ドアの小説
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あとがき

この度ドアの小説を読んで頂きありがとうございます。



『雨の音色』はある某バンドのサイトを読んでいる内に出来上がってしまった話です。もしかしたら勘づいた方がいらっしゃるかもしれませんが…ファンの方々そして某バンドの方々すみません!



『十字架のピアス』はものすごく楽しく書かせて頂きました。友達がこの話はおもしろかったと言ってくれてすごく嬉しかったです。あと、色々こうしたらもっとよかったとか、色々感想を緊張して聞いていたのですが(笑)客観的に言ってくれて今後の参考にしたいと思います。

ただいま第三作目を制作中です。

ど素人で、まだまだ未熟で読み苦しいところがあると思いますが、これからも温かい目で見守って頂けたら幸いです。

よろしくおねがいします!うぃっしゅ!




ドアより

十字架のピアス~4~完

僕と沙羅は一定の距離を置いて仲良くなった。バイトの間だけ、僕は沙羅に会うことができた。深夜、暇な時は二人でよく話しをした。僕がここまで女に対して心を開いて話しをしたのは、沙羅が初めてだった。
彼女は僕の話しに相槌を打ち、僕からの質問をした以外は多くを語らなかった。そんな沙羅がもどかしくて、ある日バイトが終わり彼女を引き止めた。


「疲れてるに悪いけど、この後時間ある?」


彼女は少し考えて携帯電話を取り出して電源を切った。


「なんで電源を切ったの?」


沙羅は携帯電話を鞄に入れた。


「わたし、仕事以外は携帯電話を切りたいの。自分の時間を邪魔されたくないから。変かな?」


気持ちは分かる。けど、突然沙羅の声を聞きたくなった時、逢いたくなった時、いつも流れてくる機械的な女の声のアナウンスが流れたときを思い出したら僕は思わず「変だね」と言いたくなった。


「いいよ、時間あるから付き合うよ」


僕と沙羅はお腹が空いていたのでコンビニで余ったおにぎりや飲み物を手に、太陽がまだ顔を出さない午前5時過ぎにコンビニを後にした。


「どこに行くの?」


沙羅が隣にいる事だけで浮かれていて僕は、この先の事は何も考えていなかった。

僕は沙羅にバイクのヘルメットを渡し、僕はバイクに跨がった。沙羅は後ろの座席に座り僕の腰に手を伸ばした。彼女は無言だった。バイクを飛ばすと彼女が腰をさらに強く抱きしめてきた。
僕の心臓は飛び上がるほど高鳴りそして彼女をさらに愛おしく思えた。


着いたのは二人が初めて出会った神社だった。夏の太陽が早くも顔を覗かせかせていた。陽射しを避けるため僕たちは社の後ろの林に入りちょうど腰を下ろせる石で出来たボコボコの椅子のようなものに座った。沙羅は眠たいのか何度も欠伸をしていた。


「なにか話しがあるの?」

食べていたおにぎりをほお張りながら沙羅が聞いてきた。


「いや、何もないよ。ただ沙羅とこうして一緒にいたかったんだ」


自分が吐いた台詞に気持ち悪さを感じたが、それ以上にその言葉は自然と出た気持ちだった。


「ねぇ?今から彰くんの部屋に行ってもいい?」


沙羅からの意外な言葉に食べていたおにぎりが気管に入りむせた。
すると沙羅が僕の背中をさすってくれた。


「あ、ありがとう…」



沙羅を玄関の前で少し待たせている間、僕は部屋の中を急いで片付けた。なんとなく綺麗になった部屋を見渡し、玄関の扉を開け沙羅を部屋に招き入れた。


「綺麗に片付けたね」


「あはは、ばれたかぁ…日頃掃除とかしないから一気に片付けてよかったよ」


沙羅は笑ってから、僕の部屋を見渡した。僕はその間冷蔵庫からひんやり冷えたジュース取り出してテーブルに置いた。沙羅は開け放した窓をじっと見ていた。


僕は緊張していた。好きな子が自分の部屋にいるなんて。小学生が抱く淡い初恋のように、僕はドキドキしていた。


「沙羅、ジュース飲む?」

僕の声が聞こえていないのか沙羅は窓に立ちずっと外を見ている。


「沙羅?」


「ここからあの神社がよく見えるのね」


沙羅は振り向かず言った。


「彰くんは、あの夜起きた事件の時どうしてた?」


彼女の質問はいつも唐突だった。けれど、僕はずっと胸の中にためていた秘密を彼女に教えた。彼女だけには聞いてほしかった。

近くのコンビニから出るとき銃声を聞いたこと。そして、今沙羅が立っている場所から、神社の屋根に人が立っていたこと。

沙羅は相槌も打たずただ聞いていた。僕に背を向けて。

話しが終わると沙羅は隣にやって来てジュースを開けてぐいっと一気に飲んだ。そして僕を一度も見ずにテーブルの隅にあった、十字架のピアスを取り眺めていた。


「このピアスどこで拾ったの?」


今までの僕の話を一気に飛ばして聞いてきた。


「あの神社の林の中だよ」

沙羅はピアスを目に入るぐらいに近づいて見ていた。

「彰くん…」


僕は沙羅の言葉を待った。なにを言ってくれるのか少しだけ期待した。その時、沙羅は僕の身体を包むように抱きしめてきた。


僕の心臓はさらに激しくなった。


「もう一つだけ聞いていい…?」


「何?」







「貴方の本当の名前は?」


沙羅がその言葉を発した瞬間、僕は一気に力が抜けていった。

そしてカチッという音が耳の上で聞こえた。



「このピストルの意味が分かる?」


「沙羅、やっぱり君だったのか…?」


「そうよ。あの晩貴方がわたしの姿を見ただけならわたしは貴方を殺しはしないわ。
けれど、貴方は次に自分にくるかもしれない恐怖に怯えていたはず。だから必死になって、事件を探った。そうでしょう?井上雅弘くん」


「始めから全部知ってたのか…?」


沙羅が鼻で笑った。


「わたしは警察庁の秘密人間兵器。武器、武術を特訓させられてきた。けれどわたしが唯一ほかの人間に違うところがあった。それは…サイコメトリよ」

彼女は僕から離れた。相変わらずピストルをこちらに向けていた。

十字架のピアスを右耳につけた。ピアスはやはり彼女のものだった。左耳にも同じ十字架のピアスがちらっと見えたからだ。


「サイコメトリ…?」


「誰かの手に触れたりするだけで、その人の過去が見えてしまう。神社で貴方とすれ違うとき貴方はわたしが落としたポーチを渡してくれたのを覚えてる?」


そうあの時彼女と一瞬手が触れた。


「あの時少しだけ貴方の過去を見た。それを見て驚いたわ。まさか会ってもいないわたしが映ってたなんて…」

さらに続く。

「一年前付き合っていた女性とトラブルになり刃物で殺害。彼女の身体を切断し、それを段ボールに入れて彼女の家に送り付けた。その後貴方は名前も顔も変え、ここk市に引っ越してきた。」


「じゃあ…沙羅は初めから俺を…狙っていたのか?あのピアスも、バイトも全部…嘘だったのか?」


彼女が左手でピアスを触った。


「まさか、貴方が殺人犯だったなんて思わなかったわ」


「えっ…?」



「貴方のバイクに乗るまではね」















「何故奴を殺さなかった?」


相変わらず嫌な声だ。


「ピアスから全て聞いていたぞ。自分の素性を自分からばらすとは、沙羅、自分がしたことが分かっているのか?」


「はい」


「奴はいつか刑務所から出てくるだろう。その時、奴はお前を公にばらすかもしれんぞ。裏に警察が動いてると分かったら…」


「大丈夫ですよ。彼はそんな事はしません」


「何故分かる?」



「あの人は、彼はわたしを愛しているからよ」




「ふっ…相変わらず怖い女だ。おまえは。まあ、よい。沙羅、次の仕事だ」







「りょーかい」

十字架のピアス~3~

僕は海から帰った翌日から40℃近い熱を出し、悪夢のような夢を見た。

おかしい…

熱が身体も心も蝕んでいく。唯一の頼みの隆二とも連絡がつかない。僕はこのまま死んでしまうのではないかと本気で思った。身体が寒い…寒い…頭が…

僕は意識を失ったらしい。眼を醒ますと布団のシーツが汗で大きな水溜まりを作っていた。大量の汗をかいたせいか、熱がだいぶ下がったみたいだ。頭がしっかりしてきて身体が軽い。

今は朝の8時。僕は布団から出て水をがぶ飲みした。水分が体中に流れ込む。買っていたパンと牛乳を飲みながらテレビをつけた。朝からのニュースはどれも暗い。あの神社の事件ももう報道されなくなっていた。

携帯電話の着信音が鳴った。着信音相手は隆二だ。


「もしもし?」


「あ、もしもし、ワリィな、昨日電話もらったのにでれんくて…」


「あぁ~…大丈夫、大したことじゃなかったし」


「そう?じゃあさ…」


僕はその後隆二がまた新しい彼女が出来たと報告され、昨日は彼女に会ってたとまたご親切に報告された。

隆二の電話を切ると、バイト先に連絡をした。店長にまだ熱が下がらないといい、休みをとった。

熱が下がったおかげで僕は近くのコンビニに行き食べ物を調達した。その時ばったりと優香に会った。あの告白以来、優香とは会っていなかった。優香は僕を見つけるなり名前を呼んで歩み寄ってきた。

「久しぶり」


「あぁ」


「元気だった?」


「ん、まあ」


「なんか顔色悪そうだけど…」


「あぁ…」


僕は昨日から熱があると言いかけたが、これ以上言うのをやめた。彼女に要らない同情をされたくなかったからだ。


「バイトあがりだからかな。俺今から帰って寝たいから。じゃあな」


優香の返事を聞かず僕はこの場を去った。アパートに帰り僕は買ってきた食材を冷蔵庫に入れると布団のシーツ剥がし洗濯機にかけ、布団を小さな窓の縁にかけて干した。暑い陽射しに僕は目を細め、直線に位置する神社を眺めた。その時一人の女が神社の中を地面に這ながら歩いていた。なにか探しているようだ。

黒い長い髪が見える。黒い髪?長い…?

僕はテーブルに置いていた十字架のピアスを持ってアパートを出た。

神社にたどり着くと僕は階段を慎重にあがった。閑散とした神社にはさっきの女の姿はなかった。僕はひどい汗をかいていた。熱もまだあるというのにさっき無我夢中で走ってきたからだ。

僕は林の方に向かった。その時、黒い長い髪の女がこっちを見て立っていた。黒のキャミソールに薄手のカーディアンを羽織っていた。太ももまでの黒のズボンに黒びかりするブーツを穿いていた。

顔を見て僕は思い出した。ここで起きた事件翌日、階段ですれ違った女だ。

女は僕をじっと不審な顔で見ていた。耐え切れず僕は話した。


「君、ここで何してるの?」


女は黙ったままだった。


「あのさ…」


「探しもの」


「探しもの?」


「…ピアスよ」



ビンゴ。



僕は片手に持っていた十字架のピアスを女に向けた。握ぎりしめていた手を開いた。


「もしかしてこれ?」


女は僕の手を見た。そして一歩一歩近づいてきた。女は僕の手の平からピアスを取ると僕の手の平に返した。


「違うわ」


僕の予想とは違う答えに僕は一気に恐怖から逃れた。もしこれが彼女のであればあの殺人に彼女は関与しているはずだ。僕はなんの根拠もないそんな回答にたどり着いていたのだ。

女は林を通り過ぎまた表の神社を探し出した。僕は一緒になって探した。


「どんな形のやつなの?」

「…アクアマリンが入っている丸いピアスよ」


女の声が少しずつ和らいだ口調になった。


「ほかの場所とか探してみた?」


「えぇ、でも思い当たるところ全部探したけどどこにもなかった。だから最後にここの神社を探してるの」

「そっか」


僕は青色に輝くものを必死に探した。彼女も必死になって探していた。しばらく二人は無言で探した。


神社のお賽銭箱の所を僕は探した。その時、何かを踏んだようで僕は慌てて足を上げた。そこにはアクアマリンが入ってある小さなピアスが落ちていた。


「あった!」


「本当!」


彼女は左と右の色の違う目を輝かせて僕の元に駆け寄ってきた。僕は丁寧にピアスを拾い彼女の手の平に乗せた。

彼女が左耳にピアスをつけた。そして僕を見て初めて笑顔を見せた。


「ありがとう!」


その笑顔はこの世とは思えないくらい美しく可愛かった。

今まで誰ひとり愛せなかった僕はその時一瞬にして彼女に惚れてしまったのだ。





南川沙羅。歳は僕より二つ下の19歳。仕事はしていないが時々臨時のバイトをしている。


「どんなバイトしてるの?」


「ん~色々。たまに嫌な仕事もあったけど…貴方は?」


「俺は夜からコンビニで働いてる。大学の近くにあるところ」


「楽しい?」


「別に…ま、生活するぐらいしか働いてないし楽しくはないけど、仲のいい友達もいるし、苦ではない…かな」


「ふ~ん。ねぇ、そこってさバイト募集とかしてないの?」


「えっ?」


「だって一度働いてみたかっただぁ、コンビニ」


「店長に聞いてみるよ」


「そう!やった、ありがとう」


沙羅は19歳にしてみればかなり大人の匂いがした。でも、笑うと少女みたいに八重歯を覗かせるときはやはり19歳に見える。

僕は彼女の連絡先を教えてもらった。そして僕たちは別れた。



翌日、バイト先の店長に沙羅を紹介したらさすがの店長も彼女の目に驚いたようでしばらく瞬きもせず沙羅を見ていた。


「履歴書を書いてきました」


店長が沙羅が出した履歴書を上から眺めるように見ていた。


「うん、いいだろう。君を採用するよ」


「ありがとうございます」

沙羅は僕にウィンクをした。それだけで僕の心臓はかなり速度を増していた。


沙羅は僕と同じ21時から5時までバイトを希望し、さっそく店長は明日から僕と沙羅と二人でシフトを組んだ。僕が沙羅に教えるように言われた。


沙羅はそれから用事があると言い僕と別れた。彼女ともっと一緒にいたかった僕は、さっき別れたばかりの彼女に携帯電話で電話をした。

しかしいくらかけても「ただいまおかけになった電話は電波の届かない場所か、電源が入っていないためかかりません」とアナウンスが流れるばかりだった。

アパートに帰り僕は十字架のピアスをとり布団の上に寝転がった。沙羅を一瞬でも犯人と疑ってしまった。けど沙羅はなんであの事件の翌日あの場所に行ったんだろう…僕はまた沙羅を疑っている自分に腹を立てた。




僕は翌日の晩、バイトで沙羅に手取り足取り教えた。彼女は覚えるのが早く僕がレジをしている間も教えた通りに棚に品物を陳列していた。彼女が時々僕を見る目が昨日とは違っていた。しかしすぐに笑顔を見せた。

彼女の姿ばかり目で追っていた。仕事が終わり僕は彼女を家まで送ろうと話したが、優しく拒否された。


そしていつものように電話は繋がらなかった。
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