結晶物語 4 (4) (新書館ウィングス文庫 113)/前田 栄
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【人間の、あやかしの、強い強い想いが染み付いている―――。
そんな曰く付きの品ばかりを扱う質屋の主人、凍雨。
彼は人の感情の“結晶”を、嗜好品として舐め味わうという。
魂を持つものには劇毒となり、触れることも儘ならぬ結晶。
――それを三つも奪われた!? しかも相手は、人間!!?
当然のごとく後を追うハメになる黄龍、人間であるはずなのに不思議な力を使う謎の女。
「魂のえきすぱーと」を自称する妖怪·東風も現れて、それぞれの想いが絡まり合う追走劇は、やがて――― ……?
前田 栄の紡ぐ当世あやかし冒険譚、胸をふるわす完結巻!!】


兄さんが、怒ると、とてもとても怖いことが解りました。
青龍の逆鱗も怖ろしいですが、黄龍の逆鱗は、もっと怖ろしいです。
つくづくこの人が感情のコントロールに長けていてよかったと思います。

最終巻たるこの巻は、シリーズを通して言われてきていた義妹ファランの形見たる結晶。
クリームソーダ味。質札はホワンロンが持っていますが、労力を預かり賃とする代わりに、他に流さず凍雨の手元に置かせ、自分が死んだあと一緒に葬って欲しいとしたものです。
具現化させたときはペパーミントグリーンの鳥。


妖怪の腹の中で育った“人間”の女性と、彼女が扱える力と、結晶を入れる袋。
職業は人形師。人を模したそれに偽魂を入れて動かします。
彼女を愛し産んだ妖怪と同族の東風。妖怪の名前が東雲なのも上手いなァと思いました。
白夜さんはほとんど出てきませんでしたが、美鈴さんは凍雨のお母さんとして物語に影響します。
なんかもう、それを言ったら全部終わっちゃうよ……というような「何故妖怪が人間に惹かれるか」もありました。まぁ変化していくそれが魅力的でなければ結局意味はないのでしょうが。

ファランが手放したくて手放したくなかった感情。
イラストでフッツーに妙齢のお姉さんだから驚きました。
もっと小さい子かと思ってた。

凍雨がホワンロンとの繋がりに違和感を感じるのも可愛かったですし、それに微笑む白夜さんもお父さんらしかった。
ホワンロンの中に戻された結晶もしっかりと引っ張っていて、兄さん……!と思いますが、丁度凍雨の名前と対になっているのね。


出てこないのかな、と思っていたら、玄武もしっかり出てきていました。
新婚真っ最中の青龍と、遠距離恋愛中の白虎。らぶらぶパワーって、らぶらぶパワーって……!
完結ではありますが、いくらでもお話は作れるので、いつか続編ならないかなァとお祈り中。