過ぎたるは及ばざるが如し
そういえばまだ「過剰」なものがあったよ。
過剰な先進的リスク管理の延長線上には。
過剰な、クオンツ(統計学的)アプローチへの依存。
つまり。
過去の値動きから、将来の予想を行い、現在割高になっているものを売って、割安なものを買ったり。
複数の商品間の値動きの相関係数を想定して、リスクリターンが最適となるポートフォリオを作ってみたり。
まあ、現代ポートフォリオ理論に対する、過剰な依存ということだ。
市場のプレーヤーの見方が様々だったらよいのだが。
あるいは、市場のプレーヤーの数が多数だったらいいのだが。
市場参加者が寡占状態となり、同様の見方をするプレーヤーが多いと。
誰かが何らかの理由で、「お約束」以外の行動を取ると。
一気に、VaRのリスクリミットをはるかに超える、ファットテールイベントが発生。
GSのクオンツファンドが、一つの典型例。
株価インデックスはほとんど動いていないのに、マーケットニュートラルファンドが「マーケットニュートラル」と言うのに一日で7%とか値下がりしたのは。
一部では25標準偏差の値動き、と言われるほどのイベントが起こったから。
統計学上は、何億年に一回、のイベントが発生したことになる。
(笑えるのは、それが4年から5年に一回、起こることだけど)
格付け会社のABSあるいはABSCDO格付けにおける、相関性の前提然り。
そもそもサブプライムローンABSは、
数千債務者のローン(多いときには、1万に近い)が原資産となっているので、相当な分散が図られていて。
分散されたポートフォリオだから、原資産の信用リスクが高くても。
証券化に当たって、しっかりと信用補完(劣後水準)すれば、AAA格が取れる、というロジックだった。
だって、サンノゼに住むAさんが債務不履行を起こしても、フロリダに住むXさんは、ちゃんと住宅ローンを支払えるから、というロジック。
でも、相関性が予想以上に高いと。
誰かがコケると、みんなコケて。
分散してても、意味がない、と言うわけ。
過去の統計データから言って、「これだけの分散と信用補完があれば99.99%大丈夫でしょう」と思っていたのだが。
過去の経験が、全く役に立たず。
過剰な、分散投資に対する信仰。
新BIS下では、分散度の高いAAA格証券化商品を買えば、必要自己資本は7%程度。
AAA格企業向け貸付だと、分散がないから、20%。
1億円の資本があれば。
AAA格高分散証券化商品が、14億円分購入でき。(=100%/7%)
AAA格企業向け貸付だと、5億円分しか実行できない。
ということは。
新BISによって、高分散投資の高格付け投資が推奨されたわけだ。
(新BISっていうのは、国際業務を行う銀行が守らなければならない国際ルールのこと。)
これによって、過剰な分散投資信仰が生まれた。
昨日指摘したのは。
過剰な時価評価。
過剰な先進的リスク管理。
過剰な高格付け商品への投資。
過剰な流動性。
それに加えて。
過剰な統計データへの依存。
過剰な分散投資への信仰。
過ぎたるは及ばざるが如し。