突然マンション入り口のチャイムが鳴る。
猫 はピクンと体を震わせてそれに反応しスッと立ち上がると、二足歩行でドアモニターまで行く。
「はい」
ね! うちの 猫 は喋るんです。
「荷物?」
「うん」
「受け取り、お願い出来ますか?」
「はい」
「ありがとう。でも尻尾と耳は締まっておいてくださいね」
「は〜い」
2分もしないうちにドアのチャイムが鳴って 猫 が出てくれる。
猫 はずっと人間として生きてきたので流暢な日本語を喋る。
僕なんかと違って、他人(ひと)当たりも良い。
本当は「人当たり」と書くけど
僕の場合は「他人当たり」です。
猫 には申し訳ないけれど、
僕は、可能ならばもう死ぬまで 猫 以外の誰とも話したく無いのです。
ゴメンね 猫……
ありがとう 猫……
仕事上、仕方なく話をしなくてはならないこともある。
レストランに行けば注文だって普通する。
役所に行けば、論理的に用事を告げなくてはならない。
郵便局に行って郵便物を出す時に「お願いします」と言う。
病院に行ったらお医者さんに自分の症状を告げる。
保険会社さんと保険の話もする。
自転車が壊れたら自転車屋さんに行って修理内容を説明する。
バイク屋さんに、バイクの点検・部品交換について自分で説明します。
駅で切符を買うのに行き先を告げることもするし、スイカが変な動きをしたら駅員さんにどこの駅の改札でスイカがおかしかったか! なんてこともちゃんと説明もします。
そんなこんな色々いっぱい!!
生きていくのに最低限、他人と喋らなくてはならないシーンがいくつもある。
そこだけは頑張って喋ります。
けれど
どうか世間の皆さん!
それ以外は勘弁してください。許してください。解放してください。
謝れと言うなら謝ります。
御免なさい。
こんな僕で……御免なさい。
m(_ _)m
そんな壊れた僕のために 猫 は代わりに話をしてくれるのです。
ありがとう。ごめんね。
猫 は一般的な日本人がやる事の中のそのほとんどのことが出来ます。
運送会社さんと会話も出来るし。
洗い物もするし、掃除洗濯も出来ちゃう。
料理だって簡単なことなら出来ます。
自転車も乗れる。
運転免許を持っているから自動車の運転だって僕より上手に出来る。
(今は頼んでもやってくれませんが……)
スーパーも行けちゃうし、ネットショッピングも出来ちゃう。
Youtubeだって一人で見ちゃう。
すごいのは、ちゃんとお仕事だって出来ちゃう。
さらにもっと凄いのは 占い(?) が出来ちゃう……!?
ね! 猫 って凄いでしょう。
^ - ^
つづく
