短劇/坂木 司
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【たとえば、憂鬱な満員電車の中で。
あるいは、道ばたの立て看板の裏側で。はたまた、空き地に掘られた穴ぼこの底で。
聞こえませんか。何かがあなたに、話しかけていますよ。
坂木司、はじめての奇想短編集。少しビターですが、お口にあいますでしょうか。 】


■ 全体的な感想

335ページで27話。
1話平均12ページ前後か、さくさく読めるし連続性もないのでどこで切ってもどこから読み始めても大丈夫でした。
まさに短劇。
ダークなのが多かった。ほんわかもあれば冷ややかなのもあり、地獄じゃねぇのってくらい報われない恋や、皮肉が利いているのも。
オチがついているのもあれば、淡々と終わっちゃって「ここで終わり…?」といいうのもあったけど、タイトル聞いて内容思い出せるのであれば結構面白かったのかなー。
装丁は石川絢士さん。

■ 以下各話語り
タイトル+数行感想。掲載順ではありません。

「カフェラテのない日」
読み終わったあとに「こんなんだったらいいなあ」と思った。

「物件案内」
ちゃんとオチてた! よかった! ただし、男性を「物件」とするのは一昔前の感覚。

「最後」は痛烈でいいですね、掛け言葉は好きー。

「並列歩行」
…うん、ハイになっている人間はなにをしでかすか解らない。

「ほどけないにもほどがある」のお兄さんはずっと緩めに巻くんだろうなあ、仕事よりも命が大事。

「ゴミ掃除」はオールオッケー、あたしこの兄さん好きかも。
殺される覚悟もないのに殺している人間なんて大嫌い。サディストの集い。

「穴を掘る」
………うーん、まあ詰まらなくはないけど、ブラジルはやっぱり古いかも。マグマだよね。(小学校のときに来た教育実習生が言ってたのを思い出した)

給湯室にある物言わぬ「目撃者」、浅ましい女の人のお話でした。後味悪い。

すぐ解っちゃった「MM」ですが、実際オンとオフの知り合いが重なるって凄いと思う。

「雨やどり」
切なかった…!! パイナップルの花束。痛い痛い痛い!
このお兄さんが泣き喚くかブチ切れるかのシーンを読んでみたい。

「幸福な密室」 結構「あれ?」と思ったのでなんとなく。便利な人だなあ。

「迷子」
衒いない「人を信用しているんだろ」の台詞が……!! いやああああ!(誰もお前のことを言っているわけではない)
迷ったら人に道聞きません か!
迷子になろうとして迷子になった人。「詰まらない」人ってつまり誠実でしょ?というのをどこかで読んだとき、ああ、と納得しちゃった。まあ詰まらないのが面白いときもあるしな。

「ケーキ登場」
書き方が面白かったなー。誕生日を祝われる女性、料理人、娘に会いに来た父親、ハムスターを探す女の子、テーブルの下で待機するロマンチスト。
一瞬の暗転。どうなることやら。

「最後の別れ」
人類で最後の二人となった兵士達。さてどうするか、というお話。
どざえもんは出来ればわたしも避けたいねえ。水死は辛いってよく聞きますし。
知らないことが幸福であることの典型例。

「しつこい油」
オチが上手くない上に後味悪い。
しょうもないなあと思いながら読んでました。
恋愛の失敗談は他人事の極みなのでかなりどうでもいい(笑)
しつこいのは視点のお姉さんでしたねー。しかしちゃんと実験しているあたり物凄い好きですよ。

「怖いのは」
老人2人の会話。よく解らんかった。

「変わった趣味」
ロボット。メイド服って…そこまでいいもんか……。
うーん、あ、女性が言う所の白衣とか眼鏡とかと一緒のカテゴリ?
名前が出てきてないのに話が出来る。

「最先端」
ネイルアート。なんで爪に装飾するのかが全く解らない。
そりゃまあ見た目は綺麗だが、細かい作業するときにやりにくくないか。
他人引っ掻いたりしたらどうすんだろう と思うので うん…まあ。
ちゃんと一周していました。(からから笑いながら)お断りします だ。
あ、ペディキュアならいいのか。

「肉を拾う」
オチてねえ! よ…な。多分。
とかげの尻尾きり。脅かす役のマスク兄ちゃんと、拾う側の考えない人。

「壁」
ホラー。
さっさと引越しなさい。

「試写会」
この殺され方……凄い……いいな……。
会社を辞めて妻には逃げられ 当たったのは短編映画の試写会。
数人ごとで集まってのディベート形式、決めるのは短編それぞれに出てきた人間の値段。
ドラマが打ち切りで終わるみたいに不要物としてぶっつりと終われるんだったら。
うんまあ女子高校生の短編映画はなかったのね? とも思った。

「ビル業務」
あ、いいな、これ。
迷路かと思ったら就職先決定 でした。あと住む場所も。
上品なご夫婦だ。お金の使い方が綺麗な人って凄い良いなあ。

「カミサマ」
自殺衝動を抑えたモノグラフ?
ちょい哲学的かも。人が宗教を作る理由、縋る先、数多くある神話と神さま。
わたしの中に「絶対的な価値」としての「神さま」はいないが、いたとしても縋る対象ではない。
切羽詰っているときに助けてくれるようなものを「神さま」とはしないだろうな。

「秘祭」
笑った! 凄い笑った! こーれは確かに……円卓の騎士とか出てきちゃって「何事!?」と思いました(笑)
そりゃ鍵もかけるわ。裏切り者!と言いたくもなるわ。長生きもしたくなるわ。
日記と肉親にはご注意を。

「眠り姫」
再生と死滅を繰り返す眠り姫。
冒険家と人のいい青年と国からのお使い。
生と死は分かち難く結びついているらしいですが だからって死までの道が同じであるはずがないわ。
勿体無いなあ。どうせ1回しか生きれないんだから重ねるよりも先に振り切っちゃえば良かったのに。

「いて」
なんか気持ち悪いもの。喋るもの。きのこ? 不気味な。

「あとがき」
これもまた、ひとつのお話。前半「はあ?」と喧嘩を売りそうになっちゃいました(笑)
坂木司の作品で好きなのもあるけど、坂木司さん自身が好きとは言いません。

文庫版が出たのでぺたり。追記H23年6月18日

短劇 (光文社文庫)/坂木 司
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