焦っているみたいだ。それなら雨の一つでも降らせてくれればいいのに。冷たい雨に打たれて初めて、僕は素直に驚くことが出来るのかもしれない。素直に、彼女を慰めることができるのかもしれない。
そうすべきだと思った。そう思うべきだと感じた。それでも僕は動かずに、ただ滝のように流れ落ちる彼女の涙ばかりを見ていた。
声もあげずただ涙ばかりを落とす彼女は疲れないのだろうか。もしかしてこれは、彼女によく似た絡繰人形なのかもしれない。


メールが来たの、
と、また唐突に彼女は言った。それは呟きではなく僕に向けられたはっきりとした言葉だと気付くのに、少し時間がかかった。
メール?
僕は鸚鵡のように繰り返す。
そう、メール。
そう言って泣いたまま彼女は鞄を探って、しばらく探って、ようやく携帯をひっぱり出すと、プチプチといじりはじめた。携帯に涙が落ちるのが見えた。
これ。
小さな液晶画面に照らされた文字は『さよなら』とだけ書いてあった。
送り主の所に書かれた名前は見覚えがなかった。僕の知らない、遠いところにいる彼女の彼氏だろうとは想像ついたけど。
小さな箱に収められたこの唐突な別れの言葉に、彼女はこうして涙しているのか、と僕はようやく納得した。納得しただけで、気持ちはそれ以上先へは進まなかった。どうしてだろう?目の前にある『さよなら』の四文字はちかちかと光り続けているのに。たった四文字の残酷な響きの羅列。

「さ」、と、「よ」、と、「な」、と、「ら」。

本当に少ない言葉。でもそれが、彼女にここまで涙を流させるなんて、言葉とはなんて恐ろしいものだろう。

僕は何と言っていいのか分からなかった。言葉で傷付けられた彼女を、言葉で救えるほど僕は頭が良くない。かと言って、彼女の腕を掴んで「海に行こうぜ!」とか言えるほど僕はカッコイイわけでもない。さぁどうしよう?とりあえず、もうこれ以上ここに立っているのが何だか辛くなってきた。色んな意味で。



その時僕らを救ったのは、決して僕の頭良い台詞でもカッコイイ行動でもなかった。
それは、遠くから聞こえてくる「いしや~き~いも~」という声だった。


<明日に続く>


雨の降る日に

今日は誕生日です。

でも何歳になったか、時々本当に忘れます。

20歳過ぎてもまだまだ子供で、本当に早く大人になりたいです。

まあそんなことはいいやビックリマーク私は年を一つ越えるぐらい、生きれましたビックリマーク


今日は「間違った世界」ではなく、「今日ちゃんと大さん」という変なカポーのシリーズのやつです。




 時々空に手を伸ばしてみて、私は涙を流す。
いいや、本当は涙など流れていない。それでも、私の心はほろほろ泣いている。
悲しいのだ、空に手が届かないことがじゃない、大さんが今、私のそばにいないということ。
だからせめて、いつも大さんがいる隣じゃなくて、上を見るの。
そっちの方が、楽ちんな気がするでしょう?
瞬きをすると空が一瞬消えて、急に雨が降って来た。どうしてさっきまであんなに晴れていたのに、今はこんなにぼやけてしまって、ああ頬がこんなに冷たい。

すとんと私は、大さんと会う前の私に戻る。
ちっぽけで世界の中心は私だと信じ切っていた、ただのガキ。
誰も心に入れなくて、誰にも踏み込んで欲しくなくて、それでも一人はさびしいから、他人を睨んで生きていた。
ヒザを抱えてよく座っていた。そうすると自分の心音がよく聞こえる。風の音も、雨の音も大嫌いだった。自分以外が奏でる音が大嫌いだった。死にたいぐらい。

だからよく、雨の降る日に空を睨んで立っていた。耳には栓をして、無音の中立っていた。
そうすると、だんだん体が痺れてきて、周りの人々が避けるのが分かる。
それでもよかった。それがよかった。一人が心地よかった。私は死にたかった。
それなのにあの雨の日、大さんが私に傘をさし出したのだ。
私より強い眼の光で、私より強く私のことを睨みながら、大さんは低い声でこう言った。
「オレの店の前でつったってんじゃねえ。クソガキ」


雨がやんだ。


「おい、今日。買い物終わったぞ」
「…遅いよ」
頬をふくらませ私は大さんの腕を掴む。ねえねえ、遊んでよ。お願いだからもう一人にしないでよ。
「しょうがないだろ。オレはコーヒーは自分一人で選びたいんだ」
そう言いながらも、私の手を振りほどかない大さんが、私はほんとうに好きだ。
好きで好きで好きで、一緒にいるのが嬉しくて苦しくて私はぐしぐしと大さんの袖に顔をこすりつけた。
「!てめ、鼻水つけんな!」
「だって花粉症なんだもん」
にへらと笑い、私は大さんを見上げる。
花粉症だから、鼻水と涙が出ていてもおかしくないよね?

ああ、それでも。そうだなと笑って私の涙をぬぐってくれるこの人が、私はほんとうに大好きだ。