ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗 | michyのブログ

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ダラダラした日常で興味を持ったことを、ぼちぼちと書きなぐります。

昭和40年代の子供たちのTVヒーローの2大勢力、
それはウルトラマンと仮面ライダー。
(普段は西暦で年を書くことが多いおいらだが、今回は年号で書く。なぜかこちらがしっくり来るから。)

おいら自身は、物心付くかつかないかのころのタロウが最初のウルトラマンの記憶で、
その後、レオ終了後からザ・ウルトラマンが放送されるまでの数年間、
地方なので再放送も無いのにウルトラマンや怪獣の本を読んでいた。
おいらだけではない。当時の小学生は怪獣の名前など20や30は平気で言えた。
それだけ印象が強かったのだ。

どちら10年以上のブランクがありながら、仮面ライダーが平成期に入って復活し、
初期のシリーズを越える16年連続16作と継続し、日曜朝に子供と、それよりも案外母親に人気なのに対し、
ウルトラマンは低調そのもの。現在、ウルトラマンXが放送中なのだが、
あんまり話題になってないようだし、おいら自身1回試しに見て止めてしまった。

実際の話として、ウルトラマンギンガ以降を作っている円谷プロは既に創業者一族がいない。
お家騒動と放漫経営で買収されたというのは、当時の記事にも載った話ではあるが、
その内実を必要以上にヒステリックにならずに書いた懺悔録がこの本、
「ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗」。

著者円谷英明は、円谷英二の孫、円谷一の次男で、円谷プロ6代目社長。
営業&経理畑を歩んだ人なので、製作の現場にはあまり携わっていなかったのか
記述に間違いはある。(結構ネットでも指摘されている。)
ではあるが、かなり落ち着いた筆致で、祖父英二、父一の偉業もさらっとした感じで、
あとは冷静に反省と懺悔、いかに円谷が放漫経営の中小企業だったを指摘している。
そして放漫経営の元となった叔父で第3代社長円谷皐と、
その長男で第4代、そして一族最後の第8代社長円谷一夫に対する静かな憎悪。
確かに、中小プロダクションでありながら10年以上の新作を作らないというのは
素人目にもちょっと異常。(エコエコアザラクや幻魔大戦を製作していた円谷映像は
円谷英二の三男円谷粲が社長とは言え別会社。)

円谷英二も円谷一も、経営者というよりは職人肌の映像屋。
ウルトラマンの制作費は高く、ただ作るだけで赤字というのは結構有名で
子供時代のおいらでも知っていた。
それがその後の営業で回収できれば、それはそれで一つのビジネスモデルなのだが、
実際の円谷プロはどんぶり勘定の最たるもので、誰も収支を把握できていない状態。
営業的に成功といわれたティガ、ダイナ、ガイアの平成三部作ですら大赤字だったらしい。

こうして考えると、版権に厳しいディズニーや、
売れなくなったときの路線変更やリカバリー、マイナー作品での実験を繰り返しながらも
毎年スーパー戦隊とライダーを作り続けている東映は、
やはり会社としてはしっかりしているのだなと思わされる。

当時のファンとしては、心理的にはなかなかに読みにくいのだが、でもやはり読んで欲しい本。
ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)/講談社
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