ヤマユリワラシ ―遠野供養絵異聞― (ハヤカワ文庫JA)/早川書房
¥756Amazon.co.jp

【「死者を描け、生者のように幸せに」
孤独な絵師と山百合の童女が創る、
亡き人々の肖像、供養絵師の物語


嘉永三年(1850年)南部藩、遠野。
城下に住まう外川市五郎は出世や武道よりも絵を好む、風変わりで孤独な青年。
ある日、深紅の山百合を探して迷い込んだ山里で、彼は座敷童のような少女、桂香と出会う。
やがて共に暮らし始めたふたりは、流行病や貧苦で世を去った人々に“ありえたかもしれない幸福"を刻んだ板絵を生み出していく。
後世に「供養絵額」と呼ばれる死者たちの肖像を遺した絵師・外川仕候を描いた歴史ファンタジー。】
(アマゾンから引用)

■ 感想とかネタバレとか


きれいな物語だった
のであんまり言いたいことが浮かばない

イチゴローさんが、なんというか透明? というか薄ぼんやりとした人だった
もっとぐちゃぐちゃのどろどろにできたのにならなかったのは作者さんの書き方なのかイチゴローさんが主人公だったからなのか
桂香が主人公だったらたぶんもっと苛烈な物語だっただろう
あの子はまさにイチゴローさんにとって血の色で命の色である〝赤〟だった
ものすごい強烈

東北の話なので飢饉・一揆・仙台藩あたり
目を潰された女性に、死んだ人間を旗印にする男に、化け物とされた娘
妻子と無理心中をした跡取りや、生涯を外川家に使えた人や、妻を亡くしたばかりの夫

外川家のお家なくなっちゃったんだけど。
最後まで引き継ぎたかったのは「絵」であって「武士」ではなかったな
桂香が死ぬかとハラハラしてたら違った。ああいや、死んでるのかな。
あの子は3年間人間とみなされず、やっと人間になったと思ったら、今度は望んで死者になるのか、と思うと、ホントすげえな桂香。


いちごろーさんはいちごろーさん! て感じ(決して「市五郎さん」ではない)
でもこういう人ほど頑固だから嫌だ
最後に桂香が赤い山百合を手折るのがすごい好きだ あれはどちらの命だったんだろう


澤見彰さんでアマゾン見てたら「乙女虫」があって「これ読んだぞ!?」てなった。
2009年の光文社だわ……ああー……あった、あったな…… ああそうか一緒の人だったのか

装画はげみさん!
好き! いいなーこの表紙。
どこかで見た、と思ったら、感想書いてないと思うけど「お近くの奇譚」もこの人なんだ! やっぱり好きらしい。