「まぐれ」を読了、本屋にダッシュだ!
ナシーム・ニコラス・タレブ著の、「まぐれ Fooled by Randomness 」を読了。
久しぶりに、興奮しながら読み進んだ。
この相場の中、読んでない人は本屋にダッシュすべし!
そんな体力使いたくない人は、人差し指を何度かマウスに触れてAmazonで発注すべし。
「稀な事象は、突然起きる」、というのがこの本の大きなテーマ。
世の中は不確実で、連続性がなく、非線形であるという、当たり前のことを人は忘れ。
「過去10年そうだったから、今後もそうだ」とか、平気で言う。
「黒い白鳥をみたことないから、全ての白鳥は白い」、みたいな。
(ちなみに原語では白鳥ではなくSwan、日本語で言うと形容矛盾だよね、黒い「白」鳥って。
三日坊主が一週間で直った!みたいで。直らねえよバーカ。)
だけど、今まさに起こっているように。
予想だにしなかったことは、突然起きて。
そこでは、過去の値動きからの乖離に基づくValue at Risk的リスク管理や。
過去の値動きを参照した、Long/Short戦略が、当然にワークせず。
でも、世の中が非線形である、ということは。
アメリカ人のほぼ全ての人が、幼児の頃から経験しているはずで。
フレンチフライに、ケチャップかけたくて。
Heinzのケチャップのガラス瓶の底を、連続して手のひらで叩いても。
ケチャップ、なかなか出てこないが。
ずっと、叩いていると。
突然、思いっきり、ケチャップ出ますよね?
少なくともほぼ全てのアメリカ人は、そんなことを実感して育った、はず。
でも、いざトレーディングになると。
そんなことは、忘れてしまう。
叩いても出ないから、ずっと叩いても大丈夫。
そんなトレーダーは。
ちょっとずつ、平時に儲けて。
10年かかって、金持ちになったとしても。
10年に1回、稀なことが起きれば、たった一度でBlow upする。
帰納的に考えて、何らかの結論に達した気になっていても。
本当に全ての可能性を観察したとは決して言い切れないので。
カール・ポパー的反証主義は、きわめて重要である、と書かれている。
激しく同意。
反証主義についてひどく感心した一文が。
長くなるが、引用する。
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ポパーの反証主義は開かれた社会という考えと密接に結びついている。
開かれた社会とは、永久に正しい真理が存在しない社会だ。
開かれた社会では批判的な考え方をするのが許されている。
(略)
ハイエクは、価格が情報を発信する資本主義を支持していた。
そんなふうに情報がばら撒かれれば、官僚的な社会主義は窒息死するだろう。
(略)
どんなものにせよ理想郷という概念は必然的に閉じられるものになるとポパーは信じていた。
その理想郷を否定する考えを抑圧するからだ。
自由な反証と共存できない社会をいい模範だと考えるだけで十分全体主義だ。
私はポパーから、開かれた社会と閉じられた社会の違いだけでなく、開かれた心と閉じられた心の違いも教わった。
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ああ、世の中には「べき論」を私に説く人が、たくさんいるのだが。
ああすべき、こうすべき、という「べき論」を説く人は。
「理想郷」の概念から、抜け出せていない人だ。
そしてもう一つ。
とても面白いエピソードを、引用する。
トレーディングに自信がある、あるいは勝負事が好きな人は。
次の問いを、是非考えてみてください。
投資銀行でのミーティングで。
トレーダーとして、市場の見通しを述べなければならず。
筆者は、米国株は、来週70%ぐらいの確率で上昇する、と述べた。
でも、筆者は同時にポジションでは米国株を大きく空売りをしていて。
「ほんとだったら、もっとショートしたいんだよね」と、コメント。
周りの人が、「君はベアなの、ブルなの、どっち?」と完全に混乱して尋ねた。
筆者は、矛盾しているのだろうか?
答えは、No。
上昇する確率が、70%だったとしても。
上昇の幅の筆者予想値が、1%だったとして。
もし万が一、下落すれば、10%売られると予想していたら。
やられる場合の期待値は、0.7%。
勝つ場合の期待値は、3%。
じゃあ、7割の確率で相場が上がると思っていても。
売った方が、いいじゃん。
要するに。
トレーダーですら、確率と、期待値を混同する人が多すぎる、ということ。
営業でも、いるんだよね。
毎日商いくれるけど、その商い全部とっても、たいしたあがりにならないお客さんに、全力投球して。
年に1回だけ、鼻血が出そうな商いをくれるお客さんに、サービスしない、営業。
営業は、チケットしばらく書いていないと焦るから。
前者になりがちな、バイアスが。
そんな営業、たくさんいるな。
本の後半は、なぜ人は愚かな過ちを犯すのか、についての考察が。
人間が生物学的に、確率をしっかり理性的に理解した上で行動できない理由が書かれていて。
著者は、Far OTM Optionしか買わない、という極めて珍しい戦略をとるヘッジファンドを運用していて。
訳者あとがきでは、本の上では冷静な著者も、トレーディングに当たっては冷静でいられない、という舞台裏が暴露されていた。
筆者も、偉そうなことを言いながら苦しんでいるんだな、というのが分かって。
人間臭くておもろいぜ。
でも。
債券投資、特にクレジット投資は、因果な商売だな。
100円のものが、200円になることは、ほぼないが。
100円のものが、0円になるのは、あり得なくない。
アップサイドとダウンサイドが、きわめて非対称的で。
まさに、今の市場の混乱で、彼は金儲けをしているに、違いない。
面白くて、鼻血でそうでした。
さっきの問いを間違えた/答えられなかったそこのあなた。
もしあなたがポジション持っているのなら。
早く、この本買って読んでください。
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