和漢薬の研究の中で、以前から日本で積極的に研究されていたのが認知症に対する漢方薬であり、抑肝散以外に、釣藤散（チョウトウサン）、当帰芍薬散（トウキシャクヤクサン）、加味温胆湯（カミオンタントウ）、帰脾湯、加味帰脾湯、八味地黄丸、人参養栄湯が挙げられます。今回、認知症に対する抑肝散以外の漢方薬についてお話します。しかしながら最初に申し上げますが、漢方薬には間質性肺炎、肝機能障害、偽アルドステロン症、腸間膜静脈硬化症などの副作用があるので注意が必要です。そして決して医師、薬剤師の指導なくして服用することは危険なので心得ておいてください。

〇釣藤散（チョウトウサン）

釣藤散は、脳の細胞を保護する作用、睡眠を延長する作用、精神安定作用、学習記憶改善作用などがあるとされ脳血管性認知症において、釣藤散は自覚症状・精神症状・日常生活動作障害に対して有意な改善が認められたという研究報告があります。

11の生薬よりなり、その生薬の中には抑肝散と同等のものも含まれています。

釣藤鈎（チョウトウコウ）は、肝陽上亢や肝風内動を鎮め、鎮静・鎮痙(痙攣を止める)・降圧作用を示します。菊花（キクカ）は釣藤鈎の作用を助け、さらに目の充血・かすみなどの眼症状を改善すします。石膏（セッコウ）は体内の熱を冷まし、また釣藤鈎・菊花の作用を助けます。半夏（ハンゲ）・陳皮（チンピ）・茯苓（ブクリョウ）・甘草（カンゾウ）・生姜（ショウキョウ）は二陳湯の構成で、体内の痰飲を解消します。人参（ニンジン）・茯苓・甘草は補気健脾の働きがあり、痰飲生成の原因となる脾虚を改善します。防風（ボウフウ）は祛風作用により頭痛を止め、鎮痙にも働きます。麦門冬（バクモンドウ）は他薬の燥性(体を乾燥させる性質)を和らげる働きがあり、処方全体のバランスを整えています。

〇当帰芍薬散（トウキシャクヤクサン）

アルツハイマー病では種々の神経伝達系の機能低下がみられ, とりわけアセチルコリン系の低下が著しい。当帰芍薬散はアセチルコリン合成酵素 (CAT) の活性をたかめたり, ムスカリン性レセプターを賦活してアセチルコリンニューロンの機能を改善することが知られており, こうした面でアルツハイマー病の症状が多少改善した可能性があります。

アルツハイマー病に対する当帰芍薬散の効果J-STAGE

www.jstage.jst.go.jp

〇加味温胆湯（カミオンタントウ）

加味温胆湯は、アセチルコリン系の神経細胞に対して作用し、アセチルコリン量を増加させるだけでなく、神経栄養因子様の作用を示すことから神経細胞の脱落を減少させ、進行を防止する可能性があります。

アルツハイマー病の進行を抑える漢方薬発見！「雲胆（うんたん）エキス顆粒」｜漢方専門 | 大山漢方堂薬局病気の進行を抑制する加味温胆湯アルツハイマー型痴呆何かの原因によって脳の神経細胞が壊れて、脳が萎縮してしまうのが、このアルツハイマー型痴呆。しかし発症のメカニズムや原因が、残念ながらまだはっきりとはわかっていないため、治療法ゃ予防法が難しいといわれています。現在わかっている原因は3つ。まず１つには、アルツハイマー型痴呆の犯人のひとつとして、はっきりとわかって…

ohyama-kampo.com

〇帰脾湯（キヒトウ）、加味帰脾湯（カミキヒトウ）

アルツハイマー型認知症の中核症状を改善する効果と脳内における神経回路網の破綻を修復する作用をもっていることが確認されています。

構成生薬のひとつ「遠志」の主治は，『神農本草経』に「不忘」と記載されています。加味帰脾湯＋ドネペジル併用治療例では認知機能の低下はみられなかったそうでAD（アルツハイマー型認知症）モデル動物の軸索・プレシナプス変性の改善効果や，コリンアセチルトランスフェラーゼの活性化が報告されており，また「遠志」でのADモデル動物の神経細胞保護効果も報告されています。

帰脾湯は気と血が不足している時に処方され、疲れやすい、食欲不振、健忘、不眠、驚きやすくて動悸がする等の症状（心脾両虚）に対応し12種の生薬からなります。

加味帰脾湯はのぼせやほてり、イライラ等の自律神経の緊張・亢進（肝火旺）に対応する柴胡と山梔子を加えた14の生薬からなる気血両虚の方剤です。

〇八味地黄丸（ハチミジオウガン）

進行した認知症患者さんを対象とした研究で、認知機能の進行を遅らせることが既に報告されています。

〇人参養栄湯（ニンジンヨウエイトウ）

高齢者の食欲低下によく用いられますが、食欲低下の改善のみならず、認知機能を改善したとの報告があります。

色々と、医学的に研究がなされた結果がでていますが、副作用に関しては詳しく調べられていないので、まだまだ「認知症に対する漢方薬の効果については臨床研究の途中と考えられます。」詳しくは下記の論文のサイトを貼付しておきますのでご参照ください。　　　↓↓↓

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2011/112043/201114036A/201114036A0024.pdf

以下はChatGPT3.5による英語訳のため間違いがある場合はご自身でご確認ください

Here's a detailed translation of the provided text:

"In the realm of Kampo (Japanese traditional medicine) research, herbal remedies for dementia have been actively studied in Japan for some time. Apart from Yokukansan, there are other formulations like Chotosan, Tokishakuyakusan, Kamiuontanto,　Kihito , Kami Kihito, Hachimijiogan, and Ninjinyoueitou. Today, I will discuss these herbal remedies for dementia other than Yokukansan. However, I must emphasize that these medicines may have side effects such as interstitial pneumonia, liver dysfunction, pseudoaldosteronism, and mesenteric vein sclerosis. Therefore, it is essential to be cautious, and it's dangerous to take them without guidance from a doctor or pharmacist.

〇 Chotosan ：Chotosan is believed to protect brain cells, prolong sleep, stabilize the mind, and improve learning and memory. Studies have shown significant improvements in cognitive symptoms, psychological symptoms, and daily life activity disorders in vascular dementia patients. It is made up of 11 herbal ingredients, some of which are also found in Yokukansan. Chotokou suppresses liver yang hyperactivity and liver wind movement, showcasing sedative, anticonvulsant, and blood pressure-lowering effects.

〇 Tokishakuyakusan ：In Alzheimer's disease, various neurotransmission systems decline, especially the acetylcholine system. Tokishakuyakusan is known to increase acetylcholinesterase (CAT) activity and invigorate muscarinic receptors, improving the function of acetylcholine neurons, possibly ameliorating some symptoms of Alzheimer's disease.

〇 Kamiontanto ： Kamiontanto acts on acetylcholine system neurons, not only increasing acetylcholine levels but also showing neurotrophic-like effects, potentially reducing neural dropout and preventing progression.

〇 Kihito, Kami Kihito Both remedies are confirmed to improve core symptoms of Alzheimer's dementia and repair disruptions in neural circuits. Combined therapy of Kami Kihito and Donepezil showed no cognitive decline. Reports indicate axonal and presynaptic improvement effects in Alzheimer's model animals, activation of choline acetyltransferase, and neuroprotective effects in AD model animals.

〇 Hachimijiogan :Studies involving advanced dementia patients have already reported that it delays the progression of cognitive function.

〇 Ninjinyoueitou: Commonly used for appetite loss in the elderly, there are reports not only of improved appetite but also improved cognitive function.

Various clinical results have emerged from medical research. However, side effects haven't been thoroughly investigated, so the efficacy of Kampo medicines for dementia may still be under clinical review."