12月。

クリスマスが近づき、街はクリスマス・ムード一色に染まっている。

サンタに扮装したショッピング・モールの店員が特別セールの看板を片手に街行く人々に笑顔で手を振っている。


「今年のイヴはゆっくりしよう。」書類の整理を終えたジョンがコーヒーを飲みながら窓から外を眺めながら呟いた。

子供の頃から、クリスマスが近づくとサンタに宛てた手紙を書きイヴの夜を心待ちにしたものだ。

今となってはその手紙はジョンがプレゼントに何が欲しいか調べる為、ジョンの両親が書かせていた物だと分かっているが当時は「サンタクロースに直接手紙が届く」と言う両親の言葉を信じていた。

「懐かしいなぁ・・・・」

少年時代を思い出し、出来ればあの頃に戻りたいとも考える。

ドアをノックする音にふと我に帰り、「どうぞ」と声をかけるとナンシーがオフィスに入って来た。

「ではお先に失礼します。」

夕闇が迫る時間、仕事を終えたナンシーが帰宅する前の挨拶をする為にジョンの元に訪れる。


「お疲れさん。気をつけて。」

「分かってます。先生こそ予約した時間に遅れないで下さいね。」

「勿論さ。今日はありがとう。必ず埋め合わせするよ。」


ナンシーの援護射撃が無ければ、一体どうなっていたか。

妻は激怒し口もきいてくれないだろう。

その場面がふと頭をよぎり、自身の幸運を神に改めて感謝するジョン。

「それではまた明日。」笑顔でオフィスのドアを閉めるナンシーを見送り、まだ残っている仕事に取り掛かる。


「そろそろ終わりにするか。」
ナンシーを見送って数時間。外はもう真っ暗だ。

上着に袖を通し、ブリーフケースを持ち誰も居ないロビーを歩く。

事務所のドアを施錠し、携帯を確認しながら駐車場に向かう。

いつもと同じ。

何も変わらない。


そこに最大の隙が有った。

車のドアにキーを差し込みロックを外そうとしたその時、車の影から勢い良く大きな影がジョンを襲う。


「・・・・!!!!」


叫ぶ間もなく首に注射針を突き刺されその場に倒れ込むジョン。


真っ黒なパーカーに豚のマスク。


薄れ行く意識の中、それがジョンが記憶している最後の光景だった。
冬の寒さが、都会の雰囲気をグレーに染める。

空を飛ぶ鳩の小さな声も何処か物悲しさを醸し出すオフィス街の一等地に、ジョンの事務所がある。


事務所の駐車場に愛車を止めて、携帯の留守電に入っていたメッセージを確認しながら事務所のドアを開けると受付のナンシーが慌てた様子で書類をまとめ出した。

「お疲れ様です先生。Faxで書類が届いています。」

ナンシーがそう言いながらジョンに差し出した書類は大型のクリップに固定されてはいたが、ぶ厚い雑誌の様な厚みだ。

公判に必要な情報では有るが、その書類の隅々まで目を通すのは骨が折れる。

足早に自分の書斎に向かうジョンに向かって、「先生、今日は大事な日ですよ。準備は大丈夫ですか?」と少し飽きれ気味にナンシーが言葉を投げかけた。

「・・・・?」「ハァ・・・・やっぱり忘れてる。」

立ち止まって何の事かと考えを巡らせるジョンに、「結婚記念日ですよ先生。」と苦笑いしながらナンシーが答えを提示した。

ナンシーの言葉に凍りつくジョン。すっかり忘れていた。今朝、家を出る時も妻に「今日は大事な日」と言われ「勿論、分かってる」と答えた。


レストランの予約すら忘れている。

プレゼントはかろうじて事前に用意していた事がせめてもの救いだろう。

「ああっ!どうしよう!」

真っ青になりながら焦るジョンに、「レストランなら押さえておきました。」とナンシーが高級レストランのパンフレットをジョンに差し出す。

「さすが我が事務所自慢のスタッフだ!ありがとうナンシー!!」

ナンシーのフォローに救われ、最大のピンチから脱出したジョンの顔は安堵の表情を浮かべている。

「1つ貸しですよ先生。」笑いながら自分のデスクに向かうナンシーに向かって投げキッスを送りながら携帯を取り出すジョン。

「あぁ、ステイシー。今日はレストランで夕食を取ろう。ほら、少し前に行ったあのレストランだよ。」

ジョンは書類を脇に抱え、電話をかけながらオフィスに向かう。

「やれやれ」と言った感じに小さく首を振るナンシーのパソコンのキーボードを叩く音がフロアに響いていた。
(´;ω;)・・・・


オカンの屁の臭さが化学兵器のレベルに達しようとしている。


臭いんだ・・・・

そして目にしみるんだ・・・・

・・・・ど-しよう。