「おーい、帝~。」
頭の上から声がする。空は明るく、太陽が真上に昇っていた。
―――あれ、夜風…?
周りに夜風らしき姿はない。そもそも、川の土手で星を見ていたはずだったが、帝の体はなぜか学校の屋上にあおむけになって寝そべっていた。
「帝、起きろよ。」
男口調。だが、女の声。晴香だ。なぜか帝にまとわりつき、お節介を焼いている同級生。
「お前、よく制服で男の頭の上に立てるな…。」
「うるせーよ。おれはお前がその辺にいる男子共よりあり得ないくらい純粋で純潔なのはおれが一番よくわかってんだから、ぐだぐだいうな。飯作らねーぞ?」
―――くそ、足元見やがったな…。
実際、お節介を焼く程度ではなく、晴香は帝の家に来て家事のほとんどをやってくれている。珍しいときは、勝手に居座って朝まで寝ていることもあった。帝のことをまったく警戒していないようである。
―――完全に男としてなめられてる…。まぁ、どうでもいいけど…。
「おら、いつまで寝てんだよ。起きろ。授業始まるぞ。」
「んぁ…、先いっとけ。あとで行く。」
「遅刻したら今日家に泊めろよ~。」
「え…。それはやだ…。」
帝は飛び起き、走って教室に戻っていった。
―――夜風、今日学校来てんのかな。夢だったのか?
いきなり学校の屋上にいて少し驚いたが、夜風はほとんど学校に来ない。病弱で、入院することが多いのだ。小学校からの唯一の幼馴染で、親友と呼べる存在だった。本音を言えば、学校に来てほしい。だが、体調が悪いのなら仕方がない。
「今日も見舞いに行くか…。」
そうして、繰り返しの毎日が始まった。