「国家の謀略」と「警視庁情報官」
またそんな本ばっかり、といわれるかもしれないが。
休職起訴外務省職員の筆による、「国家の謀略
」と、「警視庁情報官
」を読了。
「国家の謀略
」は。
帯には、
「異能の外交官が初めて公開する「インテリジェンス」の技法」
「この情報工学を官僚だけに独占させておく手はない ビジネスマン必読!」
と書かれているが。
「初めて公開する」とかいわれても。
「国家の罠」や、「インテリジェンス 武器なき戦争」とかにも、いろいろ書いてあったじゃん。
世界情勢をコンパクトにまとめていて、その部分は参考になるが。
筆者は指摘する。
優れたインテリジェンスにおいては、しっかりとした思想が存在するということが、重要である。
インテリジェンス・オフィサーは、国家のために命を投げ出すことが求められる。
国家のために、なぜ命を捧げなければならないのかの根拠を、思想に求めるからである。
KGB然り。モサド然り。バチカン然り。
日本にはかつて陸軍中野学校があって、そこでは国際標準を超えたインテリジェンス教育が行われていた。
その思想背景として、楠木正成に代表される「楠公精神」、すなわち天皇に何があっても仕える精神があった。
その上で筆者は、日本国家のインテリジェンスの意識の低さを嘆く。
では、日本のインテリジェンスが依拠する思想は何か。
それを提示することなく、日本のインテリジェンス意識の低さを嘆かれても。
自己矛盾のように、思えるが。
さらに。
北朝鮮がイランにミサイルを輸出していて。
アメリカは、イスラエルとイランの対立が激化して、第三次世界大戦へと発展する危険性を懸念している、と筆者は指摘するが。
反米ではあるものの、歴史的に親日であるイラン。
日本国が持つ、イランコネクションと。
親イスラエル、親米である、日本の立場を。
如何に上手く利用して、イラン対米国・イスラエルという対決の構図を、解きほぐすか。
さらにその過程で、如何に日本がイランにおける石油権益を確保して。
なおかつ、米国カードをちらつかせながら北朝鮮への牽制を行うのか。
その連立方程式を解く方法が書かれているわけでは、残念ながら、ない。
天気予報で、昨日と今日の天気しか教えてもらえない、みたいな感じ。
明日の天気が知りたい人には、物足りないかも。
「警視庁情報官
」は。
面白く、読ませていただいた。
この本は、小説の形はとっているが。
フィクション、としてしか書けないことを書くために、敢えて小説という形態をとっている(ように、思える)。
日本の公安警察がどのような思考経路を持っているのか。
その指揮伝達が、どのような形でなされるのか。
刑事警察と、公安警察、という、以前であれば水と油の関係だった存在が。
捜査二課という接点で、如何につながったのか。
カルト宗教が、如何に日本の行政・政治に侵食しているのか。
マスコミに公安が浸透するのに、どのような手口が使われるのか。
政治と公安警察の接点とは。
「国体護持」以外にも、公安はどのような事案に興味を持つのか。
小説、あるいはフィクション、という形態でなければ書けなかった行間を読める人には面白いはず。


