スピリチュアルに興味を持つ、信じて嵌まるということは、現実を見る目を失っているということです。

現実を見ようとしない人間は、幽霊にとって好都合です。

辻褄が合わず矛盾があってもそれを見ようとせず、弱い所をくすぐれば理性ではなく感情優先だから簡単に騙されてくれる。

幽霊にとってこの上なく扱いやすいスピリチュアルを盲信する人間。

憑依され自分と人生を失います。







前回のお話。





「写経を書かせた人。」


「実家とその近くにおるやつ。」


「左の女の人。」


「ハーフっぽいクォーターか何か。」



私の目を真っ直ぐ見つめ言われるもくじきびとさん。


すると再び前後に揺れ出す私の体。

天井の電灯もまた何故か不気味にチカチカと灯ったり消えたりする。


「おぉ。また電灯がついたり消えたりしてるねぇ。」


私の目の奥を鋭く見つめたまま、不敵の笑みにも見える表情で言われるもくじきびとさん。


その声に反応するかのように、更に強く前へ押し出される私の体。

足の位置は同じまま一歩も動いてない。それなのに上半身だけグイグイと、まるで頭突きでも狙っているかのように重い圧がかかる。

その体感は、上半身は後ろから思い切り押されるのに、首から上は逆に前から後ろへと押されているよう。

首が折れてしまいそうなほど限界までギリリ…と真上を向いた苦しい状態!


実際はほんの数秒でしょうが、私にはとてつもなく長く感じたその時。

息をしているのがやっとの状態の次の瞬間、私は何故か「フ…。」と小さく声にならない声を漏らしたのです。


心の中は「苦しい!首がもう限界!」


その思いでいっぱい。

それなのに!


「おぉ。今、フンって鼻で笑ったねぇ。」



お祓いの様子を座って見ていた彼に、半分ヤレヤレと呆れたような苦笑いの表情で言われたもくじきびとさん。


目を丸くして「笑ってた!」

とびっくりした顔で同意する彼。


私は笑ってなんかないのに!

そんな余裕なんかあるわけない!


私自身は必死でそう思っていました。ですが側から見れば、見下すかのような黒い笑みを口元に一瞬浮かべていたのでした。




抹殺抹消を繰り返すもくじきびとさん。



防壁代わりのたくさんの力の弱い下っ端の幽霊たちが次々とお祓いされ、隠れきれなくなり段々と追い詰められ始めたその奥にいる幽霊たち。

何としても殺られる前にもくじきびとさんに一矢報いたいと狙っている。



私のお祓いはまだ続きます。