こんにちは、今回の小説紹介も大大大好きな榎田ユウリ先生の作品です。


タイトルは『武士とジェントルマン』




この作品は、2021年4月に四六判で発売され、今年2024年3月に文庫化されて(細かい修正のみ)発売されました。


武士は出てくるけど、時代背景は現代です。

現代社会に武士制度が出来たんだけど、「伝統文化の保持ならびに地域防犯への奉仕を目的とする制度」なのです。

その人数は少数で、外国人よりレアな存在。

祖父から武士精神や生活態度を叩き込まれた青年隼人(はやと)の家に英国から大学講師として来日したアンソニーが同居するお話。


榎田先生と言えば、キャラ立ちが素晴らしい!

今回も隼人の親戚で、食事の世話をしてくれる岸本栄子、武士仲間たち、剣道教室の生徒、隼人の叔父、弟子希望のルリちゃん(結構な重要人物)。

この人たちが、物語を展開していくのです。


今回も心がキューッとなったり、ほろりとしたり、終盤は、えーーーっ、そうだったのーーー?な展開。


ほんと最後まで何が起こるか分からない☺️


じゃあ、私の推しポイントいくよー


★日本に行くことになったアンソニーの滞在先を恩師が手配してくれたんだけど、お互い(隼人&アンソニー)顔を知らない(メールなどでの情報のやり取りなし)アンソニーが知ってるのは、隼人の名前と住所と自宅電話番号のみ。


すごくない?

そんな状態て行く方も行く方なら、受け入れる方も受け入れる方だよ。


もちろん隼人が武士であることも知らず、「行けば分かる」と言われて羽田空港に降り立ったアンソニー。


武士と英国人ってだけでもインパクトあるのに、事前情報無しでやってくることで、隼人との出会いのインパクトを強める設定!


★人でごった返す空港で、隼人がアンソニーをみつけ声をかけるんだけど、

『「卒爾ながら、アンソニー・ハワード殿とお見受けいたしまする」』


何時代?🤣


隼人は、着物に袴、ちょんまげに帯刀というザ・サムライ!ザ・武士!という出で立ち。


★公共交通機関を使っての移動のため、チラチラ、ジロジロ、見られるんだけど、外国人であるアンソニーより、注目を集める武士!

『「武士がガイジン連れてるの図かー。ウケる」』などと言われる。


また、駅で乗り込んでくる乗客のほとんどが隼人を見て、その目が(武士だ)(あ、武士)(うわ、武士)と語ってる。


外国人のアンソニー視点で語られることで、武士がどれほど珍しいかが表現されてるんだけど、この視線で表現してるところが、“先生、天才!”と言わしめるところ。


★隼人の名前

「伊能長左衛門隼人」

以前、高校の給付金関係の仕事をしてた時、『柳生◯◯◯△△△□□□』とまさに武士みたいな名前の子がいたのを思い出したわ。


★アンソニーには日本人の叔母がいて、日常会話は大丈夫なんだけど、隼人の古い表現はわからない事もあって 、そのやり取りも読みどころ👍


★純日本家屋の隼人の家に到着後、お風呂を使いたいと申し出たアンソニーに、『「支度をしますゆえ、しばしお待ちいただきたく」』と言ったあと、隼人は薪割りを始める🤣 隼人んちは、そんな田舎じゃないと思うんだけど、薪有るんだ😲とビックリ!いや、アンソニーの為に用意したのか?


薪で焚くお風呂、その名はザ五右衛門風呂!!


★隼人が薪割りをしていると、家政婦の栄子さんがやって来て、ちょっと長めの自己紹介(この自己紹介で栄子さんがどんな人かがよく分かる←こういうとこ榎田先生のチカラを感じる)のあと家の中の案内&現代武士ライフについて説明をしてくれるの。そして、


★慣れない五右衛門風呂から出て、(早くこの入浴方法に慣れなければ)と思いながら、ひと休みしたあと自室に戻る際、鉢合わせした隼人は、身体からほんのり湯気が立ち、手ぬぐいを持ち、着物を着替えていた。

それを見たアンソニー『「きみも、その…………」』と隼人を見つめていると、『「は、それがしもだいぶ汗をかいたゆえ、シャワーを浴び申した」』と答えた🤣🤣🤣


『「シャワー………」』


『「はい」』


『「シャワー、あるのですか」』


『「え、ああ、はい」』

『あります』


『あるのか。』

『あるんですか。そうですか。あったんですか。』

🤣🤣🤣🤣🤣


いやぁ、この時のアンソニーの心情を説明するんじゃなく『 』の2行で表現するだけで、充分伝わるし、あーじゃないか、こうじゃないか?とアンソニーの心情を読者の想像力に委ねてくれるところが“天才!”


★剣道教室に見学に来たアンソニーが隼人の武士仲間に会う。

上下白の道着を着た青年は、アンソニーを見て

『「うっわ、やばい。マジやばいイケメン!」』

『「つか、イケオジ?どっちにしろバエるわ〜。天然金髪最強伝説!英国紳士オーラ、バリ立ち上っちゃってるし!なんだろねー、この顔面格差社会。こんな顔に生まれたかったというツラミ!あ、俺、隼人のブシダチで、津田っす。津田頼孝(よりたか)!隼人は頼孝って呼ぶし、栄子さんはヨリちゃんで、どっちでもノープロ。なにはともあれ、今後ともシクヨロ、おなしゃーす!」』🤣🤣🤣🤣🤣


想像通り、アンソニーはよく理解できなくて、戸惑うし、頼隆は、あれ?日本語分かるって聞いてたのに…

って空気になりもうした。🤣←私まで武士ランゲージ


隼人VS頼隆

真逆というか、逆斜め方向だよね。

しかも、頼隆の髪は金髪に染められてるし、パーマなのか緩いウェーブだから、髷(まげ)は無しでござるただ、ポニーテールみたく括ってるの🤣


★アンソニーが間違えた日本語で気に入ってるのが、「モヤモヤする」「もふもふする」っていうの。

モヤモヤするをもふもふするにしたら、なんかモヤモヤが吹っ飛んじゃわない?

モヤモヤしてる事に気付いたら、「なんかもふもふしてるなぁ」と思ってみて🤣


この後、剣道教室の生徒へのいじめ→虐待疑惑が持ち上がったり、隼人の叔父が登場して、隼人が心を閉ざしてしまったり、そんな中、遠方から修行希望の少女(小学5年生)が訪ねてきたり、このルリちゃん、『「たのもう!」』とやって来た。そのあと『「突然の来訪、平にご容赦くださりませ。手前、ご当主と面識はございませぬが、折り入ってお願いしたい儀があり、参上仕りました」』と見事な武士ランゲッジでの挨拶🤣

そして、この少女が、隼人の過去キーパーソンなんだけど、わちゃわちゃと物語が進んでいき、女は武士になれないの?と言う少女ルリに寄り添う武士仲間の誠さんが、最後の最後にどひゃ~な展開を放り込んでくるのです。


また、アンソニーにもちょっとした家族との問題があったりして、物語が進むにてれ、隼人の家族問題や心の傷がポロポロと露わになってくるので、(ワタシは泣いた)それも楽しんでもらえたらなあと思うでござる。


隼人が英国のアンソニーを訪ねる続編が読みたくなった作品です。