新たな証拠の出現と言う「有り得ない展開」を実現してみせたジョンの演出は、本人が想像していたよりも多大なインパクトを法廷に響かせた。

マスコミは「魔術師ケンブリッジ氏のマジック炸裂」と公判の行方を見守っていた夕方のニュース番組で少しオーバーに表現している。


いかなる事件においても、有り得ないタイミングで新たな証拠や新証言等を導き出し、依頼人を救うジョンはいつからかマスコミから「魔術師」と呼ばれる様になっていた。

勿論、それら全てはジョンの演出であり陪審員に強烈なインパクトを与える為に、証拠品等の提出タイミングはジョン自らが綿密に計算している。


アタッシュケース片手に裁判所から出て来たジョンにいつものようにマスコミが殺到する。

「すみません!今回の事件についてコメントを!」
「新たな証拠を提出したそうですが、勝算は有りますか?」

ジョンにマイクを向けて、マスコミ各社は矢継ぎ早に質問をぶつける。
そのマスコミの有無を言わさぬ取材にうんざりしながらも、ジョンは一息ついて静かに語り出した。

「私は弁護士としての職務を果たすだけです。すみません、仕事がありますので失礼。」

自身を取り巻く取材陣を押しのけて足早にその場から歩み去るジョン。

当然、マスコミ各社の取材陣は後を追うがジョンはそれを無視してさっさと車に乗り込み立ち去ってしまった。

「第1級殺人と言う非常に注目度の高い今回の事件ですが、(魔術師)ジョン・ケンブリッジ氏は今度もマジックを見せました。審理がやり直しとなり、陪審員もこれまでの評価を変えざるを得なくなるでしょう。公判佳境での逆転劇、果たしてケンブリッジ氏の無敗神話は続くのでしょうか?以上、裁判所前からXYZテレビ、ダイアン・シェパードでした。」

リポーターがカメラに向かって少し演説じみたレポートをしている。

しかし、ジョンが人前に出るのはこの日が最後になるとはマスコミ関係者の誰も想像しなかっただろう。
「この証拠からするに、被告人が現場に居たのは明白であります。」

無機質な部屋、すなわちこの場所は「法廷」であり今1人の男が第1級殺人容疑で裁かれようとしている。

「・・・・次に殺害に至る背景ですが・・・・」「異議あり!!!!」


検察官が声高く裁判長に向かって話そうとするその声を遮り、1人の男が裁判長の前に踊り出る。

「被告人は検察が提示した時間に現場には居ませんでした。それを証明する為に(証拠D)を提出します。」


高級ブランドのスーツに身を固め、威勢良く飛び出したこの男・・・・

すなわち、被告人の弁護を担う弁護士だ。

「被告人には事件当夜、確固たるアリバイが有ります。」裁判長に証拠品を提出しながら、弁護士「ジョン・ケンブリッジ」は両目を爛々と光らせて言葉を続けた。


その姿を見て被告人の男は満面の笑顔をたたえ、そして検察官と裁判を傍聴していた刑事は「有り得ない」と言った表情を浮かべ、ただ呆然としている。


そしてざわめく法廷。


「静粛に!!」


木槌を勢い良く降り下ろし裁判長がざわめきを止めるその瞬間、我に帰った検察官が顔面を紅潮させながら裁判長に詰め寄った。

・・・・有り得ないのだ。アリバイを示す証拠など。

刑事も同じ考えだろう、椅子から立ち上がり検察官を見つめている。

「裁判長!!!!弁護側の提出した証拠は根拠が無い物です!!!!」

検察官の荒い声に再び法廷はざわめき始めた。

「静粛に!検察側、意見が有るなら正式な方法で述べなさい!」

「しかし裁判長!」

「くどい!まだ続けるのなら法廷侮辱罪を適用しますよ!」

裁判長にきつくたしなめられた検察官は続く言葉を失っている。

「新たな証拠が提出された事を受け、今法廷は審理をやり直します。検察側及び弁護側は今法廷が終わり次第、私の部屋に来る様に。これにて閉廷!」

どよめきが起こる中、ジョンは被告人に向き直り小さく親指を立てて見せる。
そして拘束された被告人のもとに歩み寄ると満面の笑顔を浮かべ話し出した。

「必ず無罪を証明してみせますよ。安心して下さい。」

「評判通りだ!お願いしますよ先生!」

被告人の男は「法廷にて未だ無敗」と謳われるジョンの仕事に希望を見出だし、暗かった顔は今や天にも上りそうな表情を見せている。

「裁判長に呼ばれていますので失礼します。」颯爽とその場を後にするジョンの背中を「そんな馬鹿な」と言いたげな表情で見つめる検察官と刑事。


全ては日常の1コマでしか無いだろう。

しかし、殺人鬼の仕掛ける罠は既に獲物であるジョンを待つのみに至っている。
ご存知の方々も多いと思う、「ソウ」。

殺人鬼、「ジグソウ」の仕掛ける残酷な殺人ゲームに主人公が悩まされ最終的には無残な結果になる映画です。

近々、あの映画を僕なりにアレンジした小説を書こうと思います。


あくまでも、「映画のソウに捧げる外伝」でありストーリーは本編にはなんの関係も無い小説です。

映画を造った監督さんをリスペクトして書く物であり、あくまでもファンが造った小説だと理解した上で読んで下さい。


ストーリーは既に完成しており、後は書くだけですが小説を書く前に前もって以上の事を述べておきます。