さて、明日はヴァレンタインデー当日。


皆さんはチョコレートやらケーキやらを作って大好きなあの人やこの人にあげますかね?


我が家は昨日が旦那の誕生日だったし。


関係ないって感じです。うん。



さて、ヴァレンタイン当日は孝天編でアンケートで支持いただきました

「年下の後輩~」シリーズでお送りするんですが・・・

あまりにも妄想が過ぎまして・・・二日連チャンします。


この二人って確かにあの後どうなったのさぁ~!!と言う感じでしたね。


では・・どうぞ。



「年下の後輩 -二人のこれから-」



「おはよう祥子!」

「あ、さくら おはよう!」

あたしは海外部の廊下で同期のさくらと挨拶を交わす。

「今日はケンと夜どうせデートでしょ・・・羨ましいったらないわよ・・」

「まぁね・・・何てったってヴァレンタインデーだもん。」

「・・・まったく・・・あたしは今年もひとりで寂しく飲み明かすかな・・・」

「さくらだって選り好みしなければもてるのに・・・」

「・・・自分がケンみたいな男と付き合ってるからって偉そうに・・・このっ!」

さくらはあたしにふざけてパンチを繰り出した。

あたしは笑ってさくらにやられたフリで返した。


「ま、楽しんでね。祥子。」

「ん。ありがと。」

「そういえば・・用意した?部署に配るチョコ。」

「あ、うん。とりあえず皆から集めたので買っておいたよ。」

「OK.しっかし義理チョコって大変だよね・・・安すぎても高すぎてもねぇ・・・」

「まぁね。義理ってわかってても貰えると嬉しいみたいよ。男性社員はさ。」

「でもね・・3時に女子だけで食べる用にちょっと奮発して買っておいたんだ!

 あとで皆で食べようよ。はっきり言って配るのより美味しいと思うよ~」

「祥子・・・さすが抜け目ないわね~。楽しみにしてるね。」


あたしは自分のデスクに着いてとりあえずコーヒーを口にした。

パソコンを立ち上げ昨日の仕事をざっと振り返ってみる。

明日のためにかなり頑張って仕事を終わらせたつもりだ。

今日は絶対に定時でかえらないとならない。


「お。山崎来たか。おはよう!ちょっと来てくれるか?」

「あ・・はい。今行きます。」

「部長なんでしょうか?」

「山崎これをまとめてアジア開発部へ持って行ってくれ。」

「あ、ハイ。わかりました。」

「今日は定時上がりだろ?」

「あ・・出来れば。」

「まぁ明日はヴァレンタインデーだしなぁ・・・定時で上がれよ」

「ありがとうございます。部長」


あたしはデスクに戻って仕事にとりかかった。

「部長ってば気をきかせてあたしに開発部の仕事させたのかな・・」

あたしは思わず笑ってしまった。


「さてと・・行ってこようかな・・・」

終わらせた仕事を部長にチェックして貰いOKを貰って

あたしは開発部へ向かう準備をした。

デスクから小さい箱をメール用の封筒にこっそり忍び込ませた。

ケンに渡すチョコレートだ。


「アジア開発部に行ってきます・・・」

皆に伝えてあたしは海外部を後にした。

エレベーターに乗って隣のビルへと向かう。

エレベーターが途中で止まった。

同期入社の田伏君が乗ってきた。

「あ、田伏君お疲れ様です。」

「あ・・山崎お疲れ。久しぶりだな・・」

「そうだね・・元気?忙しそうだね・・そっちの部署も。」

「ん。まぁね。山崎はどこ行くんだ?」

「あ、あたしアジア開発部に書類届けに行くの。」

「あ・・山崎が付き合ってる相手の所か・・」

「あ・・まぁ。仕事でだけどね。」

「そっか・・上手くいってるんだ・・・年下のそいつと。」

「うん。まぁね。」

あたしは笑って彼に答えた。

「・・・何か笑顔で言われるのも面白くないな・・・」

「・・え?」

「オレは仕事忙しくて恋愛してる暇もないぞ・・羨ましいよ。」

「あ・・そっか。でも田伏君だって人気あるじゃない・・

 毎年ヴァレンタインデーなんてチョコレート沢山貰うんじゃないの?」

「・・・量貰ってもなぁ・・・量より質だろ・・義理でいくら貰ってもな・・」

「・・贅沢だねぇ・・あ・・着いたみたい。」

「ま、色々と言われるだろ?相手が年下だとさ・・・」

「え?まぁね。でももう構わないって思ってるんだ。」

「そっか・・・山崎も変わったな。ソイツのお陰だな・・・」

「どうかな?それじゃまた!」

「ん。今度ゆっくり話しよう。同期のヤツラと一緒に飲みに行こう。

 恋人も良いけど同期も良いもんだぞ。山崎」

「解ってるよ。じゃぁね。」


あたしは田伏君に手をふって開発部へのビルへ入って行った。


エレベーターでアジア開発部へ向かおうとロビーでエレベーターを待っていた。

「お疲れさまです・・・」

「あ・・お疲れさまです・・」

ケンがあたしの後ろに立って言った。

「・・・誰に手振ってた?笑顔でさ・・・」

「あ・・・見てたんだ?同期の子とエレベーターで会ってね。」

「ふーん・・・同期の奴かぁ・・・」

「・・・何?何か言いたそうだね・・・」

「別に・・・エレベーター来たよ・・・」

ケンはあたしをそっと押してエレベーターに乗り込んだ。


扉が閉まった瞬間ケンはあたしを壁に押しやった。

「・・・同期にだとあんな笑顔見せるんだ?祥子って・・・・」

「・・・だって・・・新人の頃から一緒に研修受けてたりしてたもん・・・」

「ふーん・・・何か面白くないな・・・オレ。」

「・・・面白く無いって・・・」

あたしがそう言って話を続けようとした瞬間ケンがあたしの唇を乱暴に奪った・・・

その後あたしの首筋に強く吸い付いた・・・

「ちょ、ちょっと・・・ケンってば・・・」

ふいに小さくエレベーターが振動した・・

ケンが何事もなかったように唇を離してあたしの服を調える

ドアが開いて人が入ってきた・・・

あたしは何とか平静を装ってエレベーターの階数を知らせる表示に目を向け続けた。

ケンが手を伸ばして開発部の資料室の階のボタンを押した・・・

エレベーターが止まって人が降りていく・・・

再びあたしとケンの二人きりになった・・・


開発部の階についてあたしが降りようとした瞬間ケンに腕を掴まれて引き止められた。

資料室の階へ着くとあたしの手を掴んで誰も入らない部屋にケンは入った。

「ねぇ・・・あたし資料届けないと・・・・」

「・・・面白くない・・・オレに見せる笑顔と違うよな・・・」

「・・・ヤキモチ妬いてるの?同期の田伏君にさ・・・」

「・・・田伏っていうんだ・・・ソイツ。」

そう言ったケンはあたしをデスクに押さえつけていきなりスカートの中へ手を差し入れた・・・

「ちょっと・・・やめてよ・・・」

「・・・祥子がいけないんだろ・・・あんな笑顔他の奴に見せるから・・・」

あたしは手で必死にケンの手を押さえた・・・

「明日ずっと夜一緒にいられるのに・・・そんな事言わないでよ・・・ケン・・・」

「オレって凄いヤキモチ妬きだったんだよ・・・祥子に惚れるまで気がつかなかったけどな・・・」

そう言いながらケンはあたしの服の胸元を乱暴に開いて強く胸元に吸い付いた・・・

思わずあたしは声を洩らした・・・

「・・・オレのモノだから・・・祥子の身体も笑顔もさ・・・」

ケンは意地悪な笑顔を見せてあたしの耳元に唇を寄せて囁いた・・・

そんな意地悪なケンにあたしは溺れている・・・


「失礼します・・・お久しぶりです。書類預かってきました。」

あたしは馬場部長に笑顔で挨拶をした。

「元気か?海外部は忙しいか?」

「そこそこ忙しいですね・・・でもココほどじゃないと思いますけど。」

「そっか・・・またヘルプ頼むかもしれないな・・・」

「そうなんですか?うちの葉山に伝えておいて下されば・・・」

「そうだな・・葉山君にまた頼んでみるか・・・」

「その時はよろしくお願いします。」


あたしは馬場部長に挨拶をして出口へ向かった。

「コーヒー飲んでいかない?」

ケンが廊下であたしを待っていた。

「あ・・・今何時だろ・・・」

「もうすぐ昼飯の時間。飯行く?」

「うーん・・海外部でさくらが待ってるだろうし。戻ってから食べるよ。」

「そっか・・・さくらさんにもヤキモチ妬きそうだな・・・オレ。」

「あのねぇ・・・全く。」

思わず笑ってケンを小突いた。

「ブラックだよな・・・」

「うん。」

ケンはコーヒーを買ってきてくれてあたしに手渡した。

「ありがと。いただきます・・・」

「あ・・・そうだ。これさっき渡すの忘れてた・・」

あたしは社内用のメール便封筒をケンに渡した。

「・・・何これ・・・」

そう言いながらケンは封筒を開けて中を覗いた。

「ま、一日早いけどね・・・ヴァレンタインのお約束の品。」

「・・・サンキュ。・・・本命だよな?」

「・・・義理だったりして・・・」

「あのなぁ・・・」

「さっきのおかえしだよ・・・一応本命ですから。」

「一応かよ・・・まったく。」

あたし達は笑ってタバコを吸いながらコーヒーを飲んだ。



あたしはケンとコーヒーを飲んだ後海外部へ戻った。

「お昼向こうで食べるもんだとばっかり思ってたけど?」

さくらが意地悪そうに笑ってあたしに言う。

「まさか・・・さくらと食べるつもりだったわよ。最初からね。」

「祥子ってそういうところは変わらないのよね・・・彼がいてもさ。」

「変える必要ないもん・・・まぁケンはさくらにもヤキモチ妬きそうだとか言ってたけどさ。」

「あの男・・・まったく・・・祥子をどこまで独り占めしたいわけ?」

さくらは笑いながら呆れて言った。

あたしはさくらと笑っていた。


あたしはその日孝天と過ごすヴァレンタインデーを待ちわびながら仕事に励んだ。

それなのにまさかたった数時間後にはあんな風になるなんて・・・




《悪い・・プロジェクトの共同出資者と会うことになった。

 今夜は会えそうもないな・・・でも明日は絶対二人っきりでいよう  KEN》

あたしはメールを見てため息をついた。


仕事だから仕方ない。

プロジェクトは大詰めを迎えていたし。

あたしには結局部長から開発部のヘルプの要請もきたし。

「この分だときっと明日も無理かもな・・・・ま、仕方ないか・・・仕事だし。」

そうは解っていたもやはりあたしだって残念だと思う。


「仕方ないから・・・仕事進めよっかな・・・」

あたしは海外部の残りの仕事をヘルプに行く前に仕上げることにした。

デスクで黙々と仕事を進める・・・

「・・・何か凄い負のオーラが沸き立ってない?祥子・・・」

さくらがコーヒーを片手にあたしに話しかけた。

「まぁね・・・今日孝天が急に客先と会うことになったんだ・・・だから会うの中止。」

「あちゃぁ・・・それは沸立つよね・・・確かに。」

「まぁ・・・仕事だし。」

「それで仕事に打ち込んでるわけか・・・ヘルプいつから?」

「うーん・・・明日か明後日かなぁ・・・まだ良く聞いてないけどさ。」

「せっかく同じ部署にいても気も使うしかえってこっちのほうが会えそうだよね。」

「まぁね・・・確かに気は使うけど。しばらくはすれ違いになるんじゃないかな?」

「そっか・・・良し!仕事早く終わらせて久々に飲もうよ。同期の連中も一緒にさ。どお?」

あたしは昼間の孝天を思い出していた・・・


「あぁ・・・一応遠慮しとこうかな・・・孝天から連絡あるかもしれないし。」

「はぁ?祥子・・・あんたいつからそんな奥ゆかしい女になったわけ?

 客先と会うんだったら戻る時間遅いでしょうに・・・飲んでも平気だよ。」

「そうなんだけどさ・・・昼間ね・・・」

あたしは昼間の同期の田伏君と会った後の話をさくらに話した。

「うへぇ~!若いねぇ・・・・あの子やっぱりさ・・・

 ヤキモチ妬きとはねぇ・・・可愛いちゃ可愛いけど。

 でも同期の男子と笑って話しただけでねぇ・・・

 ある意味メチャクチャあんたに惚れてるってことだけどねぇ・・・」

「まぁね・・・」

「ま、あたしも一緒だしさ。平気でしょ。」

「あ・・・さくらにもヤキモチ妬きそうだって言ってたってば!」

「・・・・まったく・・・」

さくらは呆れて大笑いしていた。



「おっ!山崎にさくら!こっちだ!久しぶり~!」

同期のみんなが手をあげた。

「久しぶりだね。みんな忙しいんじゃないの?

 しかもヴァレンタインデーの前日だっていうのにさ・・・なんか寂しくない?」

さくらは笑いながらみんなに言った。

「お前もだろが・・・山崎は良いのか?聞いてるぞ。アジア開発部の奴と上手くいってるんだろ?」

「祥子の彼今日仕事が急に入っちゃってね。」

「そっか。プロジェクト大詰めだしなぁ・・・ま、俺たちで我慢しろよ。」

「我慢って・・・まったく・・・久しぶりだね~。ホント。」

あたしはさくらの隣に座って飲み物を頼んだ。

同期の女子はみんなすぐに寿退社をしたために行き遅れたあたしとさくらだけが唯一残った女子だった。

「そういえば田伏は?」

「あ、連絡入れといたよ・・・絶対に後で来るってさ・・・」

「そっか・・・田伏も結構忙しいんだね・・・」

さくらは飲みながら皆と話をしていた。

あたし達は入社当時の失敗話や同期の今はいない女子の話をしていた。

「オレさ・・・結構アイツ好きだったんだよなぁ・・・あっという間に部署の先輩と結婚して退社しちまったけど」

「そうだったのかよ!まぁ新人だったしなぁ・・・今なら堂々と結婚しようとか言えるけどなぁ・・・新人じゃなぁ」

「そそ。ま、寿退社狙っての入社だと思ってその分仕事に頑張ったよ。あの頃ってさ」

「さくらはともかく山崎も結婚してやめると思ってたのにな・・・海外部に行ってからか?」

「え?寿退社狙ってたわけじゃないしさ・・・仕事面白いし。」

「あたしと祥子は運命共同隊よ。仕事が楽しいしね~。」


「悪い・・・遅くなった・・・」

その時田伏君が店に入ってきた。

「お疲れ~。案外早かったね。何飲む?」

「あ、ビールかなとりあえず。何の話してたんだ?皆盛り上がってさ・・・」

「あ?さくらと山崎は残ってるって話してたんだよ。」

「仕事できるからだろ・・・寿退社狙ってたほかの奴とは違うしな仕事に対する考え方がさ。」

田伏君の前にビールが運ばれてきた。

「おしっ!これで同期全員揃ったな。乾杯しよう!」

「これからもオレ達男は仕事に!さくらと祥子は寿退社せずに!乾杯!」

「乾杯~!」

あたしとさくらは笑いながら皆と乾杯した。

「山崎もいるとは驚いたよ。デートじゃないのか?」

「祥子はドタキャンになったからあたしが連れてきたのだよ。田伏」

「仕事か?彼は・・」

「ん。プロジェクトの相手先とね・・・ま、こうやって同期と飲めてラッキーだったけど」

あたしは笑いながら田伏君に言った。

「そっか・・・オレもラッキーだったな・・・山崎と飲めるなんてさ」

「またまた~・・・言うじゃない」


あたし達は楽しい時間を過ごした・・・

やっぱり同期の仲間は同じスタートラインだったせいか

久しぶりに会ってもすぐに新人の頃に戻れる。

あたしはとても楽しかった。


ふいにあたしの携帯が震えた。

「あ・・・孝天かな・・・」

携帯の画面を見ると会社からだった。・・・・開発部?

あたしは少し静かな場所に移動して電話に出た。


『もしもし・・・山崎か?』

馬場部長からだった。

「あ、どうしたんですか?馬場部長から電話なんて・・・

 良く解りましたね・・・あたしの携帯番号・・・」

『葉山君から聞いた。山崎・・会社戻れるか?』

「あ、今同期の皆で側で飲んでたんですけど。

 仕事ですか?お急ぎですか?」

『あぁ・・・悪いけど急な用件でな・・・』

「解りました・・・今から戻ります。開発部で良いですか?」

『こっちに来てくれ。・・・すまないな・・・』

いつもと違う雰囲気の馬場部長の声にあたしは少し不安を覚えた。


部長との電話を切ってあたしは皆に事情を説明した。

「ごめんね・・・あたし開発部で呼ばれたから。」

「そっか・・・大変だな・・・良いよ。また今度飲もうぜ。」

「祥子無理しないでよ・・・気をつけてね・・・」

「うん。またね。それじゃ皆はごゆっくり。」

あたしはさくらにいくらか渡して店を後にした。


開発部で呼ばれるなんて・・・英語の議事録かな・・・

徹夜仕事なのかな・・・

あたしは考えながら会社へ戻る道を早足で歩いた。

「山崎!」

振り返ると田伏君が走ってきていた。

「あれ?どうしたの?」

「オレも会社に戻るんだ・・・一緒に行こう。」

「え?田伏君も仕事残ってるとか?」

「あ・・・書類今日の仕上げたいし。」

「そっか・・・それじゃ行こうか。」

あたしは田伏君と歩き出した。


「開発部からか?」

「うん。部長からね・・・なんだろ・・・急ぎの仕事だと思うけど。」

「そっか・・・大変だな・・・」

「まぁ・・仕事だからね・・・」

「もし早く終わったらみんなの所へ戻るか?」

「あ~・・・どうだろ?一応さくらに連絡してみてからかな・・・」

「そっか・・・もしそうだったら連絡しろよな。」

「・・・え?連絡先知らないし。」

「部署の電話で構わないよ。携帯を知りたいけどさ。彼がいる山崎に聞くわけにはいかないだろ」

「あはは・・・わかった。携帯番号別に構わないけど・・・そっか。

 気使ってくれてありがとね。部署に連絡入れるね。」

あたしは田伏君にそう言って開発部のビルへ急いだ。

「山崎!無理すんなよ~!!」

「ありがと!田伏君もね!それじゃ!」


あたしは静まり返った開発部のビルへと入って行った。

エレベーターが静かに開いて乗り込む。

暗い廊下を進んで開発部の部長の部屋をノックした。

「遅くなりました・・・山崎です。」

「あ・・・入って。」

やっぱりいつもと少し違う馬場部長の声を聞いて緊張した。

「失礼します・・・」

あたしはドアをあけて部長の前へ進んだ。

「遅くなってすいません。何でしょうか?」

「・・・急に呼び出して悪かったな・・・まぁそっちで話しよう。」

「はぁ・・・話ですか?仕事で何か?」

「仕事でもあるな・・・まぁ座れや。」

「ハイ・・・」

あたしは応接セットのソファーに座った。

「コーヒー飲むか?」

「いえ・・・結構です・・・」

「何か飲みながら話したほうが良いと思うぞ・・・」

「はぁ・・それじゃ頂きます。」

部長はコーヒーを入れてあたしの前へ差し出した。

「山崎・・・話っていうのはな・・・」

「ハイ・・・」

「すまん・・・何と言っていいか解らん・・・単刀直入に切り出す。

 ・・・・ケンと別れてくれないか・・・」

馬場部長は頭をさげながらいきなりあたしに言った・・・・


あたしは一瞬言われている意味が理解できなかった。

「・・・・あの・・・別れてくれって・・・どういう・・・意味ですか・・・」

「・・・・今度のプロジェクトの共同出資会社の社長のお嬢さんが・・・・

 ケンを気にいったらしいんだ・・・ケンはもちろん相手にしてないんだ。

 それでも諦めきれないその娘さんがな・・・・

 ケンから彼女がいるって聞いて・・・・解れないと出資を中止するって・・・・

 無茶苦茶なのは解ってる!オレも頭に来るんだ。

 でもこのプロジェクト・・・今から中止になったら・・・

 ・・・・山崎にこんなこと頼める立場でもない・・・本当にすまない・・・」

馬場部長は頭を床につけてあたしに謝っている。


「・・・・部長・・・やめてください・・・顔上げてください!」

あたしは部長の手を引っ張って立たせた。

「・・・・あたしの方こそすいません・・・・部長にこんなことまでさせて・・・

 ・・・・今はすぐには回答できないです・・・それでも・・・

 いきなりで頭真っ白で・・・

 1日待ってもらえますか?

 せめて14日が終わるまで・・・駄目でしょうか・・・」

「・・・・もちろん構わないよ・・・オレは最低の上司だな・・・山崎・・・すまない」

「やめてください・・・ケンはこのこと・・・・」

「・・・まだ知らないだろうな・・・アイツに言っても無理だと思う・・・」

「・・・わかりました。あたしが決定します。必ず明後日には返事出しますから。」


あたしはコーヒーを飲もうとした・・・

知らないうちに手が震えていた・・・

それでも必死に堪えてコーヒーを流しこんで部長に挨拶をして会社を出た。


馬場部長は普段の姿では考えられないくらい小さく見えた・・・

あたしのせいで部長がこんな姿を見せるなんて・・・

あたしは悲しくなった・・・




あたしは会社を出て駅へ向かいながら一人頭の中で自問自答していた・・・

もうさくら達のもとへ戻ることなんて考えられない・・・

ただこのまま家で眠りたかった・・・


・・・・・あたしとケンがこのまま付き合い続けたら・・・プロジェクトが中止になる・・・


・・・どうして・・・あたしが?


あたしの我侭でプロジェクトが中止になったら会社の損害は莫大な金額だ・・・・


だからと言ってあたしの人生をそこまで会社の犠牲にするの?

会社の損害が大きければ社員が残れないかもしれない・・・・

馬場部長だって責任取らされて辞表は必至だ・・・


だからって・・・ケンともう付き合えないなんて・・・・


あたしは頭の中でグルグルと色々なことが混乱していた・・・

思わずその場にしゃがみ込む・・・


ケンに連絡・・・・それは出来ない・・・

彼が知ったら間違いなく怒るだろう・・・

そうなったらプロジェクトが中止に間違いなくなる・・・


「・・・・もう・・・・答えは最初から出てるってことだよね・・・」

あたしは涙をこぼしながら自分に言い聞かせた・・・


明後日には馬場部長に返事をする・・・


「最初で最後のヴァレンタインデーか・・・ケンと過ごす・・・・」

あたしは空を見上げて呟いた・・・・