<お詫び>

スイマセン・・・小説書いてる途中に子供を寝かしつけてたら

寝こけてしまいますた・・・

なので文章が14日付けになってます・・・

おかしい部分もありますが・・気にしないで下さいね・・・



どうも。こんばんは。

ヴァレンタイン当日皆さんはどう過ごされてるのかな・・・・


大好きな人と過ごされてますかね?


我が家は何も変わりなく・・・です。



さて、昨日から続きます孝天編



皆さんに読まれて幸せものです。



では・・後編をどぞ。



「年下の後輩 -二人のこれから-」 <後編>



昨日どうやって家まで戻ってきたのか覚えていない・・・

アルコールも取っていないのに・・・


辛い身体を無理やり起こして鏡で自分の酷い表情に驚いていた・・・

泣きながら眠ったのか眼が酷く赤かった。


昨日の全てが夢だったら・・・

あたしはそう願ったけれどケンからの電話で本当だと知らされた。

『もしもし?祥子?』

「あ・・おはよう!早いね・・・どうしたの?朝から・・・」

『驚いたか?馬場部長がどうしたんだか今日一日休みくれたんだよ』

「・・・え?」

『祥子も休めるらしいぞ・・・海外部の部長にも許可貰ったって言ってたな』

「・・・そうなんだ・・・」

・・・馬場部長のせめてものあたしへの償いなのだろう・・・

『・・・嬉しくないのか?祥子は・・・』

「そんなことないよ!今日一日ずっとケンと過ごせるってことでしょ?」

あたしはわざと声を高めにはしゃいでみせる。

『あぁ・・ずっと一緒だよ・・・早く会いたいよ・・・』

「うん・・・あたしもだよ」

あたしは必死に鼻声になりそうなのを我慢した。

『迎えに行くから。用意しとけよ。』

「うん。待ってるね。」

あたしは電話を切ってため息をついた。

ケンはまだやっぱり知らないみたいだ・・・

・・・あたしから切り出さないと・・・


あたしはバスタブにお湯を張る間に着ていく服を選んだ。

最後のケンとのデート。

あたしを覚えておいてほしい・・・一番あたしらしい服装。

あたしは普段二人で出かける時の服装を選んだ


会社でのスーツ姿ではなくデニムとシンプルなシャツの自分を

最後にケンに覚えてもらおう・・・

あたしはそう思いながら服を用意した。

気を抜くと涙がポロポロと零れ落ちる。

「・・・最後までしっかりしなくちゃ・・・しっかりとね」

あたしは涙を拭いてバスルームへ向かった。


腫れぼったい目を詰めたい水で洗う。

バスルームから出たあたしは薄めのメイクをして準備をした。


あたしが準備し終わった後ケンが家にやってきた。

「お!すっかり準備できてたな・・・普段着じゃん・・・」

ケンは少しがっかりした顔であたしに言った。

「普段着じゃ駄目なわけ?」

「せっかくのヴァレンタインデーなのに・・・お洒落しなよ・・・」

「良いの。あたしらしいでしょ?スーツは会社だけで良いって。」

「ま・・・そうかもなぁ・・・それじゃ出かけるか・・・」

「どこ行くの?」

「ん?まずは腹ごしらえかな・・・行くぞ。」

ケンはあたしに笑いながらあたしの手を握った。


あたしは泣きそうになるのを我慢して笑った。


「昨日は悪かったな・・・参ったよ。相手先の社長がさ娘連れて来てたんだ・・・

 何だかなぁって感じだったな・・・何の為に呼ばれたんだか。」

「・・・・そうなんだ?まぁ相手先との付き合いも大事だからねぇ・・・」

「まぁね。昼飯何にするか・・・」

「そうだなぁ・・・ねぇ・・・せっかくだから外で食べない?」

「はぁ?外って・・・」

「うーん・・・公園とか・・・どう?」

「もっとロマンチックな場所にしないか?」

「・・・ロマンチックじゃない?仕事してる皆を見ながら二人で芝生でのんびり過ごすのってさ・・・」

「そうかな・・・ま、祥子が行きたいなら構わないけど」

「んじゃ決まりね。お弁当作ってくれば良かったね・・・」

あたしは笑ってケンに言った。


公園の噴水の近くのベンチに座ってあたし達はコンビニのおにぎりに齧りついていた。

「・・・なんか普段と変わらないな・・・全く。」

「良いじゃない・・・みんな仕事中にのんびりだよ?それだけで贅沢だって。」

あたしはコーヒーを口にしながらケンに答える

「まぁね・・・眠くなるな・・・天気良いとさ・・・」

そう言いながらあたしの足に頭を乗せて寝転んだ。

ケンはあたしを見上げながら目を瞑った。

「・・・確かに贅沢な時間だよな・・・」

「・・・うん。」

あたしはケンの伸びた髪にそっと触れた。

・・・・もうこんな穏やかなケンの顔も見ることが出来ない・・・・

あたしはそっとケンの頬に触れた・・・

ケンがあたしの首に手をまわしてあたしを自分に引き寄せた。

「祥子・・・お前がどうしようもなく好きだよ・・・オレ。」

「・・・・うん。あたしも・・・・大好きだよ・・・ケン」

あたし達はそのままキスをする・・・・

大好きだよ・・・・たまらないほどケンが・・・・

だけどね・・・あたし達はずっとこのままではいられない・・・・


「・・・どうした?祥子」

ケンがあたしの頬にそっと手を触れた。

「え?何?」

「・・・泣いてるのか?」

「・・・・え?」

あたしは慌てて頬に触れると涙がこぼれていた。

「・・・何で泣いてるのかな?・・・あんまり幸せすぎて知らないうちに涙出ちゃったみたい・・・」

あたしは笑ってケンに言った。

「・・・・何だよ・・・幸せすぎてって・・・・」

「だって・・・幸せなんだもん・・・あたし今今までで一番幸せだもん」

「何だよ・・・これからずっと二人一緒なんだからさ・・一々泣くなよ・・・」

「・・・・ウルサイよ。まったく・・・」

あたしはケンのほっぺたを引っ張った。


「ねぇ・・・そろそろ遊びに行こうか?」

「そうだな・・・何処行くか・・・・」

「うーん・・・何か思いっきり大声出したいな。」

「・・・遊園地か?」

「でも混んでるよね・・・今日なんて。」

「そうだなぁ・・・お!空いてるところ知ってるぞ」

「ホント?それじゃ行こうよ!」

あたし達は立ち上がって二人で手を繋いで歩き出した。



「・・・・確かに・・・空いてる・・・」

「・・・・だろ~?」

あたし達は浅草の花やしきの前にいた。

「・・・・貸切っぽい気分だね・・・」

「良いじゃん。とりあえず入るぞ。」


「あ、ジェットコースターがあるよ!乗ろうよ!」

「・・・・パス。オレ嫌いだもん・・・」

「・・・・これなら怖くないと思うけどな・・・」

「ほら・・・乗ろうよ~。」

あたしは無理やりケンを連れて乗った。

「あははは・・・・低い~。ゆっくりだよ~!」

あたしは大笑いしながら両手を挙げて大声を出した。

「・・・違う意味で怖いぞ・・・このジェットコースター・・・・」

ケンは引きつった顔であたしに答えた。


「ふぅ・・・面白かった~。あなどれないね~花やしき。」

あたしは大笑いしながらケンと歩いた。

「ねぇねぇ何か食べようよ!喉も渇いたし!」

「はいはい・・・随分今日は甘えるなぁ・・・」

「・・・何よ・・・甘えたらいけない?年上だから?」

「そんなこと言ってないだろ・・・・」

「今日は今まで甘えてなかったから一気に甘えるよ~!!」

「ん。良いよ。思いっきりオレに甘えろよ~」

うん・・・最後だもんね・・・こうやって甘えられるのもさ・・・


あたしは出来る限り自分のしてもらいたいことをケンにねだった。


ケンは苦笑いしながらもあたしに付き合ってくれた。


「プリクラ~!撮るよ~!ケン!」

「・・・これは勘弁だな・・・」

「何でよ・・・お願いだってば・・・撮ろうよ~!」

「いつでも一緒にいられるのに何で写真に残すんだよ・・・」

「良いじゃん・・・会社でさ・・・別部署だし。時間が空いたときあたしが眺めたいんだもん」

「帰りも一緒に帰るだろ?時間が合えばさ・・・」

「・・・・そうだけどさ・・・」

・・・・もうそんなこと出来ないんだよ・・・せめて手元に残させてよ・・・

あたしは下を向いて黙っていた。


ケンはクスっと笑ってあたしの頭をクシャっと撫でた。

「・・・解ったよ。一緒に撮ろう」

「うん。ありがと・・・ケン。」

あたしはケンと二人でプリクラを撮った。

「出来たか?見せてみろよ・・・」

あたしは出来上がったプリクラを見た。

少しケンより後で泣くのを堪えた自分の顔が写っていた。

「あたしの宝物だもんね~見せない!」

あたしは急いでバッグにしまった。

「何だよ・・・ったく。」

あたしの宝物・・・たった一つ二人が一緒に過ごした証拠だ・・・


「ねぇ・・・夕飯はさぁ・・・あの屋台行かない?」

あたしはケンにそう声をかけた。

「良いよ。行くか・・・」

あたし達は二人の思い出の場所のおでん屋の屋台へ向かった。

今までも色々なことを告白したあの場所であたしはケンに別れをつげる・・・



「久しぶりだね~。ここに来たのもさ。」

「そうだな・・・会社帰りじゃないのって初めてだよな・・・」

「そういえばそうだね。」

「ここでさ・・・色々言われたよな・・・付き合えないとかさ・・・」

「・・・・そうだね・・・」

「今日も何か話あるんだろ?祥子がここに来ようって言った時からそんな気がしたんだ」

「・・・・さすが・・・」

「・・・で?話って?」

あたしはケンのほうを見ないでまっすぐ前を向いたまま口を開いた。


「・・・・今日で終わりにしようよ・・・あたしたち・・・」

「・・・・何言ってんだ?いきなり・・・・」

ケンは笑っていた。

「・・・・冗談で言ってるんじゃないの・・・あたし本気なの。」

「・・・・・おい・・・いい加減にしろよ・・・」

「・・・・聞いて・・・あたし達がこのまま付き合ったらさ・・・会社が危ないの。」

あたしはケンの顔を見れないままでいた。

見なくてもケンが怒っているのがわかる・・・

「何言ってんだよ・・・会社が危ないって・・・・」

「・・・・あたし達がこのまま付き合ってたら・・・プロジェクトが中止になるの。」

「・・・・・意味わかんないよ・・・ちゃんと説明しろよ。オレの顔見て説明しろ。」

ケンの声が大きくなって語尾も荒くなっていた・・・


あたしはコップのお酒を飲んでケンの顔を見た。

「・・・・出資先の要望だよ・・・断れば出資が中止されるの。」

「・・・・何だよそれ・・・」

「・・・・相手先の社長のお嬢さんがね・・・昨日会った人だと思う。

 ケンがあたしと別れなければ出資を止めるってさ。

 馬場部長から聞いたの。だから・・・終わりにしようよ。」

「・・・・ふざけんな。何でそんなことで別れるんだよ。

 あの社長・・・何なんだよ。・・・くそっ・・・」

孝天は携帯電話をとりだしてどこかへ電話しようとした。

「何やってんのよ!」

「社長に伝えるんだよ!祥子と別れる気なんてないってな」

「やめてよ!そんなことしたらプロジェクト中止になるでしょ!」

「何で祥子にそこまでさせるんだよ!部長も部長だろ!」

「部長だってあたしに土下座までして頼んだんだよ!

 何でかわからない?

 プロジェクト中止になったら会社が大損害受けて

 リストラとか始まるんだよ?

 みんな家族を必死に養ってるんだよ!

 あたしの決断一つでみんなの家族が不幸になるんだよ!」

「だからって祥子の人生は良いのかよ!」

「・・・・みんなが助かるなら・・・・構わないよ・・・

 あたし・・・・あの会社好きだもん・・・馬場部長も大好きだもん」

「だからって・・・」

「・・・・ごめん。あたしが決断したの。

 もうこれは絶対に変わらないから。明日馬場部長に返事するの。」

「やめろよ・・・」

「ケン・・・あたしさ・・・言ったよね・・・前にも。

 仕事は人の為にするもんじゃないって。

 でもね・・・あたしは今回だけはケンのため会社のために決断するよ。」

「やめろって・・・祥子・・・」

「・・・あたしね・・・嬉しかったよ。甘えたあたしも受け入れてくれたし。

 あたしの我侭を聞いてくれたでしょ?

 今日一日部長があたし達の為に休みをくれたのに感謝してる。

 部長のこと恨んだりしないでね・・・

 いっぱいこれから先の分まで楽しい思い出できたから。」

あたしは泣きながら笑ってケンに言った。

「・・・やめろよ・・・頼むから・・・」

「ケン・・・あたしに気持ちを頂戴・・・たとえ離れたとしても気持ちだけを胸に生きていくからさ・・・

 あたしのケンへの思いをさ・・・全部ケンに預けるから・・・ね?」

「祥子・・・・」

あたし達はもうそれから何も話をしなかった。

ケンも解っているんだと思う。

これ以上何を言ってもあたしを説得するのは無理だということを。

そして会社のためにはこれしか方法がないということも。


あたし達はケンの家へ戻った。

「あたしのこと忘れないでね・・・ケン・・・」

あたし達はもう何も言わずに身体を重ねた・・・

ケンのぬくもりを忘れないように・・・

ケンがあたしのぬくもりを忘れないように・・・

自分の思いの丈をそのままケンに身体で伝えた・・・

あたしはケンの背中に爪を立て傷跡として残す・・・

ケンは唇であたしの身体のあらゆる場所にあたしを愛した証を残した・・・


眠らずに何度もあたし達は身体を重ねる・・・

何度目かであたし達は力尽きた・・・

「・・・・ありがとう・・・ケン・・・」

「祥子・・・もう言うな・・・ゴメンな・・・」

息を切らせながらケンがあたしを抱きしめた。

「謝らないでよ・・・ケンが悪いんじゃないよ・・・仕方ないだけ・・・

 誰が悪いわけでもないよ・・・きっと・・・」

ケンがあたしを抱きしめながらしゃくり上げていた・・・

「・・・泣かないでよ・・・ケン・・・」

あたしはケンをただ抱きしめていた・・・


泣きつかれたケンが眠っている間に

あたしはそっとベッドから抜け出て孝天の家から帰った。

あのまま朝を迎えるのはあたしには到底無理だ・・・


あたしはもう泣かないでいた。

きっと涙も枯れ果てたのだろう・・・

家へ戻って起きたら馬場部長にしっかりと返事をしよう。

そう決心して家へ戻った。


朝あたしは海外部へ顔を出した。

「おはよう!さくら!昨日は一人で休んじゃった。ゴメンね。」

「・・・・おはよう・・・祥子・・・・無理して明るくしないで良いよ。」

「あ・・・聞いてるんだ・・・もう。こっちでも知られてるってことね。」

「・・・・何て言ったらいいか・・・」

「何にも言わないでよ。もう決心したから。」

「・・・・落ち着いたら思いっきり二人で飲もうね。」

「ありがと。さくら・・・さくらがいて良かったよ。」

あたしはさくらと抱合った。


「部長・・・昨日は有給頂いてありがとうございました。」

「いや・・・馬場部長からな・・・大丈夫か?」

「ハイ。もう大丈夫です。今から開発部へ行ってきますね。」

「・・・すまない・・・お前を犠牲にしたんだよな・・・」

「何言ってるんですか?あたしここの会社の社員ですよ!

 会社の為なんですから! 行ってきますね。」

あたしは部長に頭を下げて開発部へ向かった。



海外部の長い廊下を歩いていく・・・

皆があたしを見ながら何かを言いたげだった。

「おはようございます。部長いらっしゃいますか?」

「あ・・・祥子さん・・・」

「あ、白井さん。おはよう。部長もう出社されてます?」

「あ・・・ハイ。今プロジェクトの相手先のお嬢さんが・・・」

「そうですか・・・丁度良かったです。」

あたしは部長の部屋をノックした。

「部長おはようございます。海外部の山崎です。」

「あ・・・ちょっと待ってくれ・・・」

「・・・入ってもらって・・・」

部屋の中から女性の声が聞こえる。

「失礼します・・・」

あたしはドアを開けて中へ入った。


「おはようございます。スイマセン。来客中に。」

「・・・構わないわよ。・・・・あなた?

 ケンの彼女って・・・へぇ・・・年上だったっていうのは本当だったんだ。

 ・・で?返事は?」

社長の娘らしいその女性はあたしにいきなりそう尋ねた。

「・・・部長・・・昨日のお話の件ですが・・・」

「山崎・・・」

「あたしケンと別れます。その代わりプロジェクトの出資に関しては

 必ず続けると確約をしてもらってください。」

「・・・・すまない・・・山崎・・・・」

「良いわよ・・・プロジェクトの出資はパパに続けてもらうわ。

 まぁ・・・パパは知らないけどね。このこと。」

「・・・・何言ってるんですか?社長がおっしゃったと・・・」

馬場部長が慌てていた。

「全てこのお嬢さんが言ったことですよ・・・そういうことですよね?」

「まぁね。」

「構わないですよ。それでも。プロジェクトがきちんとこれからも進むなら。」

あたしは彼女の目を見て言った。


「あなたに・・・ケンをお渡しします。

 でも覚えておいて。彼の心はあたしのもとにあるから。

 どんなにあなたが必死になったとしても

 ケンはあなたのことを絶対に好きにはならないわ。

 彼はあなたのやったことを許さないと思うから。」

「・・・・何が言いたいの?

 負け惜しみね・・・あたしに彼を奪われたから・・・・」

「・・・・奪われたんじゃないです。

 会社に勤めている人間としてあたしはケンと別れます。

 それでも彼の思いはあたしの中にあります・・・」


「部長・・・ありがとうございました。失礼します・・・」


あたしは部長に頭を下げて部屋を後にした。


廊下でケンがあたしを見つめていた。

あたしはただケンを見つめ返した・・・


・・・・あたし達はお互い何も言わずすれ違いあたしは海外部へ戻って行った。




海外部へ戻ったあたしはバッグから辞表を取り出した。

そのまま部長のもとへと向かった。


「開発部行ってきたのか?」

心配そうに部長が尋ねる。

「・・・・ハイ。ちゃんと返事してきました。

 もう問題は解決しましたから。ご心配おかけしました。」

「そっか・・・」

「それで・・・これ・・・」

あたしは辞表を部長に手渡した。


「・・・おい・・・これ・・・」

「・・・すいません・・・あたし・・・ここまでです。

 何もなかった顔をしてこのまま仕事できるほど人間できてません・・・

 空っぽなんです・・・しばらく何も手に付きそうもないです。

 情け無い部下ですいません・・・許してください・・・」

あたしは頭を下げながら部長に言った。


「・・・・スマン・・・山崎・・・・」

部長はそれ以上何も言わずあたしの辞表を受け取った。


「ありがとうございました。

 お世話になりました・・・これで失礼します・・・・」

あたしは部長にお礼を言って部屋を出た。



「祥子!」

「あ・・・さくら・・・ごめんね・・・あたしだけ先に辞めちゃって・・・」

「馬鹿たれ!何で相談しないのよ!」

「・・・ゴメンね・・・でももう無理だわ・・・空っぽなの・・・今は・・・」

「だからって辞表出さなくても・・・・」

「・・・ゴメン・・・でも落ち着いたらまた飲んでくれる?同期じゃなくなってもさ・・・」

「・・・同期じゃなくなる?飲まないわよ!あたしは親友と飲むんだから!」

「さくら・・・」

「あんたは・・・あたしの一番大切な親友よ。会社辞めようがそれは関係ないでしょ。」

「・・・ありがと。さくら。落ち着いたら連絡するね。」

「絶対だからね!良いわね!電話しなかったら許さないからね!」

あたし達は泣きながら抱合った。


あたしは海外部の皆に挨拶をして荷物をまとめて会社を出た。

辞表が受理されるのも時間の問題だ・・・

あたしは家へ戻った。


それからの2日間あたしはただひたすらに眠り続けた。

食事も最低限に取るだけでただ眠った。

あたしの心にはケンとの思い出だけが残っていた。

それ以外は何も無くなっていた・・・

3日目になりあたしはようやく起きることを決心した。

落ちるところまで落ちたあたしはもう何も考えることをしなくなった。

ただ外へ出て太陽を浴びて買物へ行こうとそれだけを考えた。


公園で子供達がはしゃいでいる中あたしは遅い昼食を取っていた。

子供の無邪気な笑顔が羨ましい・・・

そんなことを思いながら時間をすごしていると

あたしのポケットの携帯が震えた。

携帯を取り出してあたしは知らない番号を見た。

とりあえず出てみようと思った。

「・・・・もしもし?」

電話に出るとあの社長令嬢だった。

あたしは電話に出たことを後悔していた・・・

「・・・何の御用でしょうか・・・もう用件は全て終わったはずですよね。」

あたしは必死に平静を装って冷静に答えた。

きっとそれでもおかしかっただろう・・・

彼女はあたしに来るようにと一方的に告げて電話を切った。

「・・・・何なのよ・・・」

あたしはため息をつきながら独り事を言った。



静かなクラシックが流れるホテルのラウンジにあたしは思いっきり普段着で登場していた。

何も着飾る必要も無かったし彼女の為にそんなことする気もなかった。

彼女はあたしは見つけると手をあげた。

あたしは彼女の元へ近寄った。

「あの・・・何でしょうか?」

「・・・・座れば?暇でしょ?仕事辞めて別に用ないんでしょ?」

「用件のみ言ってください。暇でもあたしにもそれなりに感情があるんで」

「・・・・あなた・・・ケンになにをしたの?」

「はぁ?何を言ってるんですか?」

「・・・・ケンはすっかり腑抜けよ・・・仕事はともかく二人っきりの時なんて

 ただボーっとしてるだけ・・・あなた彼に約束させたわけ?」

「・・・約束?」

「そうよ。ケンがあたしに言ったのよ。

 『これから先も何があってもアンタを好きにはならない・・・

  オレの中身は全部祥子に預けたしな・・』
 あなた・・・ケンにそう言う様に強制したわけ?」

「・・・・強制ね・・・あなたじゃあるまいし・・・」

あたしは下を向いて苦笑した。

「あたしにどうしろと?まさか別れさせた元恋人に

 『ケン・・もうあたしのこと忘れて。彼女を愛して』って

 説得させる気ですか?・・・どこまで他人まかせ?」

あたしは呆れて彼女を馬鹿にした目線で見た。


「とにかくあたしはもう全く関係ないですから・・・失礼します。」

あたしは出されたコーヒーを一気に飲んで財布から1000円だして

テーブルの上へ置いた。

「・・・待ちなさい・・・まだ終わってないわ。」

「・・・終わってなかろうと関係ないです。じゃぁ・・・」

あたしが立ち上がって帰ろうとすると彼女はあたしの腕を乱暴に掴んだ。

「何するんですか・・・」

「・・・ケンにあたしのことを好きにさせるにはどうしたら良いわけ?」

「は?そんなこと知らないわよ・・・自分の頭で考えたら?

 権力まで使って手に入れたんでしょ?

 自分の欲しいものを。後は自分で何とかしたら?」

あたしは彼女の腕を振り解いた。

彼女の目を見ると哀れに思えた・・・

「ま、人の心を強引に自分に向けさせる方法しか知らないあなたにはきっとケンを一生変えられないだろうけどね」

あたしは彼女の目を見据えたまま言った。

「・・・・何ですって!」

その瞬間あたしは彼女に頬を叩かれていた・・・

頬に痛みが走った・・・彼女の無意味に大きい指輪で頬が切れたらしい・・・

あたしは何も言わずそのまま彼女を睨みつけていた。



「いい加減にしなさい!」

その時あたしの背後で怒鳴り声が聞こえた。

「・・・パパ・・・何でここに?」

彼女の顔色が変わった・・・・

あたしは驚いて振り返ると見知らぬ初老の男性が立っていた。

「・・・・大丈夫かね・・・君・・・」

そう言いながらあたしにハンカチを手渡した。

「あ・・・ハイ。あの・・・」

「娘が大変失礼なことをしたね・・・」

「あ・・・もしかして・・・社長ですか・・・」

あたしの質問に小さく頷いた。

「・・・・何をしてるんだ。大体話は馬場君から聞いたよ。

 お前はいつからプロジェクトの出資決定担当者になったんだ?」

「・・・パパ・・・だって・・・」

「お前は私の顔を潰したんだぞ!私だけじゃない!

 私の会社にもそして彼女やケン君の会社にも迷惑をかけたんだ!

 人の気持ちを権力で脅かして・・・何をしている!

 その上彼女に怪我までさせて・・・この馬鹿モンが!!」

静かなホテルのラウンジに大きな声が響く。


「・・・・だって・・・ケンが・・・あたしに振り向かないんだもの。

 あたしがどうやってもあたしのこと好きにならないのよ!

 この女がケンをそうさせてるとしか思えないじゃないっ!」

「・・・・お前にはケン君は無理だよ。

 ケン君はねこの山崎君が今でも好きなんだろう。

 お前は人の心を強引に自分に向けさせようとしてるが

 それはどんなに偉い人間でも不可能なことなんだよ。」

「・・・・パパ・・・・」

「とにかく、これ以上勝手はさせん。

 ケン君を彼女の元に返しなさい。いいね。

 これは命令だ。返事は!」

「・・・・解ったわ・・・パパ・・・・」

「帰りなさい。私は彼女と話がある・・・早く!」

彼女は下を向いたままラウンジから出て行った。



あたしは呆然としたまま頬をハンカチで押さえていた。

「頬・・・大丈夫かね?すまなかった・・・」

「あ・・・いえ・・・」

あたしはそう答えたがハンカチを見ると少し血がついていた。

「娘が君とケン君に酷いことをしたね・・・すまない。」

「・・・・いえ・・・」

「プロジェクトへの出資まで出して君たちを別れさせるとは・・・全く。

 ・・・・育て方を間違えたみたいだな・・・・私は。」

「あの・・・どうして・・・」

「あぁ・・・プロジェクトの打ち合わせでケン君と馬場部長に会ったんだがね・・・

 何か様子がおかしかったんだ・・・

 プロジェクトに問題があったのかと思って尋ねたんだよ。

 最初は何も無いって言ってたんだが・・・

 ケン君がプロジェクト担当を変更したほうが良いと思うと言い出したんだよ。」

「・・・・え?」

「私も驚いたよ・・・何も言わず頭を下げて謝るばかりでね・・・

 馬場部長もケン君の気持ちを尊重するって・・・

 それで様子がおかしすぎると思ったんだ。

 ケン君が席を外している間に馬場部長が全て教えてくれたんだ・・・」

「・・・・それで・・・プロジェクト担当者は?」

「うちではケン君が窓口でいて欲しいんだよ・・・君に一つ聞いても良いかね?」

「・・・はい。何でしょうか・・・」

「・・・・どうして辞表を出したのかね?」

「その件ですか・・・・。いくら会社の為とはいえあたしも人間ですから。

 無理に別れた相手が辛い顔をしながら他の相手と一緒にいる姿を

 仕事場で何の感情もなく見続けるなんて・・・。 

 それにもしそれが平然と出来るようだったらあたしはオシマイかなって・・・」

「なるほど・・・ケン君が言っていた通り君はしっかりした考えを持っている女性なんだね。」

「・・・そんなこと無いです。結局は仕事を投げ出して逃げたんですから・・・あたし。」

「・・・・うちの娘がどんなに頑張ったってケン君が娘を好きになるわけないな・・・確かに。」

社長は笑ってあたしに言った。

「君みたいな女性に惚れたケン君はやはりプロジェクトに必要な人間だな・・・」

「いえ・・・あたしはもう・・・」

「私と一緒に君の会社へ行こう・・・」

「は?あの・・・」

社長は立ち上がってそのままあたしを社長が待たせた迎えの車に一緒に乗せた。


「あの・・・あたしはもう辞表を提出してますから・・・会社とは関係ない人間です・・・」

「・・・・君の会社は辞表受理してないと思うよ・・・きっとね。

 してたとしても私が撤回させるさ・・・君が嫌がる権力を使ってでもね・・・」

そう笑ってあたしに答えた。

車が会社に到着してあたしは社長と一緒にアジア開発部へ連れてこられた・・・


開発部の廊下で懐かしい仲間が笑顔であたしを見つけては声をかける・・・

社長と共に馬場部長の部屋へ入った・・・

「馬場部長・・・すまなかったね・・・この会社の有能な社員を一人連れ戻しに行ってたんだ。」

「社長・・・お待ちしてました。山崎・・・お前休むなら休むって言えよ・・・心配してたぞ。」

「あの・・・馬場部長・・・あたし・・・辞表提出したんですけど・・・」

「オレは受け取ってないぞ?何か手紙は貰ったけどな・・・ラブレターじゃないから捨てちまったよ」

驚いて振り向くと葉山部長が笑いながらあたしの後ろに立っていた。

「有給扱いにしておいたよ・・・早く戻らないと仕事増えるぞ・・・さくらが待ってるぞ。おい。」

「あの・・・・」

あたしは何がなにやら解らない状態で頭が混乱していた。


「まぁ・・・辞表は受理されてないし・・・ケン君がプロジェクトを続けるためには君が必要ってことだ。」

社長はニッコリ笑ってあたしに言った。

「あの・・・・」

「そういうことだよ。戻って来い。山崎早く戻って開発部のヘルプ始めてくれよ。」

「何言ってるんですか!馬場先輩!海外部の仕事溜まってるんですよ。そっちが先ですよ」


「とりあえず君を彼にちゃんと返さないとな・・・」

馬場部長が笑いながらそう言った。


「・・・失礼します・・・」

「おう!入れ。」

ドアが開くとケンが入ってきた・・・・

「おう。社長がお前の大切なものをってさ・・・」

馬場部長が大笑いしながら言った。

「社長・・・ありがとうございます。助かります・・・・」

「とんでもないよ・・・すまなかったね・・・娘が馬鹿なことをやらかして。

 二度と娘には君達のことに関わらないようにきつく言っておくよ。

 山崎君・・・・本当に娘が酷いことをしたね・・・すまなかった・・・・」

驚いたあたしは慌てて社長に答えた。

「・・・いえ・・・とんでもない・・・」


「じゃ・・・私はこれで失礼するよ。またプロジェクトの打ち合わせで会おう。」

社長は笑って部長達に挨拶をした。

「少し残念だな・・・山崎君を私の会社に欲しかったのに・・・」

「社長。それは出来ませんよ。うちの社員ですからね。」

そういわれた社長は笑って部屋を出て行った・・・


「・・・・さてと・・・その格好だと仕事にそのまま出てもらうわけにはいかんな・・・山崎」

「・・・明日からバリバリまた仕事してもらうからな・・・今日は勘弁してやる。」

「おい!ケン。山崎を送ってやれ。お前そのまま直帰で構わないぞ。」

「はい・・・失礼します・・・」

ケンは部長達に頭を軽く下げあたしの手を掴んで部長の部屋から出た。

あたしはなんだか解らないままケンに連れられていた。

「・・・今荷物持ってくるから・・・絶対ここを動くなよ・・・良いな?」

「あ・・・うん・・・」

荷物を手にしたケンが皆に「お先に!」と声をかけた。

まわりからは口笛やら拍手やらが起こっていた。

「行くぞ・・・」

ケンはあたしの手を握ってエレベーターに乗り込んだ。

ケンは何も言わずに1階のボタンを押さずに資料室の階のボタンを押した。

そしてあたしを抱きしめた・・・

「・・・・おかえり・・・祥子・・・」

「・・・・うん・・・ただいま・・・ケン・・・・」

「どうしたんだよ・・・これ・・」

ケンがあたしの頬にそっと手を触れた・・・

「あ・・・ちょっとね・・・でも大丈夫だよ・・・」


資料室の階に到着するとエレベータの前に開発部の仲間が立っていた。

「おう!おかえり!山崎!なんだよケン・・・資料探しか?」

「岡本先輩お疲れっす。資料探したらオレ直帰なんで。」

ケンと岡本さんは笑ってそう言った。

「んじゃお疲れ。山崎またな~!今度飲みに行こうや!」

「オレも誘ってくださいよ!」

「うるせぇよ!それじゃな~」


「ほら・・・祥子・・・」

ケンは笑って資料室のいつもの部屋へあたしを連れていく・・・

「あの・・・ケン・・・家に戻るんじゃないの?」

部屋に入るとケンはいきなりあたしに激しくキスをした・・・

「ん・・・その前にオレに返してもらわないとね・・・」

あたしは彼の指先が背中に滑り込んで来たのに驚いて反応した・・・

「な、何を?」


ケンはあたしの首筋にキスをしながら囁いた・・・

「・・・・オレの気持ちを全部祥子に預けてあっただろ・・・

 オレが預かってる祥子の気持ちもさ・・・返さないとな・・・

 お互い空っぽのまんまじゃ仕事にならないだろ・・・」

あたしはそう言われて微笑んでケンに言った・・・


「そうだね・・・・とりあえず家に戻るまえにそれが先かもね・・・」


あたしはケンの首に腕をまわしてそのままキスをした・・・